日刊ゲンダイに「建設工事受注動態統計」の二重計上問題についてのやや詳しい記事が載りました(ただ残念ながら記事を読んでも「二重計上」を生じさせる具体的な手法が良く分かりません)。
わざわざそんな不正を行ったのは「アベノミクス」を成功に見せるためで、各省庁の官僚が知恵を出し合って「基幹統計を偽装」したのでした。
政治評論家の本澤二郎氏は「かつての霞が関官僚なら、『不正なんて冗談ではない』と突っぱねていた筈」だと言いますが、安倍政権下で省庁の幹部を統御する内閣人事局ができたのに加えて、和泉洋人補佐官ら一部の官邸官僚の目に余る専横が相俟って、本来の官僚の矜持が失われて歯止めがなくなったのでした。実際、和泉氏自身も公費での数次にわたる不倫外遊が暴露された後もその地位に留まり続けるなど、官僚の堕落も留まるところを知りませんでした。
遅まきではあっても、これを機に安倍・菅政権の不正堕落は徹底的に追及されるべきです。
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なぜ、安倍政権では何度も不正が起きたのか
アベノミクスのインチキ 徹底追及が必要
日刊ゲンダイ 2021/12/16
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
またか。良識ある国民の多くはそう感じたに違いない。建設業の受注動向を示す国の「建設工事受注動態統計」について、国交省がデータを書き換えて二重に計上し、過大に推計していた - と報じられたことだ。
この統計は建設業者が公共機関や民間企業などから請け負った国内工事の受注実績を集計したもので、GDP(国内総生産)の推計などに反映され、国が特に重要と位置付ける「基幹統計」に当たる。関係者によると、国交省は現在の方法で集計が始まった2013年4月以降、調査票の作成が間に合わない事業者には、翌月以降に複数月分をまとめて提出することを容認する一方、提出がなかった事業者はその月の実績をゼロとせず、一定の推計値を計上するルールも併せて採用していた。
複数月分を一度に提出した事業者について、前月分以前の推計値と実績値が二重に計上される例もあったといい、これらの行為は統計法違反に当たる可能性が高い。
「書き換え」ではなく「意図的な改竄」だ
15日の衆院予算委で、斉藤国交相は過大計上の事実を認めて陳謝。「集計の過程で、事業者から期限を過ぎて提出された過去分の調査票の情報を、当月分に含めて集計していた」と釈明したほか、会計検査院の指摘を受け、20年1月から改善したことを明らかにした。
同省は今年4月から正確な集計方法に改める一方、過大計上が始まった経緯など事実関係の調査を進めているという。
<「すべての数字を消す」「全ての調査票の受注高を足し上げる」>
<国土交通省が都道府県の「建設工事受注動態統計」の担当者向けに配布した資料には、同省の指示がこう記されていた。イメージ図を使いながら例示した流れはこうだ。
A社が、4~6月の3カ月分の受注実績の調査票を、3枚まとめて都道府県に提出したとする ▷都道府県は3カ月分の受注実績を合算して6月分の調査票に記入する ▷4、5月分の調査票の受注実績は消す ― 。3カ月かけて受注した実績を、最新の1カ月だけで受注したかのように書き換えるわけだ>
問題をスクープした朝日新聞(15日付)の記事の通りであれば、今回の国交省の統計不正は「書き換え」なんて生易しいものでは済まない。明らかに組織として明確な意図を持った「改竄」だ。
しかも、18年末に厚労省が所管する毎月勤労統計をめぐる不正問題が発覚し、各省庁で統計の一斉点検が行われたにもかかわらず、見過ごしていたというからクラクラする。18年当時、厚労省の統計不正を問題視した総務省は、有識者による統計委員会を発足させ、各府省に「分析審査担当官」を配置することや、調査結果公表前のデータ審査、調査設計を変更した場合の影響分析--などを柱とする再発防止策を決めていたはず。
国交省担当者は朝日記者の取材に対し、「問題とは思っていなかった」なんて答えたらしいが、東大卒のキャリア官僚らがそろって不正に気付かないわけがなく、こんなバカな言い訳が通用するはずがないだろう。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「かつての霞が関官僚なら、『不正なんて冗談ではない』と突っぱねていたでしょう。ところが今は唯々諾々と応じているのだから情けない。安倍・菅政権で官僚機構も大きく劣化したと指摘せざるを得ません」
官邸も霞が関官僚も「アベノミクス失敗」を認識していた
霞が関官僚が自分の判断で不正に手を染めるはずもない。それなのになぜ、8年間も続いていたのかといえば、答えは決まっている。厚労省の統計不正発覚時も国会で指摘されていた通り、12年に誕生した第2次安倍政権が掲げた「アベノミクス」のため。GDPをかさ上げして「アベノミクスの失敗」が表面化することを避けようとしたためではないのか。
「アベノミクスによろしく」「国家の統計破壊」(ともに集英社インターナショナル)などの著書がある明石順平弁護士もこう言う。
「国交省の統計不正は丸々アベノミクスの時期と重なります。建設関連の統計では、アベノミクスが始まる直前の数字がなぜか不自然に『かさ下げ』されている点もある。今回分かった統計不正がどの程度GDPに影響したのかは精査しないと分からず、断定的なことは言えないものの、『GDPかさ上げのため』と受け取られても仕方がないと思います」
明石弁護士が指摘する通り、振り返れば、厚労省の不正統計問題直後、経済の専門家などから疑問の声が上がっていたのが「不自然なGDPの伸び」だった。
当時の安倍首相が掲げていたのが「GDP600兆円の達成」。すると、政府はGDPの算出方法を密かに変更。「研究開発費」なども組み入れるなど項目を追加した結果、16年12月に発表された15年度のGDPは、それまでの旧基準より31兆円も増えたのだ。
国交統計不正が他の問題に広がる可能性も
「アベノミクス」を支えるための産業の主な柱は、日銀の異次元緩和でつくり出した円安効果で輸出が増えた「自動車」と、公共事業を中心とする「建設」。国交省にとっては、統計数字をいじり、粉飾してでも“好景気”を演出したかったに違いない。
いずれにしても、かさ上げされたGDPが政権延命に利用されたのは歴然だろう。
厚労統計不正、GDPの算出基準の変更、国交統計不正……。なぜ、安倍政権下では何度も統計不正が起きたのか。言えることは、当時の安倍官邸、霞が関官庁がそろって「アベノミクスは失敗」と認識していたからではないか、ということだ。
成功していれば数字をいじったり、ごまかしたりする必要はない。ダメだと分かっていたからこそ、違法行為を犯してでもインチキしたかったのではないか。不正が起きた原因の徹底追及と解明が必要なのは言うまでもなく、辞めた当事者を頬かむりさせたままで済むわけがない。
それにしてもなぜ、このタイミングで発覚したのか。よくよく考えれば、本来はもっと早く問題が露呈しても不思議ではなかった。朝日の記事通りであれば、国交省担当者から不正の指示を受けた都道府県担当者がメディアにいつでもリークできたからだ。
「恐怖人事で官僚機構を牛耳る安倍・菅政権が終わり、問題が表面化しやすくなったことや、8年間、不正を見過ごしてきた国交相、つまり、大臣ポストが指定席となっている公明党の責任を追及するためなどが考えられる。いずれにしても、今回の国交省の統計不正が他の問題に広がるかもしれません」(前出の本澤二郎氏)
岸田首相は15日の予算委で「再発防止に努めなければならない」とか言っていたが、再発防止は当たり前。いつ、誰が、どういう指示を出したのか。政治家は関わっていたのか。本ボシを捕まえるまで、とことん追い詰めるべきだ。