2016年3月20日日曜日

国谷キャスターが『クロ―ズアップ現代』の最終回でSEALDs奥田愛基を取り上げる

 月~金の19:30からの時間帯を彩っていた国谷裕子キャスターによるNHKの長命番組『クロ―ズアッが、17日で終了しました。
 いうまでもなく、一昨年の集団的自衛権行使容認の際、番組に出演した菅官房長官に国谷キャスターが、「他国の戦争に巻きこまれるのでは」「憲法を解釈で変えていいのか」と、報道陣であればごく当たり前の質問を投げかけたことが、同氏や秘書官の逆鱗に触れたためです。
 それ以来、国谷キャスターは官邸からずっと目をつけられており、NHKはやらせ問題を“隠れ蓑”にして降板させたのでした。
 
 この3月には、他にも膳場キャスターと岸井氏が25日に、古舘キャスターは31日をもってそれぞれの番組を去ります。
 報道に執拗に介入しそれを歪めようとする官邸の害悪は計り知れません。
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安倍政権の圧力で降板、NHK国谷裕子が『クロ現』最終回で
  SEALDs奥田愛基を取り上げ“最後の一刺し”
LITERA 2016年3月18日
「長い間続けることができたのは、協力いただいた多くのゲストの方々、そして何より番組を見てくださった視聴者のおかげだと感謝しています。本当にありがとうございました」
 昨夜、最後の出演となった『クローズアップ現代』(NHK)で国谷裕子キャスターはそう挨拶すると、深々と頭を下げた。『クロ現』は4月4日から『クローズアップ現代+』と改称され、時間帯も22時台へと移る。
 
 ご存じの通り『クロ現』は、昨年3月に「週刊文春」(文藝春秋)が“やらせ問題”を報じ、BPOも「重大な放送倫理違反があった」とした。今回の『クロ現』の改編および国谷キャスターの降板も、“やらせ問題からの再出発”といったように印象付けられているが、もちろんこれは表面上の話でしかない。
 本サイトでは繰り返しお伝えしているように、国谷キャスターの降板は、『NEWS23』(TBS)の膳場貴子キャスターと岸井成格・番組アンカー、そして『報道ステーション』(テレビ朝日)の古舘伊知郎キャスターの降板と同様、官邸からの圧力に屈した結果だ。
 
 とくに国谷キャスターは、一昨年の集団的自衛権行使容認の際、番組に出演した菅義偉官房長官に「他国の戦争に巻きこまれるのでは」「憲法を解釈で変えていいのか」と質問を投げかけたが、これに秘書官が激怒。番組終了後、官邸はNHK上層部に対して「君たちは現場のコントロールもできないのか」と猛抗議したという。ようするに、国谷キャスターは官邸からずっと目をつけられており、NHKはやらせ問題を逆に“隠れ蓑”にして降板させたのである。
 
 しかも、そうした問題が起こって以降、『クロ現』の内容は政権に気を遣ったものに変化。昨年可決された安保法制についても7月に一度だけ取り上げ、国谷キャスターは「合憲か違憲かというのは非常に根本的で本質的な問題では」「なぜ成立を急ぐのか」などと問題点を挙げていったが、そのたびにNHK政治部記者が「政府は国民の理解を得るためにも憲法論だけでなく安全保障政策の観点からの議論を深めたいという考えを持っている」といったように政権の主張を代弁しつづけた。
 
 また、今年2月には、まさにいま話題の保育所などで非正規化が進んでいる実態を放送したが、当初、番組タイトルとして発表されていたのは「拡大する“官製ワーキングプア”」だったのに、当日の放送では「広がる“労働崩壊”~公共サービスの担い手に何が~」というタイトルに変更されていた。これもまた、政権批判だと受け取られないようにと忖度した結果だったのではないかと見られている。
 このように、蛇に睨まれた蛙状態だった『クロ現』だが、昨夜の放送はある意味、“最後の置き土産”といった内容だった。
 
 昨夜のテーマは「未来への風~“痛み”を越える若者たち~」。VTRの冒頭からSEALDsメンバーの奥田愛基氏が登場し、昨夏のデモの様子を放送。「当初10人ほどではじめたデモは社会現象になり、若い世代の力を印象付けました」「これまで社会に無関心と思われていた若者たちが声を上げ、大きなうねりとなったのです」とナレーションで説明を行っていた。
 いたって普通のSEALDsの紹介の仕方だし、奥田氏の話も安保法などには言及せず、現代の若者のあいだに流れる空気や、「“諦めること”を諦める」という奥田氏の意志を述べるに留まっていたが、それでもNHKではこれでさえ異例のこと。というのも、NHKでSEALDsが紹介されたのはこれがはじめてではないが、つねに安保法制賛成派の意見とともに“両論併記”されてきたからだ。
 
 実際、奥田氏は昨日の放送前に、〈NHKの人からはずっと取材はされてたのですが、一度も企画通らずで、最後の最後で放送されることになりました。〉とツイートしている。たしかにVTR中にはTシャツ姿のSEALDsメンバーが登場しており、長く取材をつづけていたことがわかる。つまり、制作側としては実質上の最終回だったからこそ放送できた……ということなのだろう。
 若者が中心となって立ち上がり、多くの市民が後につづく一大ムーブメントを生み出した。これは紛れもない事実だが、そんなことさえ最終回でなければ放送できなかった。──情けない話だが、これがいまのメディアが置かれた状況なのだ。
 
 NHKの籾井会長は「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」と、公共放送のトップにあるまじき発言を行ったことがあるが、いままさにNHK全体が、そして民放も、その言葉通りになりつつある。事実、高市早苗総務相の「電波停止」発言に対して抗議声明を出したジャーナリストたちのひとりであるTBSの金平茂紀氏がTBS執行役員から退任すると発表されたが、これもまた粛正人事だという声もあがっている。
 
 国谷キャスターにつづいて、膳場キャスターと岸井氏が25日に、古舘キャスターは31日をもってそれぞれの番組を去る。国谷キャスターは多くを語らなかったが、膳場・古舘キャスターにはぜひ最後に、メディアの危機的状況について言及してほしいものだ。(水井多賀子)

 
政治と放送メディアの関係考えるシンポジウム
NHK NEWS WEB 2016年3月19日
政治と放送メディアの関係について考えるシンポジウムが東京都内で開かれ、電波法に基づき電波の停止を命じる可能性に関する、高市総務大臣の先の国会答弁を巡っても意見が交わされました。
 
このシンポジウムは、メディアについて広く研究している団体が開いたもので、東京・新宿区の会場にはおよそ40人が集まりました。
この中で、電波法に基づき電波の停止を命じる可能性に関する、高市総務大臣の先の国会答弁を巡っても意見が交わされ、テレビ局の元ディレクターで法政大学教授の水島宏明さんは、「報道現場が萎縮し、何もしないほうがよいという空気が生まれている」と懸念を示しました。
また、ジャーナリズム論が専門で専修大学教授の山田健太さんは、「政府が放送番組の内容に口出しをしないというのは世界共通のルールだ」などと指摘しました。
主催した団体の代表で立教大学准教授の砂川浩慶さんは、「伝えるべきことが伝えられなくなって困るのは国民であり、政府もメディアも改めてそのことを自覚してほしい」と話していました。