20~22日の3日間、オバマ大統領は昨年7月に国交を回復したキューバを訪問しました。
現役の米大統領がキューバを訪れるのは約90年ぶりのことで、この訪問と前後して米航空会社のハバナ乗り入れや、ホテルの進出が進んでおり、両国の関係はさらに進むだろうと、西側の報道機関は手放しで称賛しています。
しかし60年来のキューバの経済封鎖はいまも続いているし、国交断絶中もキューバからの永久租借地グアンタモの米軍基地はそのまま維持されています。911のテロ事件以降に強引に設置された悪名高い「テロ容疑者収容所」は、国連の要請にもかかわらず決して廃止しようとしません。
そもそも両国が国交断絶に至ったのはカストロがキューバ革命を成功させて、アメリカの傀儡政権が亡くなったためで、1961年にはカストロ政権を転覆しようとして、アメリカは亡命キューバ人部隊を率いてビッグス湾に侵攻しました。しかしたった3日間でキューバ軍に敗れて1200人もが捕虜として拘束されました。キューバ革命後はアメリカは当然のように、小さな島の1100万人の国民に対して厳しい経済封鎖・禁輸政策を行いました。いわゆる自由主義諸国はそれに同調させられました。
キューバは長期にわたる経済封鎖によって大いに苦しめられましたが、そんな中でも教育の無料化、医療の無料化、食料の無料化を達成し、世界の奇跡と注目されました。教育の無料化は学童・学生だけでなく成人にも適用されているということです。
アメリカは経済封鎖を解く条件として、相変わらずキューバ国内における民主主義の徹底をあげているようです。しかし世界中に戦火をまき散らし、グアンタモの人権無視のテロ容疑者収容所を維持し、学生は奨学金を返すためには卒業後軍隊に入隊するしかなく、保険を掛けることができない貧乏人は必要な医療も得られなくなっているという米国に、偉そうに民主主義を標榜する資格があるのでしょうか。
”マスコミにのらない海外記事”が「キューバのオバマ ・・・ 歴史の捏造」とする辛口の評論を載せました。
同じく「世相を斬る あいば達也」氏も、「21世紀政治家の大根役者 オバマも安倍もアリバイ工作(1)」として、痛烈にオバマ氏(と安倍氏)を皮肉る評論を載せました。
あいば達也氏の論文では、オバマ氏の評論に続いて、安倍氏の批判に話が移っているので、ここではオバマ氏に関する部分だけを紹介します。
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キューバのオバマ ・・・ 歴史の捏造
マスコミにのらない海外記事 2016年3月24日
Finian CUNNINGHAM 2016年3月23日
(Strategic Culture Foundation)
三日間のキューバ公式訪問は“二国が関係を構築する歴史的好機だ”とオバマ大統領は述べた。
家族とともにエア・フォース・ワンに搭乗して到着したオバマはこう宣言した。“キューバ国民と直接会って、話を聞くのを楽しみにしている”。
何という傲慢。もしキューバのラウル・カストロ大統領が、支配者を無視して、アメリカ国民に似たような見下した呼びかけをした場合、ワシントンでの騒動は想像がつく。
ニューヨーク・タイムズの見出しは“オバマは、キューバ国民に耳を傾けると誓って、キューバに上陸”だ。
全て重要で和解的に響くが、悲しいことに、そうではないのだ。アメリカ・マスコミの誇大宣伝は、キューバに対するワシントンの見方が、一方的で、グロテスクなまでに歪曲されているという事実と矛盾している。
ワシントンが、貧窮化した人口1100万人の島国に対し、残酷な禁輸を課し続けているのが事実だ。多くの人々が思い出すことさえできない理由とされるものにもかかわらず、これはまさに経済戦争に他ならない。本当の理由は単にこういうことであるから、禁輸の公式な正当化は、当然の如く忘れられがちになる。ワシントンの裏庭と見なしている国で、あらゆる類の政治反対派を粉砕する、勝てば官軍だ。
アメリカはグアンタナモ湾の軍事基地-拷問センターというキューバ領占領も続ける。
両方の点での、キューバ主権に対するこうした基本的な侵害は、横柄なワシントンによれば、議題にならない。
それなのにキューバは、民主的権利と言論の自由を妨げているというアメリカの主張に譲歩することを求められている。いずれにせよこうしたキューバの違反は、諸外国への容赦ない転覆から本格的な侵略戦争に至るまで、ワシントンが行っている世界的犯罪の規模と比べれば僅かなものだ。
この現実の不一致が、問題の核心を捕らえている。勝手に自分に資格を付与し、後悔の片鱗もなしに、より弱い国々を踏みにじるアメリカ支配層の傲慢さ。
アメリカ権力者の傲慢さが横行する余り、オバマ・キューバ訪問が、キューバの歴史と、国際関係における彼らの重要な役割を、アメリカが本気で再評価する機会ではなく、ワシントンが変化と希望をキューバにもたらすという馬鹿げた言辞に変わっている。
オバマ訪問に関するこびへつらうマスコミ報道は、90年ほど昔、現役アメリカ大統領がカリブの島国を訪問して以来、初めてのことだと語る。カルビン・クーリッジが、アメリカ戦艦に乗って上陸したのは、1928年のことだった。この些細な情報は見過ごされがちだが、これは、邪悪な背景をほのめかしている。
アメリカ-キューバ関係は実際に歴史的重要性に満ちている。1898年、米西戦争後に、アメリカがキューバを手にいれて、西半球におけるヤンキー帝国主義が出現し、そのもとで中南米諸国はしばしば分割され、ウオール街資本主義に隷属することとなる。独裁者と暗殺部隊が溢れ、何百万人もの人々が恐ろしい暴力と略奪にさらされた。
