2016年3月11日金曜日

東京大空襲から71年 上野で1200人慰霊 台東区で戦争体験記録集

 9日、東京大空襲で両親を含む家族6を失ったエッセイスト海老名香葉子さん(82)主催台東区内慰霊行事が開かれ、遺族を含む1200人余りが集まりました今年で12回目になります。
 
 また東京都台東区に住む学生たちが、地元のお年寄りにインタビューし、その証言を一冊の本にまとめた。
 タイトルは「台東区戦争体験記録集 記憶をつなぎ思いを未来へ」A4判170ページです。非売品で、2千部を発行し、都内の公立図書館や区内の小中学校に配布しているということです
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
きょう東京大空襲から71年 上野で1200人慰霊
東京新聞 2016年3月10日
 「八十歳を過ぎたいまでも母が恋しい。あの戦争がなければ」。東京大空襲で両親を含む家族六人が犠牲になったエッセイスト海老名香葉子さん(82)は九日、自らが主催する台東区内の慰霊行事「時忘れじの集い」で、今年もつらい戦争の記憶を語った。 (松尾博史)
 
 十万人が犠牲になった東京大空襲から十日で七十一年になるのを前に開かれた慰霊行事は、今年で十二回目。遺族を含む千二百人余りが集まった。
 寛永寺現龍(げんりゅう)院の慰霊碑「哀(かな)しみの東京大空襲」の前で供養式が営まれたのに続き、上野公園内の母子像「時忘れじの塔」の前で始まった記念式典で海老名さんは、会場に降り注ぐ雨に触れ「(多くの参加者が集まったことに)空襲で亡くなった人たちが、涙を流して喜んでいると思う」と感謝を述べた。
 敗戦の混乱のなかで中国から引き揚げた漫画家、ちばてつやさん(77)も「最近は大人たちも戦争の悲惨さを忘れている」とあいさつ。海老名さんの次男で、戦意高揚のためにつくられた「国策落語」の再現に取り組んだ落語家の二代目林家三平さん(45)も「これからも、戦争の悲惨さやつらさを伝えていきたい」と決意を語った。
 
 式典では地元の台東初音幼稚園の園児と、根岸小学校の五年生が合唱を披露。忍岡中学校の生徒は、海老名さんが戦争体験をつづった著作の一部を朗読した。
 会場を訪れた千葉県習志野市の大学二年、野口あかりさんは「戦争のことは教科書などでしか知る機会がありませんでしたが、海老名さんのお話から、つらい経験が伝わってきました」と話した。
 
 
東京大空襲71年 台東の学生、体験者の証言まとめ
東京新聞 2016年3月10日
 首都が焼け野原となった東京大空襲から十日で七十一年。東京都台東区に住む学生たちが、地元のお年寄りにインタビューし、その証言を一冊の本にまとめた。戦争体験者の高齢化が進む中、若者たちは記憶を受け継ぎ「戦争を繰り返さないためには、一人一人が冷静に考える力を持つことが大事では」と平和への思いを新たにしている。 (松尾博史)
 
 明治学院大四年の相沢沙希(さき)さん(22)は、JR上野駅近くで生まれ育った柿沼由夫さん(84)にインタビューした。
 柿沼さんは杉並区の荻窪付近で家族と暮らし、現在の墨田区内の中学校に通っていた。大空襲の後、学校に行くと授業は休みだった。三日間ほど、隅田川に浮かんだ遺体や焼死体を戸板に乗せて、浅草近くの東本願寺に運ぶのを手伝った。
 その後、栃木県内での疎開生活を経て終戦を迎える。生徒を日常的に殴り「みんな兵隊さんになるんだよ」「先のことを考えたって駄目。二十歳になる前に死んじゃうんだから」と言っていた教員らの態度が、戦争が終わった途端に一変したのがショックだったという。
 柿沼さんの話に、相沢さんは「もし自分がその時代に生まれていたら、怖くて仕方がなく、耐えられなかっただろう」と言う。この春から小学校の教諭になる。「善悪を判断し『駄目なことは駄目』と主張できる人間でありたい」と強く思った。
 
 東京学芸大四年の山口崇浩(たかひろ)さん(22)は、大空襲で家族四人を失った鈴木勝美さん(82)に聞いた。大空襲当時、鈴木さんは宮城県内に学童疎開中だった。後日、疎開先を訪ねてきた父親から母や姉、弟、妹計四人の死を知らされる。
 山口さんが「僕たちに教訓として伝えたいことは何ですか」と尋ねると、鈴木さんは「戦争だけは絶対にしてはいけない。殺し合いで生まれるのは恨みだけ。食べ物がないことは恐ろしい」と答えた。山口さんは「(政治家や軍部だけでなく)国民全体が戦争をやる風潮になっていたために、戦争になったのではないか。戦争を繰り返さないために冷静に考える力を持つことが大事」と感じた。
 
 この空襲で、台東区内では約一万二千人が亡くなったとされ、記録集は、区教育委員会が戦後七十年の「平和祈念事業」の一環として企画した。公募に応じた区内在住の高校生や大学生、区の若手職員ら十五人が二〇一四年秋以降、地元のお年寄りら三十人余りから戦時中の生活や空襲時の体験、軍隊での生活などを聞き取った。
 
 タイトルは「台東区戦争体験記録集 記憶をつなぎ思いを未来へ」。A4判・百七十一ページ・一部カラー。区による第二次世界大戦の住民の証言記録集は初めてという。非売品で、二千部を発行し、都内の公立図書館や区内の小中学校に配布している。