28日のNHKの日曜討論で自民党の谷垣幹事長は例によって、「消費税率を10%に上げたときのリスクは手の打ちようがあるが、上げなかったときのリスクは非常に不安がある」という意味不明の理由を挙げて税率アップの必要性を強調し、公明党の井上幹事長も「税率アップを先送りした場合のリスクを考えるべきだ」とそれに基本的に同調しました。
それに対して全野党は、少なくとも来年段階での税率アップには反対であることを表明しました。
そもそも「消費税率を10%に上げたときのリスクは手の打ちようがある」という言い方こそ何の実体もないもので、1997年に橋本内閣が消費税率を3%⇒5%にあげてから以降ずっと景気が低迷し続けてきたという現実がそのことを証明しています。
安倍内閣はまた盛んに、「消費税増税は既に国際公約になっており、もし見送りになれば、日本の信用が失われる。即ち日本が財政再建をやる気がないと看做され、長期金利が上昇する」などと強調しますが、それもまた根拠のないことです。
安倍内閣が消費税増税に熱心であることは諸外国も承知していますが、それを国際公約と受け止めて、増税しなければ公約違反だと指摘するような国はありません。
元内閣参事官の高橋洋一氏は、この21日に発表されたG20の共同声明を読んでも、別にそんなことを窺わせるものはなく、増税が国際公約だから避けられないというのは本末転倒の話だと述べています。
28日の夕刊フジの記事を紹介します。
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「消費増税は公約」の嘘 国際常識から外れ本末転倒
高橋洋一 夕刊フジ 2014年9月28日
(元内閣参事官・嘉悦大教授)
G20(20カ国財務相・中央銀行総裁会議)は、20、21日にオーストラリア北東部のケアンズで開催された。ルー財務長官は消費増税後の日本経済について「期待外れ」と話し、円安を事実上容認するなど日本経済に懸念を持っている様子だ。
麻生太郎財務相は、財政再建の約束をする一方、消費税の再増税は年内に判断すると記者会見で述べた。これを受けて、一部では相変わらず「消費増税は国際公約」とする向きもある。果たして世界ではそう考えているのだろうか。
国際公約の英訳である「international commitment」と、「tax(税金)」という言葉でグーグルを使って検索すると、5万800件がヒットする。ただ、その中身は、税の回避行動について各国で協力して対処しようという内容が多い。情報交換など各国で協力する責任・義務を求めているのだ。
次に「tax」を「consumption tax(消費税)」に代えて再び検索すると、わずか1920件のヒットに減少する。しかも、その内容のほとんどは日本の新聞記事の英訳だ。そこには「日本の消費増税が国際公約になっている」と書かれている。
これをみる限り、世界では、日本の消費増税が国際公約になっているという意識はまずないといえるだろう。税に関する国際公約といえば、消費税ではなく一般の税に関する租税回避・脱税での国際協力関係である。
この観点から今回のG20の共同声明を見直してみると、10のパラグラフ(文節)のうち8番目で、国境を越える租税回避と脱税にグローバルな対応をすることを強く「commit(公約する)」と書かれている。日本の消費増税など書かれていない。
内国税である消費税の増税について、国際公約でないと考えるのは、国際社会では当たり前である。というのは、内国税を増税するかどうかは、他国が干渉できない国内問題だからだ。他国が増税しようが減税しようが、何か意見しようものなら、内政干渉になってしまうので言うことはない。この意味で、他国が予定通り増税しなくても、それが公約違反だと指摘する国はないだろう。
G20のような国際会議は、その場で新たな約束をするのでなく、既に各国で決められている内容を披露する場である。先進国では、政府の権能は国会の議決の範囲内であるので、国際会議で国会の意向を無視して勝手に国として約束することはできないというのが基本である。
こうした国際常識からみれば、マスコミが「国際公約」というのは、国内で決まったことを一方的に国際会議の場で宣言するという意味でしかない。
だから、増税が国際公約だから避けられないというのは、本末転倒の話で、増税勢力によって作られた増税キャンペーンの一環だろう。それを無批判に垂れ流してきたマスコミもどうかしている。国民の多くはそんなマスコミ報道を見透かしており、信じていないはずだ。