2016年3月14日月曜日

東京都区で 認可保育所に入れない幼児は2万人余

 「保育園落ちた 日本死ね!!!」と題されたブログをきっかけに待機児童問題がクローズアップされ、世論の攻撃を受けた政府・自民党は「待機児童問題についての緊急対策チーム」を立ち上げました。それとは別に民主と維新は合同で「保育士処遇改善法案」を取りまとめ国会に提出する運びになっています。
 
 13日、東京新聞と毎日新聞がそれぞれ都区内における、認可保育所の募集数対入園希望者数の関係について調査した結果を報じました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
36%が認可保育所「落ちた」 都内20区で2万341人 本紙調査
東京新聞 2016年3月13日
 東京二十三区を対象に本紙が実施した「保育緊急アンケート」(二十区が回答)で、四月に認可保育所に入れない子どもが二万人余りに上ることが分かった。申込者のうち入所できない子の割合は36%と、昨年より1ポイント悪化。区役所の敷地や学校の校舎を保育所に活用するなど、区は受け入れ枠の拡大に取り組むが、申込者の増加に追いつかない。(川上義則、石原真樹、小形佳奈) 
 
 調査に回答しなかった渋谷、中野、足立の三区を除く二十区の合計で、認可保育所の募集人数は三万五千五百九十六人だった。これに対し、入所申込者は五万五千九百三十七人で、入所できないのは二万三百四十一人と、昨年より二千五百六十人増加した。申込者の三人に一人が入所できない厳しい状況にある。
 
 入れない人数が多い区は(1)世田谷(2)江東(3)杉並(4)大田(5)江戸川-の順だった。また、入れない子の割合が高い区は(1)台東(2)目黒(3)杉並(4)世田谷(5)墨田-の順。入れない子の人数が昨年より減ったのは、世田谷、品川、目黒、豊島、葛飾、板橋の六区で、残る十四区は昨年より増えた。
 本紙が調査を始めた二〇一三年から四年間の推移をみると、募集人数は一三年度の一・三倍に拡大したが、申込者も一・三倍に増え、入所できない子の減少につながっていない。
 
 入れない子の割合が最高の60%だった台東は、今年四月までの一年間で、認可保育所を三カ所新設するなどして募集枠を百六十四人拡大したが、申込者の増加に追いつかなかった。上野など都市部ではビルの賃料が高く、担当者は「保育所に適した物件が見つかりづらい」と説明する。
 
 年齢別の保育所需要の差も浮き彫りとなった。五歳児は全二十区ですべての申込者が入所できたのに対し、一、二歳児は全二十区で申込者数が募集枠を上回り、入れない子が相次いだ。一、二歳児は幼稚園という別の選択肢がないため保育所の需要が高く、受け入れを拡充するには五歳児に比べてより大勢の保育士が必要となる。
 
 葛飾区の場合、全年齢の合計では募集人数より申込者が少なかったため、全員が入所できるようにみえるが、実際には一歳児で三百二十六人、二歳児で七十五人が入れず、逆にゼロ歳児と三~五歳児では定員に余裕があった。
 
 <調査の方法> 認可保育所(保育所型認定こども園含む)の4月入所募集の第1次選考状況について、23区にアンケートと聞き取りをした。国の統計では、認可外保育施設や小規模保育所に入れれば待機児童に含めないため、本紙の調査とは異なる。定員に空きがあっても、子の年齢と不一致のケースがあり、実際に入れない子の数は本紙調査より多い場合がある。回答しなかった渋谷と中野は「公表していない」、足立は「認可保育所だけで集計してない」などと説明した。
 
 
都内保育所 倍率2倍超 6区の認可園、整備追いつかず
毎日新聞 2016年3月13日
 東京都23区内で、今年4月からの認可保育所入所を希望する0〜2歳児のうち、杉並区など六つの区で入所倍率が2倍を超えることが毎日新聞の調べで分かった。「保育園落ちた」と訴えるブログを機に、保育所に子どもを入れられない親たちの不満が各地で噴出しているが、背景にある厳しい入所事情が浮き彫りになったかたちだ。ほとんどの区で前年よりも受け入れ枠を増やしているが、それを上回る勢いで入所希望者が増加しており、昨年よりも状況は厳しくなっている。【中村かさね、山田泰蔵】 
 
 23区を対象に、0〜2歳児の2015、16年度4月入所分(1次募集)の申込人数と受け入れ枠などを聞き取った。区によって集計の仕方にばらつきはあるものの、申込人数を受け入れ枠で割った入所倍率は、杉並区が2.2倍で最も高く、世田谷区2.1倍▽台東区2.0倍▽渋谷区2.0倍−−など計6区で2倍を超えた。 
 回答がなかった中野、足立両区を除く21区全体では、約5万人の申し込みに対し受け入れ枠が約2万8000人と、平均でも1.8倍に上り、ほぼ2人に1人が申し込んでも入れない状況となっている。 
 
 前年比では、2倍を超えた六つの区のうち、四つについては前年は2倍を切っていた。また前年と比較可能な18区のうち、3分の2にあたる12区で入所倍率が高くなっていた。18区だけでも受け入れ枠は約1800人増えたが、申込人数は約4000人増と2倍を上回る伸び。出産後も働き続ける女性が増えているため、対策が現状に追いついていないのが実情だ。 
 
 保育問題に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さんは「この数字や見聞きしていることからも、今年は昨年よりもさらに厳しい状況になりそうだ。保育所は増えたが申し込みも想定以上に増えた、というイタチごっこを20年も繰り返している。自治体任せではなく国が財源を確保し抜本的に変えていかないと、永遠に解決しない」と危機感を示す。 
 
 保育所に入れない待機児童の対策を巡っては、政府は17年度末までに、50万人分の保育の受け皿を増やす計画だが、最近の騒動を受けて、今月中に新たな緊急対策を取りまとめる方針を固めている。 
 
待機児童の7割 東京など都市部 
 希望しても、認可保育所など国や自治体が基準を定め、補助金を出している保育を利用できない児童は「待機児童」と呼ばれ、東京都など都市部に多い。 
 厚生労働省の調査では、昨年4月時点で0〜5歳児の全待機児童2万3167人のうち、首都圏や近畿圏、政令市などの都市部が約7割を占める。特に東京都は全体の3割を超える7814人と突出している。 
 
 待機児童を年齢別にみると、保護者が育児休業明けで職場復帰のため、新規に申し込むケースが多い0〜2歳児が全体の9割近くを占めている。 
 
 待機児童になると、保育スペースが狭かったり、職員数が少なかったりして、認可保育所より質の劣る可能性のある無認可の保育施設やサービスを探さなくてはならない。無認可の施設は補助金がなく、利用料が高額となる場合もある。 
 保育サービスが利用できず、近くに育児を手伝ってくれる祖父母などがいないケースが多い都市部では、親が仕事を辞めざるをえないことも多い。 
 
【ことば】 認可保育所 
 児童福祉法に基づく児童福祉施設。定員20人以上で、子ども1人当たりの保育面積や職員数、給食設備など、国の設置基準を満たした保育施設を指す。公費で運営され、保護者が負担する保育料は、所得に応じて設定されている。15年度に始まった「子ども・子育て支援新制度」では、自治体が基準を定め、公費で運営される、少人数単位の0〜2歳児を預かる小規模保育や家庭的保育(保育ママ)なども新たに認可施設や認可事業に含まれるようになった。