おなじみのPaul Craig Robertsの論文です。
彼は、アメリカの戦略によって世界の悪者にされ、国家の威信を傷つけられ、経済活動も封じられているロシアに対して、次のようにすれば打開できるのではないかと述べています。
彼は、アメリカの戦略によって世界の悪者にされ、国家の威信を傷つけられ、経済活動も封じられているロシアに対して、次のようにすれば打開できるのではないかと述べています。
『米と欧州が発表した対ロシア新経済制裁は、ロシアを締め上げる経済施策としては意味をなさないもので、本当の目的は、ヨーロッパとロシアとの経済的、政治的関係を破壊し、ヨーロッパを弱体化させることにあるが、ヨーロッパのリーダーたちはアメリカの言いなりになっているのでそれに気づくことはない。制裁の行き着くところは欧州対ロシアの戦争であり、その目的が達成されるまではアメリカは対ロシア経済制裁を継続するだろう。
事実、先般プーチンがウクライナ東部のドネツク共和国に停戦を強いたことで、ウクライナでの停戦が実現したが、それによって欧米がロシアに対するプロパガンダを止めたり、経済攻撃を停止したりすることは一切なかった。
アメリカの戦争への衝動を解消するためにも、ロシアは節度ある態度で対応するのではなくて、ロシアに対して経済制裁をすればヨーロッパやアメリカが重大な代償を払うことになることをはっきりと示す必要がある。その具体的な方法は、NATO加盟国には天然ガスを売らないことにするということでもいいし、ガスは販売するがその代金は、ドルではなくルーブルで払う必要があると言い渡すことでもいい。
また、アメリカに対しては宇宙衛星への連絡に使っているロシアのロケット・エンジンを販売するのを止めることだろう。そうすれば、アメリカは6年間は衛星に到達できるロケットが無いことになる。
アメリカがロシアに布石している第五列(伏兵・裏切り分子)については、反逆罪のかどでその中核部隊を逮捕すればよい。』
そして、オバマ大統領、彼の政権閣僚、議会有力者の発言には、『世界覇権を求めるアメリカ政府の意欲を手控えるという示唆は全く見られない。
アメリカ経済は今や略奪に依存しており、この腐敗した形の資本主義には、アメリカ政府の覇権が必要不可欠なのだ』、と結んでいます。
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アメリカの対ロシア戦争
マスコミに載らない海外記事 2014年9月16日
Paul Craig Roberts 2014年9月14日
アメリカとヨーロッパが発表した対ロシア新経済制裁は、単なる経済施策として、意味をなさない。もしロシアの石油と軍事産業が、意味ある形で、ヨーロッパ資本市場に依存していたなら、私は驚いていたろう。そのような依存は、ロシアの戦略的思考の失敗を意味するだろう。ロシア企業は、ロシアの銀行、あるいはロシア政府から十分な融資が確保できるべきだ。もし外国借款が必要であれば、ロシアは中国から借りることができる。
もしロシアの極めて重要な産業が、ヨーロッパの資本市場に依存しているのであれば、経済制裁は、この消耗性の依存を止めるよう強いて、ロシアを助けることになる。ロシアは、いかなる形でも、欧米に依存してはならない。
本当の疑問は、経済制裁の目的だ。私の結論は、経済制裁の目的は、ヨーロッパの、ロシアとの経済的、政治的関係を破壊し、弱体化させることだ。国際関係が、意図的に損なわれた場合には、戦争という結果になりうるのだ。ロシアが、ヨーロッパに、アメリカの手先として働いていると、大変な代償を払わされることになることを示さない限り、アメリカは、対ロシア経済制裁を継続するだろう。
戦争へと向かう衝動を脱線させる為に、ロシアは、更なる経済制裁という、この過程を粉砕する必要がある。私の考えでは、ロシアが、そうするのは容易だ。ロシアは、ヨーロッパに、あなた方は、我が国の石油会社がお好きではないのだから、我が国のガス会社もお好きでないに違いないので、ガス栓を閉めますよと言うことができるだろう。あるいは、ロシアは、ヨーロッパに、NATO加盟国には天然ガスを売らない、と言うこともできるし、またロシアは、あなた方にはガスを販売し続けるが、代金は、ドルではなく、ルーブルで払う必要がありますよと言うこともできる。これは為替市場での、更なるルーブル需要という、追加的恩恵をももたらしてくれて、投機家やアメリカ政府が、ルーブルを弱体化させようとするのを、より困難にするだろう。
ロシアに対する本当の危険は、経済制裁に、控えめな、節度ある対応を続けていることにある。こういう対応では、更なる経済制裁を奨励してしまう。経済制裁を止めさせるには、ヨーロッパが経済制裁で重大な代償を払うことになることを、ロシアは、ヨーロッパにはっきり示す必要がある。
ロシアの、アメリカへの対応は、アメリカに、アメリカの宇宙衛星計画がそれに依存している、ロシアのロケット・エンジンを販売するのを止めることだろう。これによって、2016年から2022年までの6年間、アメリカは衛星を打ち上げるロケットが無いことになる。
