2014年9月19日金曜日

従軍「慰安婦」問題で日本ジャーナリスト会議・東海が声明

 朝日新聞は、30年ほど前に「従軍慰安婦が強制連行された」と書いた記事は、吉田清治証言に基くもので虚偽であったことを認めるとともに、元福島原発所長吉田昌郎氏に対する政府事故調の調書を入手したとして報じた今年5月の記事で、「大震災直後に吉田所長の待機命令に違反して東電社員らの9割が福島第二原発に撤退した」と書いたのは、事実と違っていたことを認めました。
 そして9月11日に、朝日新聞の社長が二つの誤った報道について謝罪の記者会見を開き、翌日朝刊に「おわび」を掲載し遅きに失しましたが社として一応のけじめをつけました。
 
 しかしこの問題を巡って日本のマスコミの一部は盛んに朝日新聞のバッシングを繰り返し、政権もそれを煽るかのようにして「慰安婦問題そのものの否認報道への介入」をめようとしています。
 
 日本ジャーナリスト会議・東海は16日付で「従軍『慰安婦』問題でメデイアは真実の追求を競え」 とする声明を出しました。
 
 それによると。
 「吉田清治証言は以前からその信憑性に疑問が持たれていたが、インドネシア・スマラン事件では旧日本軍による強制連行を示す公判記録が残っているし、『慰安婦』の証言も数多くある。
 国連人権委員会1996年の特別報告で“『慰安婦』募集に日本軍が関与していると認定しており、作成責任者のクマラスワミ氏は、「元『慰安婦』への聞き取り調査から、日本軍が雇った民間業者が元『慰安婦』を誘拐した事例があり、募集は多くの場合、強制的に行われたと述べていて、国際的には『慰安婦』募集に、日本軍が関与していることはゆるぎない事実として認定されている」 としています。
 そして
 「日本軍の管理下無権利状態で拘束された、将兵たちの性の相手にさせられた『慰安婦』は重大な女性への人権侵害で、それは吉田清治証言が取り消されても変わることはない。
 私たちは全てのメディアに対し今後も『慰安婦』問題の事実解明に力を注ぐことを要請する。また朝日新聞には、なぜそのような誤りを行なったかの精密な検証を行い、国民に報告するとともに、今後とも非難や圧力に萎縮することなく、真実の報道に力を注ぐよう、要請する」 としています。
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[声明] 従軍「慰安婦」問題でメデイアは真実の追求を競え
      日本ジャーナリスト会議・東海
 
 朝日新聞は自社が過去に行なった「従軍慰安婦が強制連行された」とする記事は、元労務報国会下関支部動員部長と称する吉田清治氏の証言に基くものであったが、吉田証言を再取材した結果証言を裏付ける話はなく、「虚偽」と判断した――と報道しました。また、「女子挺身隊」と「慰安婦」の混同による誤用もあったことを認めました。
 
 しかし記事の取り消しを行なった後も、社としての謝罪が直ちに行なわれず、さらに重ねて今年5月に東京電力福島原発所長の吉田昌郎氏(故人)に対する政府事故調査・検証委員会の調書を入手したとして報じた記事で、「大震災直後に吉田所長の待機命令に違反して第一原発にいた東電社員らの9割が第二原発に撤退した」という記事についても「調書の評価を誤り、事実と違う記事を発表した」と、この記事も取り消しました。
 
 そして9月11日に木村伊量社長が二つの誤った報道について謝罪の記者会見を行ない、翌日朝刊に「おわび」を掲載しました。「遅きに過ぎた」との謗りを免れません。吉田清治証言検証報道以来、メディア(新聞や週刊誌、テレビ報道など)やネットで朝日新聞への批判、非難が渦巻いており、自民党の石破茂元幹事長は、朝日新聞慰安婦検証報道について国会での検証を示唆し、評論家の桜井よしこ氏は「潰すべき本丸は河野談話」と述べ、稲田朋美自民党政調会長も河野談話の見直しに言及しました。政治権力による慰安婦問題の否認と報道への介入が強まろうとしています。
 
 吉田清治証言は以前からその信憑性に疑問が持たれていましたが、インドネシア・スマラン事件では旧日本軍による強制連行を示す公判記録が残っています。また騙されて軍慰安所に連れて行かれた元「慰安婦」の証言も数多くあります。2007年にはアメリカ連邦議会下院において、日本軍が女性たちを「性奴隷」となるよう強制したことを認め、謝罪することを日本政府に勧告する決議を採択。オランダ、カナダ、韓国、台湾などでも決議がされています。
 
 1996年に国連人権委員会が提出し、日本政府へ謝罪と賠償を勧告した「女性への特別報告」及びその付属文書1「戦時における軍事的性奴隷問題に関する朝鮮人民民主共和国、大韓民国および日本への訪問調査に基く報告」は「慰安婦募集に日本軍が関与している」と認定しています。
 
 一部メディアに報告書が吉田証言に影響されているとの説もありますが、特別報告書作成の責任者であるクマラスワミ氏(スリランカ人、現国連総務)は、朝日新聞が吉田清治氏の証言を虚偽として一部の報道を取り消したことについて、吉田証言は「証拠の一部にすぎない」と述べ、元「慰安婦」への聞き取り調査から、「日本軍が雇った民間業者が元慰安婦を誘拐した」事例があり、「募集は多くの場合、強制的に行われた」と述べています(2014年9月5日共同通信)。
 
 このように国際的には「慰安婦」募集に、日本軍が関与していることは数々の証拠から、ゆるぎない事実として認定されています。
 「慰安婦」とは日本軍の管理下にあって、無権利状態で拘束された、将兵たちの性の相手にさせられた女性たちのことで、重大な女性への人権侵害です。このような女性の名誉回復のために、事実究明が重要であることは、言を待ちません。しかし昨今の朝日新聞バッシングは節度ある批判の領域を踏み越え、非難,罵倒の言辞が目立ち、あたかも「慰安婦」問題が始めからなかったかのような錯覚を与えかねない、異常な状況となっています。
 新聞記事の点検、取り消しと言う[木]にとらわれて、肝心の[森(「慰安婦」問題)]の存在に眼をそむけてはなりません。
 私たちは全てのメディアに対し今後も「慰安婦」問題の事実解明に力を注ぐことを要請します、また朝日新聞には、なぜそのような誤りを行なったかの精密な検証を行い、国民に報告するとともに、今後とも非難や圧力に萎縮することなく、真実の報道に力を注ぐよう、要請します。
2014年9月16日
 日本ジャーナリスト会・東海