12日、那覇市で開かれた講演会で、ジャーナリストの高野孟氏は、「安倍政権は中国が尖閣を取りに来るというデマを背景に、そのとき米国が集団的自衛権を発動して防衛してくれることを期待している」が、米国はそのように考えていないと述べました。
また海兵隊が沖縄に駐留する必要がないということは、米国の専門家も述べていることなのに、日本では殆ど報じられていないとも述べました。
尖閣列島問題はもともと日米安保条約のカバー範囲なのですが、米国は中国との信頼関係から、そういうことに巻き込まれるのは迷惑だということを繰り返し暗示しています。
沖縄に駐留している海兵隊が日本防衛のための軍隊でないことは、軍隊について知識を持っている人であれば直ぐに分かることです。それを日本の防衛上欠かせないかのごとくに言って、海兵隊の基地の存続を最優先させようとするのは国民をだますものです。
沖縄タイムスは14日の社説の中で、米海兵隊の撤退論が浮上するたびにそれにブレーキをかけ、引き留めてきたのは日本政府であることを明らかにしています。
琉球新報の記事とともに紹介します。
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在沖海兵隊の沖縄駐留不要 高野氏が講演
琉球新報 2014年9月14日
東アジア共同体研究所(理事長・鳩山由紀夫元首相)の琉球・沖縄センターは12日夜、那覇市内で講演会を開いた。ジャーナリストの高野孟氏が米海兵隊の沖縄駐留は不要だと訴えたほか、沖縄平和運動センターの山城博治議長が米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた作業に反対する市民行動の現状を報告した。
高野氏は尖閣諸島問題に触れ「安倍政権は中国が尖閣を取りに来るというデマを背景に、米国が集団的自衛権を発揮して日本を助けてくれるようにしたいと考えている。だが米大統領も在日米軍もそれに賛成していない」と指摘した。
その上で4月のオバマ大統領来日時の共同記者会見に触れ、「オバマ氏は(尖閣問題で)事態がエスカレートし続けるのは誤りで、日中が信頼を醸成し平和的に解決することが重要と話しており、中国の平和的台頭を歓迎するとまで言っている」と指摘した。
日本側でオバマ氏の「尖閣は日米安保の適用範囲」という発言だけが注目されたことを挙げ「そもそも日米安保条約に書いてあり、国防長官も国務長官も何度も口にしている。近年は米専門家にも海兵隊の沖縄駐留は必要ないとの考えが広まっているが、日本ではほとんど報じられていない」と強調した。
山城氏は辺野古移設に反対する市民運動に厳しく対応している海上保安庁を強く批判した。
(社説)[海兵隊引き留め策]沖縄押し付け もう限界
沖縄タイムス 2014年9月14日
負担軽減とは名ばかりで、海兵隊の撤退論が浮上するたびにそれにブレーキをかけ、引き留めてきたのは日本政府である。
駐日米大使として米軍普天間飛行場の返還交渉に当たったウォルター・モンデール氏が2004年4月、国務省付属機関のインタビューに答えた口述記録の内容が明らかになった。
1995年、米兵による少女暴行事件をきっかけに燃え広がった復帰後最大規模の抗議行動は、日米同盟を激しく揺さぶり、米国内からも海兵隊撤退論が噴出した。
ペリー米国防長官は議会で「日本のあらゆる提案を検討する用意がある」と発言。ジョセフ・ナイ国防次官補は「日本政府が望むなら部隊を本土へ移転することにも応じる」と柔軟な姿勢を示した。
「県民の怒りは当然で、私も共有していた」とモンデール氏が語っているように、日本側にとっては、過重負担に苦しむ沖縄の声を米側にぶつけ、目に見える負担軽減を進める絶好の機会であった。
だが、「彼ら(日本政府)は、われわれ(在沖海兵隊)を沖縄から追い出したくなかった」と、モンデール氏は当時を振り返る。
この時だけではない。復帰直後の72年10月、米国防総省が沖縄を含む海兵隊の太平洋地域からの撤退を検討していたことがオーストラリア外務省の公文書で明らかになっている。
その時にも日本政府は、海兵隊の駐留維持を米側に強く求め、その通りの結果になった。
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「米国政府はこれまで何度も海兵隊の沖縄からの撤退を考えてきたが、そのたびにそれを日本政府が引き留めようとするという歴史が繰り返されてきた」と沖国大の野添文彬講師は指摘する(13日付本紙2面)。
本土のキャンプ岐阜やキャンプ富士に駐留していた米海兵隊が沖縄に移駐してきたのは56年のことだ。当時、沖縄からは「なぜ広大な日本から土地の狭い沖縄に移駐してくるのか理解に苦しむ」との抗議の声が上がったが、聞き入れられなかった。
61年6月の池田・ケネディ会談を受けて来島した米国のケイセン調査団は、沖縄現地で調査したあと、こんな報告書をまとめている。
「日本政府は、その安全保障に寄与し、しかも米軍基地を国内に置くことから生じうる政治問題を避けることができるという理由から、沖縄の米軍基地を歓迎している」
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海兵隊は沖縄でなければならないのか。そんなことはない。
「軍事的には日本国内であればよい。政治的にできないから官僚が道をふさいでいるだけ」だと、防衛大臣を経験した森本敏氏は指摘する(2010年6月、沖縄でのシンポジウムで)。
米ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン氏も12年10月、米ワシントンで開かれた沖縄県主催のシンポジウムで「辺野古計画の取り消し」を提案している。
辺野古は決して唯一の選択肢ではない。