ロシア政府は、ガスや、ロケット・エンジン販売の収入喪失を恐れている可能性がある。しかし、ヨーロッパは、ガス無しでは、やってゆけず、早々と経済制裁参加を放棄するだろうから、ガス収入が失われることはあるまい。アメリカは、いずれにせよ、自前のロケット・エンジンを開発するだろうから、ロシアがロケット・エンジンを、アメリカに販売できるのも、せいぜいあと6年だ。ただし、アメリカの衛星計画が、今後6年間損なわれるのは、アメリカのスパイ計画から、全世界の大きく安堵できることを意味する。その期間、アメリカ軍のロシア侵略も困難にしてくれるだろう。
ロシアのプーチン大統領と彼の政権は、経済制裁や、アメリカが、ウクライナで、ロシアに対して引き起こし続けている面倒への対応が、非常に控えめで、非挑発的だ。ロシアの控えめな振る舞いは、ヨーロッパに対して、威嚇的でない顔を見せて、アメリカが、ヨーロッパを、対ロシアに利用するのを妨害する戦略と見なすことができる。しかしながら、ロシア国内には、アメリカの利権を代表する第五列が存在していて、ロシア政府の力を抑制しているという解釈もある。
ストレリコフは、アメリカの第五列について、ここで説明をしている。
Sakerは、ロシア国内の二つの集団を、プーチンと独立ロシアを支持しているユーラシア主権主義者と、アメリカ覇権の下にあるヨーロッパに、ロシアを組み込むために動いている、あるいは、それが駄目なら、ロシア連邦を、アメリカの武力行使を抑制するには、余りに脆弱な、いくつかのより弱体な国々に、アメリカが、分裂させてしまうのを手助けする第五列の大西洋統合主義者だと説明している。
ロシアの大西洋統合主義者達は、ブレジンスキーと、ウォルフォウイッツの教義を、アメリカ政府と共有している。この二つの教義は、アメリカ外交政策の基盤だ。二つの教義は、アメリカ外交政策の目標は、アメリカ覇権を制限しかねない、ロシアや中国等他の国々の勃興を妨げることとして定義しているのだ。
アメリカ政府は、ロシアのこの二つの権力集団間の緊張につけこめる立場にいる。アメリカ政府の第五列は、勝利する為の最善の立場にあるわけではない。とはいえ、アメリカ政府は、少なくとも、二者の戦いが、欧米の挑発に対するプーチンの控えめな対応を巡る、ユーラシア主権主義者内部での意見の相違を引き起こすことは期待できる。こうした意見の相違の一部は、ストレリコフによるロシア擁護にも見られるし、更にここにもある。
冷戦はソ連崩壊で終わったと考えたロシアは、自らを欧米に開放した。ロシアは、だまされやすさゆえに、欧米を信頼し、欧米は、ロシア人エリートの中で無数の味方を買収することができた。マスコミの支援を得て、こうした日和見エリート連中が、プーチンを暗殺し、クーデターを企むことが可能なのだ。
ロシアが、欧米の脅威に対し、団結して対抗できるようにすべく、今やプーチン政権は、危険を認識して、反逆罪のかどで、第五列の中核部隊を逮捕し、裁判し、処刑してもよいはずだろうと考えるむきもあろう。もしプーチンが、こうした対策を講じなければ、プーチンが、この脅威の深刻さに気がついていないか、彼の政権には、内部の脅威から、ロシアを守る力が欠如しているかの、どちらかを意味している。
ドンバス地域を、ウクライナの攻撃から守るのを拒否し、その軍隊が、崩壊しつつあるウクライナ軍を、今にも大規模敗北させようとしかけていた矢先に、ドネツク共和国に停戦を強いたことで、ロシア政府にとって、欧米プロパガンダと経済攻撃からの一時休止を、プーチン大統領が何も実現できていないことはあきらかだ。プーチンが達成できたものと言えば、東部と南部ウクライナのロシア人を裏切って、自らを、支持者達からの批判を受ける立場にしたことだけだ。
ヨーロッパの政治家とエリート達は、すっかりアメリカの言いなりになっているので、プーチンには、ロシアが善意を示すことで、ヨーロッパを説得する可能性はほとんどない。私としては、もしこの戦略が有効であれば嬉しいが、有効だと思ったことは皆無だ。ヨーロッパにエネルギーを使わせないという直接の脅威だけが、ヨーロッパ内部に、アメリカから独立した外交政策を生み出す可能性があるのだ。ロシア天然ガスを切断されて、ヨーロッパがやって行けると私は思わない。ヨーロッパは、ガスの流れを保証する為、経済制裁を止めるだろう。もしアメリカ政府のヨーロッパ掌握がそれほど強力で、領臣としてのふるまいの代償としてのエネルギー供給の大規模な途絶に、ヨーロッパが進んで耐えるようであれば、ロシアは、外交による無駄な努力を止めるべきことを理解し、戦争に備えるだろう。
もし中国が傍観したままでいれば、中国が次の孤立化の標的となり、同じ扱いを受けることになる。
アメリカ政府は、内部の反対派による、あるいは戦争による両国の打倒を狙っている。
オバマ大統領や彼の政権閣僚、あるいは、いかなる議会有力者の発言にも、世界覇権を求めるアメリカ政府の意欲を手控えるという示唆は全く見られない。
アメリカ経済は今や略奪に依存しており、この腐敗した形の資本主義には、アメリカ政府の覇権が必要不可欠なのだ。