ツイッターの投稿で名誉を傷つけられたとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが起こした訴訟で東京地裁は11月30日、被告の漫画家・はすみ氏に88万円、はすみ氏の投稿漫画をリツイート(RT)した2名に11万円ずつの賠償支払いを命じました。
はすみ氏が投稿した漫画は悪意と中傷に満ちた酷いものなので、名誉棄損以外のものではなくむしろ賠償額が低すぎることに疑問を持ちます。
今回はそれをリツイートし(て宣伝し)た2人も有罪でした。これを意外に感じる人も多いかと思われますが、東京地裁は元ツイートと同じ立場なのかどうかが問題であるとして、「異なる立場であれば『批判的ないし中立的なコメントを付すことが通常』であるとして、特段の事情が認められない限り、RTは『元ツイートの内容に賛同する意思を示して行う表現行為』と判断される」と判示しました。
詩織さんがはすみ氏らを提訴したのは昨年6月で、昨年8月には誹謗中傷ツイートに「いいね!」をした杉田水脈衆院議員も名誉毀損で提訴しています。TVで聞く杉田氏の発言も実に悪意に満ちたものなので、どういう判決が出るのか注目されます。
LITERAの記事を紹介します。
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伊藤詩織氏への名誉毀損は敗訴したはすみとしこ氏だけじゃない、
杉田水脈議員も! 維新・足立康史議員は山口敬之氏と…
LITERA 2021.12.05 09:10
ジャーナリスト・伊藤詩織氏が、ツイッターに投稿されたイラストなどが名誉毀損にあたるとして、漫画家のはすみとしこ氏らを提訴していた訴訟で、11月30日東京地裁は、はすみ氏に88万円、リツイートした2名に11万円ずつの賠償支払いを命じた。
伊藤さんは、安倍首相と昵懇の元TBS記者・山口敬之氏から意識がないなかで性行為を強要されたとして訴えるが、山口氏に対する逮捕状は直前で取り消され、書類送検されるも不起訴処分となっていたが、1100万円の損害賠償を求めた民事訴訟で2019年12月に勝訴している(山口氏は控訴)。
その際の会見で、伊藤さんが被害を実名顔出しで告発して以降、自身に向けられた「セカンドレイプ」の誹謗中傷について、今後の法的措置を検討すると明言し、昨年6月にはすみ氏らを提訴していた。また昨年8月に誹謗中傷ツイートに「いいね!」をした杉田水脈衆院議員も名誉毀損で提訴している。
はすみ氏は、一連のイラストについて「風刺画はフィクション」「伊藤さんとは無関係」などと主張していたが、本サイトでも指摘してきたように、イラストは明らかに伊藤さんを誹謗中傷したもの。しかも、そこに書かれた文言は山口敬之氏が「Hanada」(飛鳥新社)2017年12月号で展開した伊藤さんへの悪意ある攻撃を下敷きにしたものだった。
また、はすみ氏は山口氏が不起訴処分になったことなどを挙げ、伊藤さんの訴えが虚偽にあたると信じる相当の理由があると主張したが、裁判長は「(不起訴の)理由が明確ではないことを踏まえると、性被害の不存在を認めるに足りる事実とは言えない」と指摘、名誉毀損にあたると判断した。
近年の名誉毀損の高額判決に比べれば金額が低いところは気になるが、名誉毀損との判断は当然だろう。
日本では、女性が性被害やセクハラ被害を訴えると、必ずと言っていいほど、SNSなどで「ハニートラップだ」とか「売名行為」などというレッテル貼りが行われる。「そんな服を着ているからレイプされてもしかたない」というような、愕然とする言葉すらまかり通るほどだ。そうした「セカンドレイプ」の暴力によって、被害者は傷つき、沈黙を強いられ、社会も性被害の問題をタブー化してしまう。そんななか伊藤さんの告発は、この現状に一石を投じ、社会を改善へと向かわせるものとして、本サイトはその勇気を全面的に支持したい。
はすみ氏に同調して伊藤氏を攻撃、山口敬之擁護していた杉田水脈議員ら自民党・安倍親衛隊議員の責任
しかし、伊藤さんに対してこうした卑劣な攻撃・二次加害を仕掛けてきたのは、はすみ氏だけではない。
じつは国会議員までが山口氏を擁護し、はすみ氏と同様の論理で攻撃してきたことを忘れてはならないだろう。
