2014年9月1日月曜日

軍法会議とは? 集団的自衛権をめぐる議論で急浮上

 安倍政権が集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことで、にわかに徴兵制と軍事裁判=軍法会議が話題に上るようになりました。
 どちらも憲法違反の事柄なので簡単に実現する筈はないのですが、安倍内閣が見せた秘密保護法の制定や閣議決定の強引さから、全くあり得ないことと安心しきっているのもまた問題です。
 
 THE PAGEが「軍法会議」を取り上げました。
 現行憲法では軍事裁判のような特別裁判所の設置認められていませんが、軍隊側の要請としては、実際に兵員戦地に派遣されたときに上官の命令を無視したり逃亡したりする人が一定数出て来るのに対して、それを通常の裁判所でくのでは間拍子に合わないし、公開性の裁判では軍事機密に関わる事項の審議も出来ないので、軍事裁判=軍法会議の設置が必須となります。
 しかしそのメンバー(裁判官役と検事役と弁護士役)は軍隊の内部から選ばれて、殆ど即決で裁判が行われることになるので、当然被告の権利十分に保護されずに、不当な刑罰を受けが頻出することになります。
 
 軍事裁判が必然的にこういうものになるのだとすれば、現行憲法が人権を守る立場から、第76条で軍事裁判のようなものは設置することができないとしていることは極めて当然のことです。そうしたものが設置される事態になることは、絶対に防がなくてはなりません。
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集団的自衛権をめぐる議論で急浮上、「軍法会議」って何?
THE PAGE 2014年8月29日
 安倍政権は集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の見直しを進めています。7月の閣議決定によって大きな枠組みは決定されましたが、現実に行使を容認するには様々な問題があるといわれています。その中のひとつとして最近よく話題に上っているのが軍法会議の扱いです。
 
 軍法会議とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは軍事司法制度による裁判のことを指します。軍隊には、一般的な司法制度とは別に独自の裁判制度が設けられることが多くなっています。実際に兵員を戦地に派遣するということになると、戦地で負傷したり死亡したりする可能性は否定できません。このため、どんなに訓練を積んだ隊員であっても、上官からの命令を無視したり逃亡したりする人が一定数出てくることになります。こうした行為について、一般的な司法手続きを用いて裁いていては、多くの手間と時間が必要となってしまいます。また戦地の場合には、軍事機密に関わる情報もあり、公開が原則の一般司法手続きでは問題が生じる可能性もあります。
 
 軍事司法制度による裁判は、裁判官や弁護士も軍隊内部から選ばれ、軍隊の実情に合わせて迅速に裁判が行われますから、こうした問題をクリアすることができます。軍事司法制度では被告人の権利が十分に保護されないなど多くの問題があります。しかし、戦争の現実を考えると、こうした軍事司法制度が必要であるというのは世界的に共通の理解となっています。
 
 集団的自衛権の行使容認がただちに日本が武力行使を行うということを意味しているわけではありません。しかし、従来の憲法解釈と比較すれば、日本が何らかの形で武力行使を行う可能性は高くなったと考えるのが自然でしょう。そうなってくると、一般の司法手続きしか定められていない現在の自衛隊では、実務上、様々な問題が発生する可能性があります。
 
 しかし、現在の日本において、軍事司法制度を導入するというのはそう簡単なことではありません。まず現在の憲法では行政機関による裁判や、特別裁判所の設置がそもそも認められていません。法に忠実にこの問題を処理しようとすると憲法の改正が必要となるわけです。憲法の改正を行わず、技術的な方法で類似の制度を構築することも不可能ではありませんが、これについては多くの反対意見が出ることが予想されます。
 
 また、戦前の日本では、被告人の人権が保護されないまま、軍法会議で不当な刑罰を受けた人も多く、従軍経験のある高齢者の中には、軍法会議という言葉自体にアレルギーを持つ人が一定数存在するのも事実です。米国においても、軍法会議の中でどのように基本的人権を保護するのかは一大論争となっています。
 
 集団的自衛権に関する憲法解釈の見直し自体は閣議決定されましたが、実務的にはかなりの障害がありそうです。