安倍首相が、「在任中に憲法改正をなしとげたい」と述べたことについて、民主党や共産党などは批判を強めており、夏の参議院選挙に向けて、安倍政権のもとでの改正を阻止する姿勢を明確に打ち出す考えです。
社民党も当然そうでしょうし、新年の記者会見で自民党が盛り込もうとしている「緊急事態条項」を厳しく批判し、安保法制廃止に向けての野党共闘に賛意を示している生活の党もそうだと見ることができます。
それに対して公明党の漆原氏は「制定から70年もたって憲法が老朽化している可能性がある。内容を現代に合わせていく必要性」はあり、現行憲法を尊重した上で新たな条文を加える加憲主義を標榜し、安倍氏の発言を「まずいことはない」と評価しています。
そうした情勢のなかで、ブログ:「Everyone says I love you !」 は、「憲法9条2項がなければ、日本はアフガン・イラク・湾岸・ベトナム・朝鮮戦争に本格的に参戦していた」とする記事を載せました。
近年、自衛隊を憲法で正式に認知するべきであるとして、9条2項の見直しの提案がいわゆる護憲勢力のなかからも行われています。
この点に関して明確に言いうることは、もしも日本が憲法9条2項を有していなければ、アメリカが第二次大戦後に行ったベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争に、日本はことごとく動員されたに違いないということです。
大戦後金満国家でスタートしたアメリカでしたが、長引くベトナム戦争によって著しく国力を消耗し、ついにドルは金兌換券の地位を喪失しました。現在では戦費の不足から、アメリカは違法な「無人機による爆撃」攻撃に徹している状態です。もしも日本がアメリカに追随していたならば、その末路は火を見るよりも明らかです。
確かに自衛隊が専守防衛の域を超えているのではないかという疑念はありますが、だからと言って憲法を改変して現状肯定の市民権を与えてしまえば、この先どこまで保有戦力を拡大させ海外での戦争に奔走することになるのか、その歯止めがなくなってしまいます。
9条2項の改変にはそうした重大な懸念が伴う以上とても賛成することはできません。
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民主・共産 憲法改正阻止の姿勢 明確に
NHK NEWS WEB 2016年3月4日
安倍総理大臣が、憲法改正を「在任中になしとげたい」と述べたことについて、民主党や共産党などは批判を強めており、夏の参議院選挙に向けて、安倍政権のもとでの改正を阻止する姿勢を明確に打ち出す考えです。
安倍総理大臣は、2日の参議院予算委員会で、「自民党は、立党当初から党是として憲法改正を掲げている。私は自民党の総裁であり、先の衆議院選挙でも訴えている。私の在任中になしとげたい」と述べました。これについて、菅官房長官は3日、「自民党は立党以来、憲法改正は党是であり、先日の安倍総理大臣の発言は、『一般論』を言われたのだろう」と述べました。
これに対し、民主党の岡田代表は、「安倍総理大臣の憲法観は非常に危険で、議論に乗るのは慎重でなければならないが、具体的に話すのであれば受けて立つ」と述べたほか、共産党の志位委員長は、「断固反対で、絶対に許さないという立場で論陣を張っていく」と述べました。民主党や共産党などは、安倍総理大臣の憲法観は認められないとして批判を強めており、夏の参議院選挙に向けて、安倍政権のもとでの憲法改正を阻止する姿勢を明確に打ち出す考えです。
一方、おおさか維新の会は、片山共同代表が、「憲法改正をタブーにするのは不幸だ」と述べるなど改正を目指す勢力の拡大を図りたい考えで、憲法改正を巡る野党内での立場の違いが鮮明になっています。
公明党 立ち位置は「改憲」
毎日新聞 2016年3月4日
公明党の漆原良夫中央幹事会長は3日の記者会見で、憲法改正に関する公明党の立ち位置について問われ「護憲か改憲かと言われれば改憲に属すると思う」と述べた。公明党が改憲勢力の一角であるという認識を示した。
漆原氏は「(憲法制定から)70年もたって憲法が老朽化している可能性がある。内容を現代に合わせていく必要性はある」と主張。「わが党は加憲主義」と語り、現行憲法を尊重した上で新たな条文を加える公明党の立場を強調した。
安倍晋三首相が在任中の改憲を目指すと表明したことについては「改憲を党是とする自民党の総裁としての発言で『まずい』ことはない」と指摘。ただ「バラバラの野党に結集軸を与えることになりはしないかと心配している」と述べ、野党が参院選で「改憲阻止」で結集する可能性に懸念を示した。
公明党は、2014年衆院選の選挙公約で「加憲」の対象として環境権などを例示。憲法9条については、戦争放棄の1項、戦力不保持の2項は残したまま、自衛隊の存在を盛り込むことなどを「慎重に検討する」とした。