その典型が、「性的マイノリティには生産性がない」論文で知られる極右性差別主義者の杉田水脈・自民衆院議員だ。杉田議員は、伊藤さんに対する誹謗中傷ツイートに「いいね!」を押したことが名誉毀損にあたるとして、昨年8月に提訴されており、その裁判の行方にも注視したいが、杉田議員の伊藤さんに対する攻撃はそれだけではない。
杉田議員は、はすみ氏に当選運動に協力してもらい、ブログやTwitterはすみ氏に謝辞や誕生日祝いのメッセージを送っている昵懇の仲だが、BBCの番組に出演した際、「彼女の場合はあきらかに、女としても落ち度がありますよね」と伊藤さんを貶める発言をしている。
また、杉田議員は2018年2月にも、『日本の病巣を斬る!』なるネット番組で、そのはすみ氏と共演し、「私はああいう人(伊藤さんのこと)がいるおかげで、本当にひどいレイプ被害に遭っている人たちのことが、おろそかになってしまうんじゃないかっていうようなことをね、(BBCに)言いました」などと自慢げに語っていた。
この『日本の病巣を斬る!』には同じく自民党の長尾敬・前衆院議員が出演して、その主張に同調していた。長尾・前議員といえば、例の「泉放送制作デマ」のフェイクニュースを拡散するなど、これまた筋金入りのネトウヨ議員だが、杉田議員から「これね長尾先生、国会でやるでしょ?」と振られると「ハハハ、これね(笑)。おかしいよね」と応じていた。
しかも、長尾・前議員は会社員時代に「60代ぐらいの女性はしょっちゅう抱きついていた」などと笑みを浮かべて語り、「だんだんスキンシップの仕方が変わってきて、相手次第でゾッとするようなやりとりになるっていうのは世知辛い」「受けている側の恣意的なことで全部それが進んでいきますから法的に」などとセクハラの正当化とも受け取れる問題発言まで繰り出していた。
維新・足立康史、ネトウヨ議員・和田政宗は、山口敬之氏の「不起訴相当おめでとう会」に…
グロテスクな対応をした国会議員はほかにもいる。
山口敬之氏は『日本の病巣を斬る!』と同じ「文化人放送局」の『報道特注』の準レギュラーだったが、2017年9月に伊藤さんが検察審査会に申し立てていた審査について「不起訴相当」の議決がなされた翌10月、『報道特注』の「第一回ファンクラブ公開収録」なる企画に参加して“復帰”した。
その会で山口氏を出迎えたのが、同番組で山口氏と共演していた自民党の“安倍チル”ネトウヨ議員・和田政宗参院議員と、維新の会の足立康史衆院議員、経済評論家の上念司氏、自民党のネット番組のレギュラーも務めていた生田よしかつ氏だった。
この「第一回ファンクラブ公開収録」で、山口氏が「僕、人前に出るのすごい久しぶりなんで」とあいさつすると、会場からは気持ちの悪い笑いと拍手がわいた。続いて司会の生田氏がこう呼びかけると、詰め掛けた「ファン」は一層大きな拍手を送ったのだった。
「はからずもですけど、今回の公開収録はですね、もちろん足立さんの当選記念と、めでたく日の目をみられるようになった山口さんの"おめでとう会"でもございますので、もう(一度拍手を)お願いします」
確認しておくと、この時点で山口氏は伊藤さんと民事で係争中である。そんな人物を「めでたく日の目を見られるになった」とか「おめでとう会」などと言って持ち上げる神経を疑うが、山口氏もこれに乗っかって「もし、知らない方がいたら、ネットなど検索しないでおいていただけると(助かる)」などと話し、会場のグロテスクな笑いを誘っていた。
2019年12月に民事訴訟で伊藤さんの主張が認められると、上念氏はTwitterに〈私も山口さんをこれまで擁護してきたことについて責任があるので、アベプラ出演前にコメントしておきます。結論から申し上げて、この判決を受けて山口さんを擁護するのは難しいと思いました〉などと投稿。足立議員も〈山口氏とは、2016年7月東京地検、17年9月検察審査会を経て不起訴が確定したため、その翌月に番組をともにした経緯がありましたが、本判決を踏まえ、当面、同番組への出演は自粛することといたします〉と投稿した。しかし、そこに伊藤氏への謝罪なし。さらに、和田議員にいたっては、完全に知らんぷりを決め込んでいた。
そう考えると、はすみとしこ氏のイラスト問題は、彼女個人の問題ではないことがよくわかるだろう。与党の政治家までもが、はすみ氏のような漫画家に同調しているという事実を重く受けとめなければ、人々が性犯罪に苦しむ社会を変えることなどできないのは間違いない。(編集部)