13日の毎日新聞がワシントン特派員名で、米のシリア空爆の法的根拠を問う記事を載せました。アメリカのすることはなんでも無条件に認めるという風潮が定着しているなかで、珍しいことです。
問題点の一つは、シリア領空に侵入して行うイスラム国空爆はシリア主権の侵害になること、もう一つは、「米人2人が殺害された」ことが米国の自衛権の侵害になるのかどうか、そして(個別)自衛権を根拠にして空爆することが国際法上認められるのかということです。
二つともごく当然の問題提起で、こういうことにも関心を示さないで容認するということであれば、(最)強国は何をしても許されるという、国際連合(の理念)以前の感覚に戻ろうということにほかなりません。
問題の発端となった2米人の殺害は確かに残虐ですが、アメリカが行っている多数のイスラム国人を爆殺する行為も同じように残虐です。イスラム国は、2米人の殺害は米空爆に対する予防と報復、つまり自衛の措置であると主張しています。
第二次大戦後、アメリカは世界最強の国となりましたので、そのアメリカを侵略する国など存在する筈もありませんが、実際にはアメリカは絶えず世界中で戦争を仕掛けてきました。その口実は、大抵こうした『小さな』事件によってアメリカの“自衛権が侵害された”というものです。
集団的自衛権の行使に並々ならぬ魅力を感じている安倍政権は、そのベースになる(個別)自衛権のこのような発動に対してはどういう見解なのでしょうか。
ISIS(=イスラム国)の前身はアルカイダ系組織であるとアメリカ自身も認めていますが、そもそもアルカイダはアメリカが養成した組織ですし、ISISも以前にヨルダンあたりでアメリカが軍事訓練した組織であるといわれています。育てた組織がこのように離反するのはアメリカに正義がないからに他なりません。
今度の戦争も、アメリカの「マッチ・ポンプ」と見ることができます。
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米のシリア空爆 問われる法的根拠 露は安保理決議を要求
毎日新聞 2014年09月13日
【ワシントン和田浩明】オバマ米大統領が決定したイスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」へのシリア領内での空爆について、法的根拠を巡り米国内外で議論が起きている。イラク・シリアの国境をまたいで活動するイスラム国の「弱体化と破壊」にはシリア空爆は必須で、大統領は自衛権を根拠に正当性を主張している。しかし、シリアのアサド政権は「合意なしの攻撃は侵略とみなす」との立場で、国連安保理常任理事国のロシアも「安保理決議がなければ国際法違反だ」と批判している。
◇2人殺害され「自衛権」主張
米政府は、イスラム国が米国民2人を殺害したことを米国への攻撃と見なして個別自衛権を根拠に国際法上、シリア空爆実施は可能との認識を示している。実際、1986年に旧西ベルリンのディスコで米兵2人が殺害されたことに対するリビア空爆や、2001年の米同時多発テロに対するアフガニスタン・パキスタンでの一連の空爆は、今回と同様、自衛権を根拠としている。
先月開始したイラク空爆では、米・イラク間の協定に基づくイラクからの要請と、クルド人自治区内の米国公館に対する脅威を排除するという自衛権を主張した。
国際法上は国連安保理決議を得ることが最も正当性を確保できるが、ウクライナ問題などで対立するロシアが承認する可能性は極めて低い。米国はロシアの批判に「ウクライナ紛争で国際法を破っておきながら国際法順守を主張するのはおかしい」(ケリー国務長官)などと反論している。
一方、オバマ大統領はシリア空爆の選択肢を含む対イスラム国包括戦略を発表した際、国内法的には必要な権限を保有していると主張。米国憲法が規定する米軍最高司令官として大統領が国民の生命や財産を守るため軍を運用する権限と、米同時多発テロの際、上下両院で採択された「国際テロ組織アルカイダとその系列組織」に対する武力行使容認決議に基づいている。
しかし、後者については、イスラム国が公式にはアルカイダから脱退し、独自の国家建設を宣言していることから、別途議会の承認が必要だとの指摘もある。これに対して、アーネスト米大統領報道官は11日の定例記者会見で「イスラム国の前身はアルカイダ系組織であり、両団体の要員は今でも交流がある」などとして、現状でも01年決議の適用は可能だと説明した。
1年前、アサド政権の化学兵器使用疑惑をめぐって検討した空爆は国民や欧州の支持が得られず断念。今回、より大規模な攻撃になると見られるだけに、自衛権だけで攻撃が国際法的に正当化されるかは疑問だ。