12日の夕刻、NHKが若手弁護士グループが開いた緊急事態条項の憲法への導入反対集会を報じました。
しかしその内容は「日本にはすでに精緻な災害対策の法律があり、緊急事態条項は必要がない」というものに限定されていました。
その点は確かにその通りなのですが、民主勢力が大問題としているのは災害対応を口実にして、緊急事態条項の名のもとに、その期間中は内閣だけで法律(に相当するもの)を制定することができ、基本的人権を一部制約することができ、任期に基づいて国会を解散することも中止できるという、『戒厳令』に相当する条項を憲法に盛り込もうとしている点です。
弁護士が主催した集会の中でこの問題が取り上げられないことはあり得ないのですが、NHKの報道ではその部分が除外されています。インターネット上で轟轟たる批判が巻き起こっている肝心の個所に全く触れない報道は、政府にとって痛くも痒くもありません。むしろ「より強力な災害対策を構築するのだから何が悪いのか」と、本来の主旨を隠し、理解を捻じ曲げる方向に利用されてしまいます。
NHKが緊急事態条項反対集会を報じたのは初めてではないかと思いますが、これでは報道の役割を果たしていません。NHKが政府の広報機関に過ぎないと批判される所以です。
公共放送の使命から大いに逸脱した政府追随の姿勢を改めて本来の役割に立ち返るべきです。
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憲法に緊急事態条項 反対の人たちが集会
NHK NEWS WEB 2016年3月12日
大規模災害などに対応するとして、憲法に加えるかどうか議論が続いている、緊急事態の条項について、反対の立場の人たちが12日に集会を開き、「災害が多い日本にはすでに精緻な法律があり、条項は必要がない」などと訴えました。
集会は、各地の若手弁護士で作るグループが都内で開きました。
テーマとなったのは、大規模災害などに対応するとして、憲法に加えるかどうかで議論が続いている、緊急事態の条項です。
この中で、東日本大震災の直後、岩手県宮古市で被災者の支援活動に携わった、小口幸人弁護士は、「緊急事態条項があれば、災害関連死などの悲劇を食い止められたという指摘もあるが、そうではない。災害が多い日本にはすでに精緻な法律があり、震災の教訓を生かして改正もされている」と指摘しました。
また、最高裁判所の元判事の濱田邦夫弁護士も出席し、「憲法や法律を変えないと対処できないという事実がないのに、改憲のためにこれを利用するのは、それこそ日本社会にとっての緊急事態だ」と述べました。
集会に参加した50代の女性は「憲法改正については国民が一つ一つ中身を知るべきで、そのうえで議論をすべきだと思いました」と話していました。