17日に公開された動画により、ジャーナリストの安田純平氏がシリアのヌスラ戦線に拘束されていることがほぼ確実になりました。これについては、政府は去年の7月の時点で情報を得ていたと言われています。しかし政府は表向き否定するとともに、裏側でも救出のための対応は何もしていませんでした。その結果が動画の公開になったということです。
この事態を迎えて今度こそ政府が真剣に取り組むようにとメディアはセイを掛けるのかと思うと、NHKなどは、北朝鮮の中距離弾道ミサイルの射程圏内に日本が入っていることの脅威を大々的に宣伝するなど、あたかも関心をそらさせようとしてるように思われます。
北朝鮮がそういうミサイルを数百基持っていることは大昔から分かっていたことです。重要なことはその間ただの1発も日本に撃っていないということで、金 正恩でもそうした節度は持っているということです。
思えば一昨年には湯川遥菜氏と後藤健二氏がISに拘束されました。その直接の原因になったのは安倍首相の中東における不用意な言動でしたが、彼にはそんな自覚はなくて拘束が明らかになってからも、ただ「テロには屈しない(=身代金は払わない)」のワンパターンを繰り返すだけでした。
そして最悪の悲劇を迎えました。
「テロには屈しない」がアメリカをはじめとする西側国家の建前であるのは事実ですが、実際にはヌスラ戦線との間では14年8月に米人ジャーナリストが釈放され、15年1月には2人のイタリア人女性が釈放されるなど、詳細は明らかにされないものの身代金が支払われたと考えられるケースが見られます。それはISとの間でも同様で、人質が殺害されるのは例外に属します。
それを安倍氏のように字義通りに解釈して、むざむざ人質たちを死に至らせるというのは許しがたい愚かさであるだけでなく、海外で不当に拘束された国民を救出するという国の第一義的な義務を放棄するものです。
今回も、安倍政権はテロリストとは交渉しないという原則を貫くつもりで、「だからこそ安全保障が必要だ」、「改憲が必要だ」という論議にすりかえるといわれています。
そんな冷血は絶対に許されません。
その一方で、今回は選挙を控えているので救出するのではないかという観測もあるようです。自分の利益を最優先にするというのはまことに見下げ果てた魂胆ですが、それでもいいのでとにかく救出すべきです。国民は金銭の多寡などは問題にしていません。
その一方で、今回は選挙を控えているので救出するのではないかという観測もあるようです。自分の利益を最優先にするというのはまことに見下げ果てた魂胆ですが、それでもいいのでとにかく救出すべきです。国民は金銭の多寡などは問題にしていません。
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政府は安田純平のシリア拘束を昨年7月に知りながら隠蔽していた!
動画公開でも安倍政権は見殺しか
LITERA 2016年3月17日
昨年6月に内戦下のシリアに入国して以降、行方が分からなくなっていたフリージャーナリスト・安田純平氏のものとみられる動画が公開された。
安田氏はアルカイダ系の武装組織「ヌスラ戦線」に拘束されているとされ、動画では「私の国に何かを言わなければなりません。痛みで苦しみながら暗い部屋に座っている間、誰も反応しない。誰も気にとめていない。気づかれもしない。存在せず、誰も世話をしない」と日本政府が救出に向けて動いていないと語っていた。
もちろん、このセリフはテロ組織側に言わされている可能性が高いが、しかし、安田氏について、日本政府がまったく救出に動こうとしなかったのは事実だ。
安田氏がヌスラ戦線に拘束されているとの情報は、昨年7月、本サイトがいち早く報道していた。しかし、政府も新聞、テレビもこの情報を一切無視してしまったのだ。
いっておくが、彼らがこの情報を知らなかったわけではない。そもそも、政府は「安田氏拘束」の情報を少なくとも7月はじめの時点で確認していた。事実、安田氏の妻も今年の夏に外務省から「シリアで拘束された可能性が高い」という連絡があったことを今日の朝日新聞で認めている。
ところが、政府は救出に向けて動くどころか、拘束情報を隠蔽してきたのである。
まず、昨年7月9日の時点で、菅義偉官房長官と岸田文雄外相は会見で記者からこのことを質問されている。だが、菅官房長官は「拘束されたとの情報には接していない」と完全否定。また、岸田外相も「少なくとも現在、邦人が拘束されたとの情報は入っていません」「(安田氏がシリアに入ってることも)確認していない」とシラをきった。
