安倍首相が構想した「国際金融経済分析会合」は、22日に第3回が開かれました(全5回)。
首相がその会合をテコにして消費税再増税を延期して、衆参同時選挙になだれ込むというのは、今や公然の秘密となっています。
海外から招待する経済学者もそういう観点で選ばれているはずで、第1回のスティグリッツ教授も、アベノミクスの肯定者で消費税増税は当面見合わせる論者であると言われていました。
ところが蓋を開けてみると同教授は、(事前に渡されたレジュメによれば)量的緩和政策は失敗で格差の是正が必要であるとしてアベノミクスを全否定しました。そして消費税増税やその延期については言及しなかったということです。
これは官邸としては大変な読み違いでした。
同教授はさらにTPPについては
同教授はさらにTPPについては
・米国にとってTPPの効果はほぼゼロ
・TPPは悪い貿易協定であるという一致した認識が広がりつつあるので、米国議会で批准されないだろう
・特に投資条項がいかがわしく、新しい差別をもたらし強い成長や環境保護のための経済規制手段を制限する
とこき下ろしたということです。官邸の当惑が目に浮かびます。
そんな内容だったため、官邸はレジュメの和訳を会合当日に出すことが出来なくて、2日後の18日に公表したということです。
政府にとって不都合なことは隠したままにしておきたいものの、招待者の資料なので隠しきるわけにもいかないということで渋々出したのでしょう。
アベノミクスへのダメ出しは勿論ですが、TPPへの批判についても、『超一流』の経済学者のいうことに官邸はよくよく耳を傾けるべきです。(^○^)
日刊ゲンダイの記事を紹介します。
(関係記事)
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政府公表資料はウソ 安倍官邸が隠した米教授“本当の提言”
日刊ゲンダイ 2016年3月24日
22日に第3回が開かれた「国際金融経済分析会合」。米ニューヨーク市立大・クルーグマン教授も来年4月の消費増税反対を提言したが、増税延期の風向きが強くなったのは、先週16日に行われた第1回の米コロンビア大・スティグリッツ教授の提言がきっかけだった。
だが、ちょっと待って欲しい。会合から2日後の18日に政府が公表したスティグリッツ教授提出の資料を見ると、消費増税についての記述はどこにもない。むしろ教授が提言したのは、TPPの欺瞞や量的緩和政策の失敗、格差の是正、つまりアベノミクスの全否定だった。
提言のレジュメとみられる資料は48ページにわたり、例えばTPPについて次のように手厳しい。
〈米国にとってTPPの効果はほぼゼロと推計される〉〈TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、米国議会で批准されないであろう〉〈特に投資条項が好ましくない――新しい差別をもたらし、より強い成長や環境保護等のための経済規制手段を制限する〉
ただ、これは官邸の事務局による和訳で、本来の英文と比較すると、これでも「意図的に差し障りのない表現にしている」と言うのは、シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト、田代秀敏氏だ。
「〈特に投資条項が好ましくない=Investment provisions especially objectionable〉ですが、強い不快感を表す単語【objectionable】を使っています。正確には、〈投資条項が、とりわけ、いかがわしい〉と訳すべきでしょう」
他にも【inequality】を和訳で、アベノミクスに好都合な場合は「格差」とし、不都合な場合は「不平等」とする“都合のいい”使い分けが散見されると指摘する。
「『大不況に関する誤った診断』と題するスライドでは、旧『第1の矢』の金融緩和には期待された効果がないとし、『企業が投資に積極的にならないのは、需要が足りないからだ』と断言しています。世界で最も権威のある経済学者が日本国民のために全力で提言した結果が、アベノミクスの全否定でした。スティグリッツ教授は安倍首相に、アベノミクスを停止し、経済政策を百八十度転換することによって、7月のG7サミットで主導権を取ることを提言しているのです」(田代秀敏氏)
それにしても、スティグリッツ教授の資料はどうして会合当日に公表されず、2日も遅れたのか。内閣官房の担当者は「和訳の適切性について疑義が出たりしまして……」と弁解していた。
政府にとって“好ましくない”ことを隠し、消費増税への教授の意見を必要以上に“強調”したのだとすれば、大問題だ。