酒々井町議会に24日、日本国憲法改正の早期実現を求める意見書案が提出され、賛成多数で可決される見通しです。住民の中には「なぜ唐突に意見書を提出する必要があるのか、住民に十分な説明がない」と反発が広がっています。
意見書案は自民系町議など8人が連名で提出し、「日本を取り巻く情勢の劇的に変化に対応した憲法改正案を作成し、早期に改正実現を」と訴えています。
安倍内閣が成立し改憲に注力するようになってから、地方議会で改憲促進決議を行うところが増えており、この3月だけでも、改憲促進の決議を行った県議会は石川、千葉、富山、兵庫、愛媛、香川、熊本、鹿児島の8県に及びました。
これは「自民党と日本会議による地方議会改憲決議運動」と見られていますが、こうした改憲促進議決は、憲法99条で定めた公務員(=議員)の憲法擁護義務に違反することは明らかです。
酒々井町議会の動きに対して同町九条の会の代表は、「議会の意見書は住民の声と同じ。自民党の意向や議員だけの判断で決められるのはおかしい」と批判しています。
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早期改憲の意見書案 酒々井町議会、提出へ
住民反発「十分な説明ない」
東京新聞 2014年9月23日
酒々井(しすい)町議会に二十四日、改憲の早期実現を求める意見書案が提出される。賛成多数で可決する見通しだが、唐突な動きに住民の中には「なぜ今、意見書を提出する必要があるのか、住民に十分な説明がない」と反発が広がっている。(渡辺陽太郎)
意見書案は「日本を取り巻く情勢は憲法施行時から劇的に変化した」と指摘。時代にあった改正案を作成し、国民投票を実施した上で「早期改正実現を」と訴えている。
意見書案は住民の請願や陳情を受けたものではなく、自民系町議を中心に八人が連名で提出する。
「酒々井九条の会」は、町議から事前に意見書案に関する説明がなく、二〇一一年四月の町議選で改憲を公約で訴えた町議もいなかったことなどから、町議十五人全員に質問書を送った。
意見書案提出の賛否を尋ねた上で、賛成者(提出者)にはその経緯と、改憲しないことで町民の生活にどんな不利益が生じるのか事前に町民の声を聞く必要はなかったのかどうか、意見を求めた。
その結果、意見書案に賛成する見通しの八町議のうち、回答を寄せたのは二人だけで、三人は無回答、残る三人は「自民党員だから」と質問書の受け取りそのものを拒否した。
ある自民系町議は、改憲しないことに伴う不利益について「今すぐに生じるかどうかではなく、将来の国民生活を守るにはどうあるべきかを問う必要が大切」と回答。一方、本紙の取材に「私自身の思いでもあるが、党の指示でもあった」ことを認めた。
実際、自民党本部はことし三月、各都道府県連に意見書可決を促すよう要請。これを受け、県議会はすでに意見書を可決した。酒々井町議会が可決すれば、県内の市町村議会では初めてとなる。
一方、質問書の受け取りを拒否した自民系町議の一人は取材に「支持者から憲法を議論する場が必要との訴えがあった。質問には、議会での議論が始まってから答えていくつもりだ」と答えた。
しかし、意見書案は二十四日の議会最終日に本会議で提案され、その日のうちに可決する見通し。
酒々井九条の会の西沢輝芳代表は「意見書は住民の声と同じ。自民党の意向や議員だけの判断で決められるのはおかしい」と批判している。
◆識者コメント
地方議会における改憲推進の意見書案提出の動きについて、神戸学院大法科大学院の上脇博之教授(憲法学)は「憲法九九条で定めた公務員の憲法擁護義務に違反する」と指摘。
提出者に名を連ねる議員についても「住民の代表ではなく、政党の代表に成り下がっている」と批判する。
一方、後藤・安田記念東京都市研究所の新藤宗幸理事長(行政学)は「どんな内容であれ、政府や国会に対する申し入れは否定されるべきではない」と強調する。
一方、「少なくとも議員の公約でないなら、町民への丁寧な説明と、議会での徹底した討論が必要だ」とも指摘。「可決ありき」の議会の動きには警鐘を鳴らしている。