2016年3月7日月曜日

07- 辺野古訴訟和解の意味するもの

 辺野古新基地建設に関する代執行訴訟で国と県の和解協定が成立しました。国は訴訟を取り下げて工事中断されますこの中断を大きな成果と評する向きもありますが、植草一秀氏も天木直人氏もそういう見方はしていません。
 
 国は和解で、この夏参院選と沖縄県議選があ間は一旦工事の強行を止めて話し合いに入ります。こうして選挙への悪影響を解消する一方で、辺野古移設が唯一という政府の考えは変わっていないので、話し合いを再開しても平行線に終わり再び裁判になります。いまの司法が安倍政権に不利な判決を下すはずはなく、和解協定によれば判決には(政府も)沖縄も従うことになっているので、翁長知事はそれを受け入れるしかありません。
 
 政府としては中断した期間の分は工事が遅延するものの、判決後はスムーズに辺野古基地の建設を進められると踏んだわけです。政府の作戦勝ちということになります。
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辺野古訴訟和解は誰にとって都合の良いものか
植草一秀の「知られざる真実」 2016年3月 5日
沖縄県名護市辺野古海岸における米軍基地建設問題で国と沖縄県が対立している代執行訴訟で国と県の和解が成立した。国は訴訟を取り下げて工事を一時中断する。
 
和解条項の最大のポイントは、県が今後、辺野古沿岸部での埋め立て承認取り消しに関して新たな訴訟を提起して判決が確定した場合に、「政府と県がその判決に従う」とともに、「その後も互いに協力して誠実に対応する」ことが盛り込まれた点にある。
この点を踏まえると、今回の和解は、国の主張が押し通される結果を早期にもたらすものになる意味を有すると考えられる。
 
国と県が訴訟を応酬してゆく場合、問題の最終決着には多大の時間を要する。
さらに、辺野古米軍基地建設の設計変更を行う場合、知事が承認を下さなければ、工事はできない。
和解条項には、辺野古沿岸部での埋め立て承認取り消しに関して新たな訴訟を提起して判決が確定した場合に、「政府と県がその判決に従う」ことを確認してしまっているため、仮に県が訴訟で敗れた場合に、辺野古基地建設を阻止する行動が「和解に反する」との批判を招きやすくなることが予想される。
 
沖縄県の翁長雄志氏の公約は、「辺野古に基地を造らせない」である。
この公約に対する行動の評価は、「辺野古に基地を造らせない」公約を守るために、最大の力を注いだのかどうかによることになる。
 
今回の和解で、工事は一時中断されることになるが、最終的に辺野古に基地が造られてしまうのなら、意味はない。
昨年8月から9月にかけて工事が一時中断されたことがあったが、一時中断以上の意味はなかった。
この時期、日本国内で最大の問題になったのは、安保法制=戦争法制だった。
安倍政権は戦争法制強行制定と沖縄問題の同時進行を嫌い、沖縄問題をこの期間だけ鎮静化する方策を講じたものと見られる。
 
今回は、今年夏に参院選と沖縄県議選があり、この選挙に向けて、基地阻止勢力がさらに勢力を拡大することを阻止するために、やはり、この期間だけ工事を中断する方策を講じたものと見える。
 
辺野古基地建設阻止を主張してきたメディアは、今回の和解成立をプラスに評価する論説を提示しているが、問題の本質を見落としている。
問題の本質とは、「辺野古に基地を造らせない」公約が守られるかどうか。その一点にある。
国と県が対立し、県知事が「辺野古に基地を造らせない」ためにあらゆる手段を、もっとも効果的に活用することが、「辺野古に基地を造らせない」結果を実現するためには、最も有効である。
 
訴訟を仕切り直しして、その訴訟の判決が示されたら、その判決に従う」ことを内容とする和解に応じることは、「辺野古に基地を造らせる」結果につながる可能性を著しく高める行動であると考えられる。
評価が定まるのは結果が判明してからということになるが、仮に「辺野古に基地が造られる」結果が生じる場合には、今回の和解案受け入れも、その重要な原因のひとつになったとの評価を受けることを避けることはできない。
 
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目も眩むような沖縄の敗北と安倍・菅暴政の高笑い 
天木直人 2016年3月5日
 安倍首相の浅知恵もここに極まれりだ。その浅知恵にさえ勝てない翁長知事の限界もここに極まれりだ。
 安倍政権による突然の和解受け入れの意味するものは何か。ずばり、急がば回れの選挙対策だ。
 すなわち、一旦は辺野古強行を止めて、話し合いを再開するという譲歩の姿勢を見せる。これに文句を言う者は誰もいない。
 しかし、再び話し合いを始めても平行線に終わり、再び裁判になる。しかし、その裁判で下された判決に、こんどこそ政府も沖縄も従う。それが今度の和解案の中に明記されている。ここが最大のポイントだ。
 
 いまの司法が安倍政権に不利な判決を下すはずがない。
 辺野古移設を認める判決が下され、その時こそ、翁長知事はそれに従わざるを得ない。
 もちろん、それでも拒否はできる。しかし、その時は、いまと違って世論の反発は沖縄に向かう。司法の判断を受け入れる和解条項を飲んだのではなかったのかと
 そして、その時は、選挙で勝利した安倍政権の力は、今よりさらに強くなっているはずだ。
 このシナリオを安倍首相がトップダウンで、国を挙げて、つまり最高裁も巻き込んで、やらせたということだ。
 もはや沖縄一人ではとても抵抗できない。
 
 いまからでも遅くない。辺野古基地移設問題は国全体の問題ととらえて、国政の場において根本的な議論をし直さなくてはいけない。
 なぜなら、辺野古に米軍新基地を作ってしまえば、もはや日本は永久に米国の軍事占領から抜け出せないからだ。
 繰り返していう。
 辺野古移設問題は沖縄の負担軽減の問題だけではない。
 日本の将来を決める一大問題である。
 このことを正面から唱える人物が政界やメディアの中から出てこなくてはいけない。
 その声が国の将来を憂うるまともな保守の中から出てこなくてはいけない(了)