発端となった民主党・山尾志桜里議員の質問への対応の拙さを自民党内からも指摘された安倍首相は、その後「待機児童問題への対策を加速させる」と国会の答弁を修正しましたが、内容を伴わない言葉だけのものでは母親たちを納得させることはできずに、11日にはついに党内に「待機児童問題についての緊急対策チーム」を立ち上げるところまで追いつめられました。
この与党を追撃する絶好のチャンスに、民主・維新の両党が取りまとめた「保育士処遇改善法案」は、保育士の人手不足を解消するために給与を月額1万円引き上げる(ための助成金を国が負担する)というものでした。
保育士の待遇が全企業の平均給与より月額9~11万円も低いために保育士のなり手がないという待機児童問題が、一体そんな”はした金・涙金”で解決できるとでも思っているのでしょうか。ブログ「世相を斬る」のあいば達也氏は「もの笑いのタネになりそうな金額」だと述べています。
そんな額ではとても保育士は集まらないので事態は解決しません。なぜ事態を解決することを差し置いて、ちっぽけな「功名心?」にはやるのでしょうか。そのうえ民・維がそんな低額を提示したことは、自民党(対策チーム)にその(半額)程度の金で済むという誤った安心感を与えたということになります。まさに敵に塩を送る行為です。
折角国民の怒りで与党を窮地に追い込んだ筈なのに、それが民主と維新の愚劣な提案によって水泡に帰そうとしています。そのことで民主と維新が国民から愛想をつかされるのは自業自得ですが、それにとどまらずに「与党はダメだ」・「ヒドイ」という国民的な認識までが崩されてしまいます。
共産党、社民党、生活・山本の党にはこれから法案の提出に向けた根回しがあるということなので、是非修正をさせて欲しいものです。
三つの記事を紹介します。
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民維の保育士処遇改善法案 - 給与増、国が負担
共同通信 2016年3月11日
民主、維新両党が待機児童問題を改善するため取りまとめた「保育士処遇改善法案」の全容が11日、判明した。保育士の人手不足が背景にあるとして給与を月額1万円引き上げ保育事業者への助成金を国が全額負担するのが柱。早ければ来週にも国会提出する方針で、他の野党にも共同提出を呼び掛ける。
子どもが保育園に入れず復職できない憤りを「保育園落ちた日本死ね」と書き込んだ匿名ブログが反響を呼んでおり、対応を急いだ。民主党の山尾志桜里氏が衆院予算委員会でブログを取り上げた際、安倍晋三首相が「本当か確かめようがない」と答弁したことから、政権の反応の鈍さをあぶり出す狙いもある。
待機児童問題、自公が相次いで対策チーム
TBS News 2016年3月11日
「保育園落ちた」と題した匿名のブログをきっかけとして、野党が待機児童問題で政府への追及を続ける中、与党の自民・公明両党が相次いで対策チームを立ち上げたと発表しました。
「今回のブログのような問題もありました。そこで党としては政調会長のもとに特命チームを緊急的につくりまして、待機児童の問題など、新年度を迎えるにあたって緊急的に対処すべきことを検討する」(自民党 稲田朋美政調会長)
自民党は11日午後、稲田政調会長が急きょ記者会見を開き、待機児童問題についての緊急対策チームを立ち上げ、今月末までに今後の課題についての提言をまとめると発表しました。ブログなどソーシャルメディアの意見を分析するチームを作ることも検討するということです。
また、公明党の井上幹事長も、この問題についてプロジェクトを発足させ、政府の政策について検証すると明らかにしました。
与党内では、「保育園落ちた日本死ね!!!」と題された匿名のブログをきっかけに、子どもを保育園に入れられない親たちが政府に抗議していることや、野党が追及を続けていることに危機感が広がっていて、夏の参議院選挙を前に問題の沈静化に躍起となっています。
既得権の楽園・ニッポン 居直り強盗、泥縄・馴合い政治の権化
世相を斬る あいば達也 2016年3月12日
「保育園落ちた日本死ね!!!」が、ネットから、政府に慌ただしい、泥縄対策発言を引きだしたようだ。まあ、介護士の報酬引き上げ同様の、アリバイ作りになるのは必至で、保育園経営者の中ぬきに遭うのは目に見えている。野党の、保育士月額1万円増も、もの笑いのタネになりそうな金額に、筆者は目を剥いた。保育士の賃金は全産業平均より月9万から11万円低いと言われている公式データがあるのに、1万円と云う賃金増を、世間では“涙金”という。如何に、民主党と云う政権が駄目なのか、この議員立法で命取りにさえなるような按配だ。
≪保育士の待遇「今春にも具体的な改善策」安倍首相 ≫(朝日新聞 2016年3月11日)
(以下省略)