2016年3月9日水曜日

国連の女子差別撤廃委員会が慰安婦問題に「断」

 国連女子差別撤廃委員会は7日対日審査の最終見解を発表し、昨年12月の日韓合意は「被害者中心の対応」が徹底されていないとして遺憾の意を表明し合意の履行に当たっては「被害者の立場を十分考慮」し、補償などに取り組むよう促しました
 
 NHKの報道ぶりによると委員会の表現は穏やかではありますが、その内容は日本に対してかなり手厳しいものとなっていて、日本の政治家など指導的な立場にある人が慰安婦問題の責任を過小評価するような発言をやめることや、慰安婦問題を教科書で適切に取り上げることなども求めていて、結果的にこれまでの安倍発言を全否定するものとなっています。 
 その点、東京新聞の報道はかなり委員会の意思が伝わる書き方になっています。
 
 委員会最終見解に対して、菅官房長官は同日の記者会見で「遺憾だ。国際社会の受け止めとはかけ離れている」とし、「最終見解は我が方のコメントが十分反映されていない」と委員会に抗議したことを明らかにしまし
 しかし日本の反論を十分に聞いた上での最終見解なのでそんなことをしても無意味です。
 
 天木直人氏のブログによれば、当初外務省は、日韓合意の中で、今後慰安婦問題について国連などで互いに非難することを控えるとしたため、多くを語らない方針を固めていたのにもかかわらず、安倍側近の衛藤晟一首相補佐官らが反発したため、杉山外務審議官をジュネーブに派遣しいわゆる強制連行はなかったなどと強調したということです
 まさに安倍氏がこれまで繰り返し述べて来たことの蒸し返しであったのですが、結果的に委員会は受け入れずに、代わりに「日本の政治家など指導的な立場にある人が慰安婦問題の責任を過小評価するような発言をやめること」という文言が新たに加わったのでした。
 
 天木氏は、「ここまでくれば、もはや馬鹿につける薬はない」と切り捨てています。
 安倍政権の「国際版 非常識編」という訳です。
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元慰安婦の意見十分考慮を 国連の委員会が勧告
NHK NEWS WEB 2016年3月8日
女性差別の撤廃を目指す国連の委員会は、慰安婦問題に関する日韓両政府の合意について、実行に移す際には、元慰安婦の意見を十分考慮することなどを日本政府に勧告しました。
 
女性差別撤廃条約の締約国の取り組みを検証している国連の委員会は、今回、日本を対象に審査を続けてきましたが、日本政府が先月16日にスイスで行った慰安婦問題に関する説明などをもとに、7日の見解を公表しました。
それによりますと、慰安婦問題を巡って日韓両政府が去年12月、最終的かつ不可逆的に問題を解決することで合意したことについて、「被害者の立場に立った取り組みが十分に盛り込まれていない」と指摘したうえで、日本政府に対し、合意内容を実行に移す際には、元慰安婦の意見を十分考慮するよう勧告しています。
勧告ではさらに、政治家など指導的な立場にある人が慰安婦問題の責任を過小評価するような発言をやめることや、慰安婦問題を教科書で適切に取り上げることなども求めています。
 
審査にあたった国連の委員会のイスマット・ジャハン委員は7日に記者会見し、「被害者の視点で合意が速やかに実行に移されるよう求めたい。両国から誠実な対応があることを期待する」と述べ、合意内容の実行に向けた両政府の努力に期待を示しました。 
 
 
元慰安婦へ配慮不十分 国連委が日本に勧告
東京新聞 2016年3月8日 
 【ジュネーブ=共同】国連の女性差別撤廃委員会は七日、ジュネーブで二月十六日に開かれた対日審査会合に関する「最終見解」を公表した。旧日本軍の従軍慰安婦問題について、日本政府の取り組みはなお不十分と指摘。昨年末の日韓合意を実行に移す際には元慰安婦の意見に十分配慮するよう日本政府に勧告した。
 
 委員会は二〇〇九年の前回会合で、元慰安婦らへの賠償や加害者の訴追などを含む慰安婦問題の「持続的な解決」を探る努力をするよう日本政府に勧告。七日の最終見解は日本がこうした過去の勧告を依然として実行していないとして「遺憾の意」を示した
 昨年末の日韓合意については「元慰安婦らを中心としたアプローチを完全には取っていない」と指摘、元慰安婦らの「真実、正義、償いを求める権利」を保証し、彼女らの立場に寄り添った解決を目指すよう求めた。
 また元慰安婦らを傷つけることになるとして、指導的立場にある人物や公人が慰安婦問題の責任を軽くしようとする発言をやめるよう要求。学校教科書で慰安婦問題を適切に取り上げ、子どもたちに歴史的事実を客観的に示すことも求めた。
 
 日韓両政府は昨年末、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」で合意した。
 二月十六日の会合では、日本政府は「政府が発見した資料には、軍や官憲による強制連行を確認するものはなかった」と説明。韓国外務省は翌十七日「慰安婦動員の強制性は、国際社会が既に判定を下した歴史的事実だ」と反論した。最終見解には「強制性」に関する言及はなかった。勧告に法的拘束力はない。
 
 
馬鹿につける薬はない慰安婦問題に関する安倍外交
天木直人 2016年3月8日
 きょう3月8日のメディアが一斉に報じた。
 国連女子差別撤廃委員会は7日、「慰安婦問題は未解決の多くの課題が残され、遺憾である」とする報告書を発表した、と。
 これは昨年12月28日に電撃的に発表された慰安婦問題に関する日韓合意を国連が否定したということだ。
 無理もない。あの合意はどう考えても不自然、不透明な合意だ。
 しかし、それだけならまだごまかしようがあった。
 国連女子差別撤廃委員会が否定的な報告を出した最大の原因は、その委員会に臨んだ稚拙な安倍外交にあったのだ。
 
 きょう3月8日の朝日新聞が書いている。
 外務省は、日韓合意の中で、今後慰安婦問題について国連などで互いに非難することを控えるとしたため、当初は多くを語らない方針を固めていたという。
 ところが、安倍側近の衛藤晟一首相補佐官らが「外務省が事実を明らかにしないことが問題をこじらせてきた」と反発したため、外務省は杉山外務審議官をジュネーブに派遣し、いわゆる強制連行はなかった、などといった説明を強調する事になった。
 
 これがパンドラの箱を開けてしまったというのだ。愚かだ。
 「日韓両政府は不可逆合意をした」と繰り返し、余計な事を話さなかったら、この様な事にはならなかっただろう。
 驚くべきことに、きょうの読売新聞は次のように書いている。
 日本政府高官は「おかしいところは当然言っていく」と述べ、報告への反論も辞さない考えを示した、と。
 
 ここまでくれば、もはや馬鹿につける薬はない。
 国際社会をなめているのか、勝手にやってろ、と突き放すしかない(了)