2014年9月18日木曜日

吉田清治証言が取り消されても慰安婦問題の本質は変わらない

 朝日新聞が朝鮮人慰安婦の強制連行に関する偽りの「吉田清治証言」を一回ならず報じ、その後学者などによって否定的検証が行われたにもかかわらず、32年後の今年になってようやくその誤りを認めたのは見苦しいことでした。
 実は初回報道の15年後の1997年に、朝日新聞大阪支社の外報部で吉田証言の検証を行ったのですが、そのときの外報部長(その後西部本社代表に)が当時記事を書いたK記者であったこともあって、有耶無耶に終わったという経緯がありました。
 
 そうした非は朝日新聞にありましたが、その当時吉田証言を報じたのは別に朝日新聞だけではなかったし、近代史の研究の中では吉田清治証言などはそもそも採用されておらず、それは例の「河野談話」の作成過程においても同様でした。
 従って政府そして産経新聞、読売新聞、週刊誌などがここぞとばかり朝日新聞のバッシングに熱中しているのは、この際政府批判を行う新聞紙は徹底的に叩いておこうという意図に他なりません。
 
 この問題について、韓国聯合ニュースが伝える韓国政府当局者の発言は非常に冷静です。
 発言の骨子は、吉田証言が取り消されても、① 慰安所で女性たちが自由を奪われて尊厳を傷つけられたという事実と、本人の意志に反して慰安婦にさせられたという強制性が存在していた事実は変わっていない ② 強制連行についての被害者の肉声証言のほか、1945年に連合国軍総司令部が作成した文書など証拠がある というものです。
 
 16日の韓国聯合ニュースを紹介します。
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朝日の記事取り消し「慰安婦問題の本質変わらず」=韓国政府 
聯合ニュース 2014年9月16日
【ソウル聯合ニュース】朝日新聞が慰安婦報道の一部を取り消したことをめぐり、韓国政府当局者は16日、記者団に対し、「朝日新聞の記事撤回を根拠に(旧日本軍による慰安婦動員の)強制性を否定しようとするのであれば、それは慰安婦問題の本質を糊塗(こと)するものであり、過去の過ちを縮小、隠蔽(いんぺい)することである」との立場を示した。
 
 朝日新聞は慰安婦に関する同紙の過去の報道で、暴力を使って無理やり女性を連れ出し慰安婦にしたとする吉田清治氏(故人)の証言を取りあげたが、検証の結果、証言を虚偽と判断し、関連記事を取り消すとした。 
 同当局者は、「朝日新聞も慰安婦問題の本質、すなわち慰安所で女性たちが自由を奪われて尊厳を傷つけられたという事実と、本人の意志に反して慰安婦にさせられたという強制性が存在していた事実は変わっておらず、この問題に対する朝日新聞の立場にも変わりがないとの立場を明確にしている」と強調した。
 また、記事の取り消しにより、強制連行の証拠がなくなったという日本の一部の主張については、被害者の肉声による証言のほか、1945年に連合国軍総司令部が作成した文書など、証拠は他にもあると反論した。
 
 慰安婦問題などをめぐる4回目の韓日局長級協議の日程が決まっていないことについては、開催の提案はしたが、日本側に内部事情があるとみられると説明した。
 
 一方、慰安婦問題で旧日本軍の関与と強制性を認めた河野談話の発表に先立ち、日本政府が21年前に韓国で実施した被害者の聞き取り調査の様子を収めた映像が、韓国の市民団体「太平洋戦争犠牲者遺族会」によって公開されたことを受け、菅義偉官房長官は16日、非公開を前提に行われたものが、一部公開されたことは理解しがたく、遺憾と述べた。
 これについて韓国外交部の魯光鎰(ノ・グァンイル)報道官は同日の定例会見で、「民間団体が公開したものについて話す事項ではないが、なぜこの時点で公開することになったのか、皆さんが一度よく考えてみるように願う」との立場を示した。