ただ、環境権は欧州で開発や投資の妨げになっているとの指摘を受け慎重姿勢に転じた。9条加憲も昨年の安全保障関連法の成立で「改正の必要はなくなった」(幹部)と主張している。 【横田愛】
憲法9条2項がなければ、日本はアフガン・イラク・湾岸・ベトナム・朝鮮戦争に本格的に参戦していた。
Everyone says I love you ! 2016年03月03日
いま、日本国憲法9条2項が邪魔だとして、2項を「改正」して国防軍と規定するとか(自民党憲法改正草案)、自衛隊の存在を明記するとか(安倍政権、新9条論)、削除する(井上達夫東大教授)というような議論が盛んです。
どの人も9条1項は邪魔にならないというわけですが、2項があるからこそ日本の憲法は世界でも特に平和憲法と呼ばれ、日本国憲法の三大原理は国民主権、基本的人権の尊重、平和主義といわれているわけです。
9条2項がなくなったり、変えられてしまっては、それはもうごく普通のどこにでもある憲法だし、もはや日本国憲法が特に平和主義だと言われることもなくなります。
第二章 戦争の放棄
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
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去年、2015年9月に集団的自衛権の行使を容認してアメリカ軍の戦争に参戦したり、「後方支援」したりする安保法案を成立させるのに、安倍政権が最も苦労したのが、9条2項の存在でした。
9条2項の条文上、自衛隊は戦力であり保持が禁止されると考えるのがふつうであるところ、戦争直後に警察予備隊を作りそれが自衛隊に発展する中で、専守防衛のための必要最小限度の実力部隊は「戦力」にはあたらないと苦しい解釈をしてきました。
それを今度は専守防衛の枠を外して、日本が攻められていなくてもアメリカの戦争に参戦すると言い出したのですから、憲法学会から厳しく批判され、国民の中でも大きな反対運動が起き、今も安保法制廃棄の意見が根強いのは当然です。
憲法が権力の手を縛って窮屈にさせ、もって国民の人権を侵害させないという立憲主義が最もよく機能したのが、この安保法案をめぐる9条2項の働きでした。
ところで、アメリカは第二次大戦後、切れ目なく戦争・紛争を起こし、クーデターで他国の政権を倒すなどの武力行使を続けています(第二次大戦後、アメリカの関わった主な「戦争・紛争」)。
その中で、表題の5つの戦争は、アメリカが地上軍を送るまでした大規模な戦争ですが、すべてアジアで起こされています。
古いもの順に並べると朝鮮戦争(1950~53)、ベトナム戦争(1960~1975)、湾岸戦争(1991)、アフガン戦争(2001~現在に至る)、イラク戦争(2003~2011)となりますが、朝鮮戦争は法的にはまだ休戦中で、終了とは言えませんし、湾岸戦争・イラク戦争で蹂躙されたイラクはそのまま内戦が続いていますし、アフガン戦争はまさに戦争が続行中です。
このようにアメリカがのべつ幕なしに戦争をするのは、戦争がないと経済が回らない「戦争中毒」の状態にあるからなのですが、日本も朝鮮特需、ベトナム戦争特需と言って、戦後の経済復興をアメリカの戦争のための注文で達成させてもらいました。
日本は憲法9条、特に2項の交戦権の否認があったがため、戦争に参加することなく、経済的に需要を賄うだけですむという、軽武装経済成長主義と言われる「美味しいとこどり」の外交・平和政策で来ることができました。
警察予備隊が作られたのも、朝鮮戦争や冷戦がきっかけでしたから、もし9条2項で手を縛られていなければ、日本はアメリカからすぐさま大っぴらに再軍備を進めるよう求められ、目の前で起こっている朝鮮戦争に参戦したでしょう。
また、ベトナム戦争には韓国軍が参戦しているのですから、当然日本も参戦したでしょう。
湾岸戦争以降はアメリカからの戦争への参加要請が厳しくなりましたから、9条2項がなければもちろん参戦したでしょう。
日本はイラク派兵差し止め訴訟でその「人道復興支援」が実質的には参戦だとして違憲判決が出たように、建前と実態が違っている面はありますが、それでもアメリカの戦争への参加は抑制的にせざるを得ませんでした。
これらはすべて憲法9条効果なのです。
アメリカの産軍複合体のための「美しい日本の自主憲法」。このどこに美しさや自主性がある!
もし、憲法9条2項を改変してしまえば、もうアメリカからの要請を断る歯止めがなくなります。特にイラク戦争のようにフランスやドイツが戦争に反対するような、国際的に支持を受けにくい戦争ほど、日本の参加が強く求められることでしょう。
というわけで、憲法9条、特に2項のおかげで、日本はアメリカの戦争に巻き込まれずに、一人の外国人も戦争で殺さず、また戦闘で殺されないで来たのです。
9条は戦争に行こうとする日本を平和に引き戻す歯止め。
日本国憲法9条にだけは手を出させてはなりません。
(後 略)