2014年9月27日土曜日

日本の株高 ドル建てでは逆に下落基調

 政府は年末の消費税増税決定に向けて、政府資金で株価を操作したりして情勢作りに躍起になっていますが、景気の落ち込みようは深刻です。
 普段政府寄りの報道しかしない夕刊フジも、ルー財務長官が21日のG20閉幕後の記者会見で、「日本は消費税率を4月に8%に引き上げて以降、個人消費と投資が落ち込んでおり、経済活動の縮小による困難に直面している」と懸念を示したことを報じています(22日付)
 
 政府はまた、消費税を10%に上げることは国際公約であるなどと 意味不明のことを口にしていますが、これ以上景気を落ち込ませないことこそが海外が期待していることでしょう。
 
 株価には円安に連動して上がるという特性があるようで、安倍首相は官邸に平均株価が表示されるようにして、それを眺めて悦に入っているといわれています。
 
 しかし26日の夕刊フジは、「日本の株高はドル建てでは下落基調だ」とする田村秀男氏の解説を載せ、政府が陥っている景気回復という誤った見方を批判しました。
 「円建てとドル建ての株価が解離し始めたのは、GDPが年率換算でマイナス6・8%に落ち込んだことが明らかにされた8月中旬からで、それ以降は円安が株高につなトレンドは消えた。
 政府がこのまま景気動向を無視して、先行き楽観主義を押し通し、消費税再増税を強行するようだと、最後の頼みの株価も失速しかねない
と警告しています
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ちょっと変だぞ「日本株高」 ドル建てでは逆に下落基調
 田村秀男 夕刊フジ 2014年9月26日
                             (産経新聞特別記者
 21日に閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では麻生太郎財務相や黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が米国などから厳しく景気てこ入れを迫られる始末だった。麻生、黒田両氏とも景気回復については楽観論に終始し、来年10月からの消費税再増税を「国際公約」する手はずだったようだが、それどころではなかった。
 実はこうした国内と海外の日本経済に対する見方のギャップは株価に表れている。
 
 日経平均株価は円安の追い風を受けて1万6000円台を付けているのに、なぜ、と思われる読者もいるだろうが、異変が起きている。ドル建てでみた株価は下落基調にあるからだ。
  


 グラフは主要国・地域の株価をドル建てと現地通貨建ての2つの指数で表示する「MSCI」株価指数の日本編と円の対ドル相場の推移である。円建て株価指数は円安基調と並行してじりじりと上昇し、7月初めに比べた9月19日時点の株価は4・4%上昇したが、ドル建てでみると逆に3%近く下回っている。
 円安の度合に比べ、円建て株価の上昇幅が少ないからだが、円建て指数とドル建て指数は日銀による異次元緩和が2013年4月4日に打ち出されて以来、ほぼ重なるようにして変動してきた。それが、今年8月中旬あたりから、かい離し始め、現在に至る。
 きっかけは、8月13日発表の4~6月期国内総生産(GDP)第1次速報値のようである。同期の実質経済成長率は消費税増税前の駆け込み需要の反動減が「想定外」の大きさで、年率換算でマイナス6・8%となった。9月8日発表の第2次速報ではマイナス7・1%に下方修正された。7月以降の家計消費などの景気指標は停滞しており先行きは厳しい。
 
 株価に話を戻すと、気掛かりなのは、「外国人投資家」の動向だ。通常、日本株の売買の6、7割はニューヨーク・ウォール街を本拠にする投資ファンドなど外国人投資家が占める。これら投資ファンドは、日本株など海外株と米国株をドル建てで計算し、保有シェアをしばらく固定して資産を運用する。
 
 円安に振れると、日本株のドル換算価値が下がる。すると、投資ファンドの自動売買プログラムは日本株の保有シェアを引き上げるよう日本株を買い増す。その結果、円安=日本株高の構図となる。それが、アベノミクスがもたらしてきた円安が株高につながった最大の要因だが、そのトレンドは消えた
 海外の多くの投資ファンドが資産構成に占める日本株のシェアを引き下げている可能性もある。
 米株価にも日本株価は影響されるが、米市場は米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ懸念などで一進一退だ。
 アベノミクスの有効性への国内外の信頼は、株高によってかろうじて保たれている。政府が景気動向を無視して、先行き楽観主義を押し通し、消費税再増税を強行するようだと、最後の頼みの株価も失速しかねない
 
 
消費増税 米もダメ出し 財務長官が「失望」表明
夕刊フジ 2014年9月22日
 日本の消費増税に米国からノーが突き付けられた。4月以降の成長鈍化について、ルー米財務長官が「期待外れとなった」と表明したのだ。増税推進派は「消費増税は国際公約」というのだが、再増税を強行すれば世界に迷惑をかけることになりかねない
 ルー財務長官は21日、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後の記者会見で、日本とユーロ圏を名指しして、最近の成長鈍化を指摘した。日本については、消費税率を4月に8%に引き上げて以降、個人消費と投資が落ち込んでおり、「経済活動の縮小による困難に直面している」と懸念を示した。
 G20初日の世界経済についての討議で、麻生太郎財務相は、議長に求められる形で、日本経済の現状や成長戦略などを説明。麻生財務相は「日本に対する期待の高さを実感した」と胸を張る一方、「日本経済は緩やかな回復が続いている」と各国の懸念解消に躍起だった。
 アベノミクスで長年のデフレから脱却しつつあったが、消費増税をきっかけに変調がみられる日本経済。その先行きに米国が警戒しているのは明らかだ。
 
 このところ急速に進んでいる円安についても、本来なら米国の自動車産業などにとって打撃となるはずだが、ルー長官はクギを刺すどころか、17日の講演会で「強いドルは良いことだ」と述べ、円安ドル高を事実上容認した。G20でも「為替の議論はなかった」(会議筋)という。
 ルー長官は、19日には麻生財務相に「内需拡大を維持するための政策」を要請。政策を総動員して景気の底割れを回避すべきだと迫った。
 
 麻生財務相は再増税に備えた補正予算を検討するとしているが、当然ながら税金が使われる。「なんのために消費増税するのか、本末転倒」(エコノミスト)という状況だ。再増税をやめれば済む話ではないのか。