その後、7月17日にはCNNで安田氏の拘束が報道されたが、それでも政府は認めなかった。7月31日の会見でも、菅官房長官は「政府としては、ありとあらゆる情報網を関係方面に駆使しながら情報収集に努めている」としつつも、「拘束されたことについては、政府として確認していない」と、言い切った。
しかも、この情報隠ぺいは、当時、進んでいた安保法制への影響を考えてのことだった。官邸担当記者はこのように語っていた。
「議論が白熱していたあの段階で下手に情報が出れば、強行採決がふっとびかねない。だから、隠せるだけ隠したということでしょう」(官邸担当記者)
安倍政権は、人命よりも、アメリカへの忠誠、選挙、政治日程を優先させ、この件を見て見ぬ振りをしていたのだ。しかも、唖然としたのは、政府が否定した途端、新聞、テレビも一切、この事実を報道しなかったということだ。
その後も対応はかわらず、安倍政権は一切動こうとしなかった。そして、とうとう今回の動画公開にいたってしまったのだ。
岸田文雄外務大臣は「映像は承知しており、その映像の分析を行っているところだ。政府にとって日本人の安全確保は重大な責務であり、情報網を駆使して対応している」と話しているが、本当にまともに対応する気があるのだろうか。
湯川遥菜氏、後藤健二氏の時にも政府は何の交渉もしなかったうえ、実は救出できるチャンスがあったのにも関わらず、その機会すらことごとく潰していた事実がその後の検証で明るみになっている。
「今回も、安倍政権は本気で救出に動く気はまったくありません。テロリストとは交渉しないという原則論を貫くつもりです。そのまま放置して、状況が悪くなっても構わないとも考えているはず。それこそ安保法制の時と同じく『だからこそ安全保障が必要だ』『改憲が必要だ』という論議にすりかえていくでしょう」(官邸詰担当記者)
改めて指摘しておくが、自国民の生命保護は国家の義務であるうえ、戦場ジャーナリストは、日本の大マスコミの社員たちが行かない「危険地帯」に出かけ、情報がまったく届いてこない戦場の現実を伝える貴重な役割を担っている。しかも、安田氏は後藤さんの処刑に至る経緯を解明しようとシリア入りしていたともいわれているのだ。
安田氏を見殺しにしようという安倍首相の態度は、国民の生命を守るという義務を放棄しているだけでなく、国民の「知る権利」への冒涜である。そのことを忘れてはならない。(編集部)
安田さん救出9カ月成果なし 不安が残る外務省の“交渉力”
日刊ゲンダイ 2016年3月18日
昨年6月から行方不明のフリージャーナリストの安田純平氏(42)とみられる映像がネット上で公開され、混乱が広がっている。安田氏はシリアのアルカイダ系過激派組織「ヌスラ戦線」に拘束されたとみられ、かなりやつれた様子だったから心配だ。
動画では「私の国に言わなければならない」「痛みに苦しみながら暗い部屋に座っていても、誰も反応しない。誰も気にとめない」などと暗に日本政府の対応を批判する発言もあった。
「映像公開は『身代金を早く出せ』というヌスラ戦線のメッセージでしょう」と、中東情勢に詳しいジャーナリストの村上和巳氏はこう続ける。
「ヌスラ戦線はIS(イスラム国)と違い、油田など、お金を得られる支配地域を持っていないため、資金不足に陥っています。監視や食事などにお金がかかる安田さんを早く引き取ってもらいたいというのが本音で、以前から日本政府とも接触していたと思われます。ヌスラ戦線が公に身代金を要求しないのは、妥協できる額で水面下で交渉しようということの表れ。日本政府としては交渉しやすい状況だと思います」
村上氏によると、ヌスラ戦線はISとは敵対関係にあり、人質をISに引き渡したり、殺害することはないという。ただ、交渉が失敗すれば厄介なことになる恐れもあるようだ。
「安田さん拘束が公になった以上、日本政府が交渉を拒否することは考えづらいが、交渉が難航し、ヌスラ戦線から具体的な身代金の額を公に提示される事態になるとマズイ。ヌスラ戦線にもメンツがあるため、額を提示すれば後に引けなくなり、交渉が長引く可能性があります。また、ヌスラ戦線は米国の空爆対象でもあり、同盟国の日本は表立って身代金を渡しにくい立場にある。日本政府が裏で身代金を渡しても、ヌスラ戦線が公開してしまえば日本のメンツは丸つぶれです。いずれにしても日本側がヌスラ側と信頼関係を築けるかが重要です」(中東問題事情通)
岸田文雄外相は17日、「さまざまな情報網を駆使して、全力で対応に努めている」と言ったが、外務省はこの9カ月間何も成果を挙げていない。安田氏救出は外務省の交渉能力にかかっているが、不安が残る。