NHKNの日曜討論などで吉村大阪府知事の新型コロナ対策の大失策を暴露して、俄かに注目を集めている「れいわ新選組」の大石あきこ議員を日刊ゲンダイが直撃インタビューしました。
大石氏は、大阪大学・大学院工学研究科を出て02年に大阪府庁に入庁しました。在職中の08年3月、新に大阪府知事になった橋下徹氏が若手府庁職員330人に対し、「勤務時間中のたばこ休憩や私語は全部給料を減額させてもらう 云々」と高圧的な挨拶をした際に、「私達がどれだけサービス残業をやっていると思っているんですか」と抗議したことで知られています。
吉村知事が手柄顔をして「文通費」の見直しをTV等で訴えたときにも、「吉村氏が6年前、衆院議員在職1日で文通費を受け取っていた」事実を指摘し、吉村知事や維新が批判される「ブーメラン炸裂」現象のきっかけを作りました。
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「日曜討論」で糾弾したれいわ・大石あきこ議員を直撃
吉村府政の問題点とやり口、岸田政権どう見る?
日刊ゲンダイ 2021/12/17
「とんでもないペテン師が知事やっとんな」。日本維新の会副代表の吉村洋文大阪府知事に対する批判的な見解を度々ツイッターに投稿。注目を集めているのが、先の衆院選で初当選した「れいわ新選組」の大石あきこ議員(44=比例近畿ブロック)だ。大石議員は衆院選直後に問題となった「文書通信交通滞在費」(文通費)の見直しを訴える吉村知事が6年前、在職1日で文通費を受け取っていた事実を指摘。吉村知事や維新が批判される「ブーメラン炸裂」現象のきっかけを作ったほか、NHKの日曜討論に出演した際も、吉村府政のコロナ対策の問題点を舌鋒鋭く追及するなど存在感を発揮しつつある。大石議員に改めて大阪府政や岸田政権に対する受け止めを聞いた。
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ー大阪府職員を経て、その後、介護や福祉のボランティア活動をされていましたが、国会議員となって何か変わったことはありましたか。
注目度が全然違うと感じていますね。それが素直な気持ちです。私自身は国会議員になる前も今も常々、同じ発信を続けています。これまでも介護のネットワークで年1回、国と交渉していましたし、(活動について)発信していましたが、なかなか興味を持ってもらえませんでした。
しかし、今は同じように活動していると、「良い仕事をしている」とか言ってもらえる。発信力が国会議員になったことで全然違います。ずっと、ボランティアとして活動してきたので、本当はそういう人(ボランティア)たちが一番尊い存在だと思っていますが、今の私は彼らの代表として、24時間を使ってもっと暴れてこいよ、という役割なのだろうと思っています。
吉村府政の人気が高いのはテレビの影響
ー吉村知事の「ブーメラン炸裂」現象も「発信力」によって生まれた。
国会議員としての仕事なのかは微妙ですけれども、あの話はすでに市民の方が指摘していたことで、それを私が言い直しただけ。でも、国会議員であり、(かつて私が)橋下徹元大阪府知事にかみついた、という面白い属性もあり、注目されたのでしょう。結果として「維新は最高や」となっていたのが、「なんやお前らもか」と世論を変えることができたのは大きいでしょう。
国会議員は本来、委員会に所属し、その委員会で質疑して、その調整の中で制度を勝ち取っていく。しかし、私はまだ、委員会における活動もこれからであり、また、れいわは人数が少ないので代表質問もできません。いわゆる国会議員らしい枠で仕事をさせてもらってはいません。
ー大石議員が度々、府政の問題を指摘しているにもかかわらず、なぜ、大阪では吉村知事の人気が高いのでしょうか。
東京でも小池百合子知事はなぜ、あれほど強いのか。それと一緒の疑問だと思いますが、テレビの影響が大きいでしょう。テレビ以外で説明付く? と思っています。例えば、NHKの日曜討論でも指摘しましたが、大阪は人口当たりのコロナ死者数がワースト1です。しかし、そうした報道は極端に少なく、大阪のコロナ対策は順調のように報じられている。もはや意図的にやっているとしか思えません。
橋下元知事は気に入らないマスコミをしばき、気に入らない記者は袋叩きにする、ということを丁寧にされていました。新聞社に対しても「あの記者どうにかせぇ」「あの記者やったら、おたくは外す」と。その代わり、「言うこと聞くんやったら、特別の取材させてやる」とか。それはやっちゃだめでしょということまで平気でやっていた。
飴と鞭でマスコミをDV(ドメスティック・バイオレンス)して服従させていたわけです。現場には真実を報道しようとしている記者もいますが、多くの社は幹部が腰砕け。だから取材しても、ああやっぱり記事にならんかったな、ということは多いですね。
ー大阪で維新が強いのも同じ理由でしょうか。
維新は選挙戦略として地方議員を擁立し、有権者が維新という政党を身近に感じるような状況を(意図的に)作っています。その一方で、テレビを意のままに操っているわけで、「リアルの世界」も「空中戦」も支配しているに等しい。ある意味、小池都知事よりも強いでしょうね。
■野党は本気で勝ちに行く気がなかったのでは
ー衆院選の野党共闘についてはどう見ていますか。
私は「(野党は)不戦敗」という考えです。野党共闘を望んでいる多くの人は「野党に勝ってほしい」と思っていたはず。それ以外の理由はないでしょう。そうであれば、与党を倒すための共闘でなければいけないのに、そうなっていませんでした。
ーどういうところが「そうなっていなかった」と。
野党共闘として擁立された候補の中に「有権者が本当に望んでいる候補者なのか」と首を傾げたくなる人がいた面は否めないでしょう。ハッキリ言えば、「なんや、これなら向こう(与党)のタマ(候補)の方がよさそうやん」みたいな感じになっていたわけです。「ホンマにガチで(議席を)取りに行くぞ」ってなったら、党を超えて一番、タマとしていい人を出しますよね。出していなかったということは、つまり勝ちに行く気がないのと同じ。それじゃあ負けるわな、と。なぜ、そうなったのかと言えば、(与党に勝つことよりも)政党の存続が目的になっているからではないか。もしかして、そちらの方が本気だったのかもしれません。
ー国会では予算委員会が始まりましたが、岸田政権をどう見ますか。
一見すると、安倍・菅政権と続いた露骨な金持ち優遇、新自由主義を見直すのではないかと思いますが、そうではありません。例えば今、介護の現場は人手不足が深刻で、このままだと介護サービスが受けられない状況に陥るほどです。人手不足を解消するには、他の産業と比べて月額8・5万円ぐらい差がある給料水準を改善する必要があります。
岸田政権も介護現場は深刻だ、今こそ給料の引き上げが大切だ、とかいうのですが、引き上げる額は月額9000円。まるで焼け石に水ですが、彼らにしてみれば、こんなに頑張ったと。「ここに危機がありますね」と言いながら、それを脱出するのには程遠いレベルの施しというのか、おまけみたいなものでお茶を濁しているのです。
ー来夏の参院選に向けた野党の在り方をどう考えますか。
「超大石ブーム」や「超れいわブーム」など、何かしら野党に吹く風が無いのであれば、むちゃくちゃ厳しい結果になるでしょう。政党政治に入ったばかりの私が足りないモノはなんやとは言えませんが、市民目線で考え、動くことが重要だと思います。ただ街宣車に乗って「やってます」と叫ぶだけの人を市民はどう思うのかということです。
今の国会でも、すごく不快に感じていることがあります。“ペテン師”の維新に国民民主がつき、その国民民主に立憲民主がつき、さらに共産、社民がついて行くという、何か(絵本童話の)「おおきなかぶ」みたいになっていることです。れいわの存在だけが浮きまくりみたいな。その鎖をどこかで断ち切らないといけないと思っています。
(聞き手=遠山嘉之/日刊ゲンダイ)
◇大石あきこ(おおいし・あきこ)1977年生まれ。大阪府職員を16年間務め、2019年の府議選に無所属で立候補し落選。れいわ新選組の候補として大阪5区で立候補し敗れたものの、比例復活を果たした。