1959年、フィデル・カストロ、チェ・ゲバラと、フィデルの弟ラウルが、キューバ革命を率いた際 彼らはキューバをアメリカが支援する独裁者から解放するのに成功した。アメリカが支援する実に多くの独裁者政権同様、キューバは、貧困と大衆への残虐さの代名詞だった。
キューバ革命はこの運命に逆らい、社会発展のモデル、飢餓と病気を廃絶し、無料教育と無料医療をしっかり守る国となった。現在、50年以上の悪質な経済封鎖にもかかわらず、キューバ人の平均余命は、大半のアメリカ国民より長い。
島国が1961年にピッグス湾侵略で、アメリカによって攻撃された後初めて、社会主義キューバはソ連を奉じるようになった。この侵略未遂は、中央情報局(CIA)にとってきまり悪い失態だったが、それでも南の隣国に対するアメリカによる戦争行為だった。
以後、何十年にもわたり、何十回ものフィデル・カストロ大統領暗殺未遂、テロ行為や破壊活動、1976年のキューバ民間航空機爆破、農作物や家畜の大規模汚染などを含むアメリカによるキューバに対する無数の戦争行為が行われることとなった。
マスコミが都合良く隠しているもう一つの歴史的つながりは、現代アメリカ“陰の政府”台頭の上で、キューバが極めて重要なことだ。キューバ革命を粉砕するという強迫観念から、軍産複合体、ウオール街の銀行と大企業の権力が支配する本当の陰のアメリカ政府が生まれたのだ。
アレン・ダレス長官指揮下のCIAも、アメリカ支配集団も、ジョン・F・ケネディ大統領が、ピッグス湾の大失敗を救済するための大規模軍事侵略部隊の派兵を拒否したことを決して許さなかった。それ以後の、JFKによる、カストロや、当時の他の第三世界革命政府との関係改善政策は、CIAや銀行家や実業家によって、アメリカ資本主義への裏切りと見なされた。1963年11月、ダラスで、CIA狙撃者が彼の頭を吹き飛ばして、ケネディは命を失うことになった。
過去50年間、アメリカに民主主義が存在していないことは論証可能だ。大統領は傀儡として次々入れ代わるが、選挙で選ばれていない、責任をとらない陰の政府が本当の権力を行使している。アメリカの社会条件が、年々悪化し続け、貧困と不平等は天井知らずの歴史的水準に達しているのも不思議ではない。1963年のCIAクーデター(=ケネディ暗殺)以来、アメリカ民主主義は、国民の利益に反する大企業権力の行使を隠すためのうわべだけの茶番なのだから。
アメリカ民主主義消滅の隠された歴史で、キューバは中心的役割を果たしている。だが今週のオバマの“歴史的”キューバ訪問に関する主流マスコミ報道を読んでも決してそれを知ることはできない。
対キューバ・アメリカ禁輸の停止とグアンタナモ湾返還を拒否していることが、ワシントンが悔悟することのない犯罪者政権のままであることの主要な指標だ。
記事原文のurl:
21世紀政治家の大根役者 オバマも安倍もアリバイ工作(1)
世相を斬る あいば達也 2016年3月24日
先ず、今夜は、大所高所の水準の話からしよう。まあ、大所高所と言っても、限りなく地平線に近い高さからの話だ(笑)。ノーベル平和賞を嘘八百で入手したアメリカ合衆国大統領バラク・オバマの話だ。イラン核問題と、同じ思考経路から起きたことのようだ。
三日間のキューバ訪問で、「二国が関係を構築する歴史的好機だ」と自画自賛している。日欧米のホワイトハウスべったりのメディアの論調も「歴史的快挙!」とべた褒めである。キューバ反政府団体の連中と歓談し、「オバマはキューバ国民に耳を傾ける」などと、ラウル・カストロ議長の面子を完全に潰し、やりたい放題を実行して顰蹙を買った。前議長カストロがオバマなんかと会いたくはない、と会談を拒否したが、ラウル・カストロ大統領も裏切られたと、ようやく気づいたようだ。
≪ 米国のオバマ大統領は、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長との共同記者会見の後、議長の肩を叩こうとしたが、議長はそれを許さなかった。
その代わりラウル・カストロ議長は、オバマ大統領の手を握って、それを振るしぐさに変えた。 オバマ大統領は、米国の国家元首としてほぼ90年ぶりに、公式訪問のためキューバを訪問した。米大統領の言葉によれば「この訪問は、両国間の冷戦終了のシンボルだ」。 ≫(スプートニク日本)
この部分の動画を見たが、ラウル・カストロ議長に笑顔はなく、終始硬い表情だった。前議長カストロから、「だから言ったろう、オバマってのは、調子の良い約束を口にする詐欺師だと」。
今回のオバマのキューバ訪問を国交正常化と勘違いしている向きも多いが、人的・経済的交流を徐々に拡大していきましょう、と云うお題目が並んでいるだけで、ラウル・カストロ議長の功績になる具体的利益はゼロだった。
「米大統領、88年ぶりにキューバ訪問」の見出しづくりの為に、ラウルはピエロ役を振られただけのことと云うことだ。大統領選の絡みとか、ロシア、中国への牽制とか、様々な要因があるだろうが、一番は、オバマの実績づくりに花を添えようとした企みに過ぎない。
不確定な情報だが、オバマは、伊勢志摩サミットで訪日の際に、広島訪問も検討しているそうである。白々しいにも程があるが、トランプ候補が共和党大統領候補確定となったら、広島訪問もありそうだが、民主党クリントンが、何をしなくても優勢だと思えば、訪問はあり得ない。そう云う意味では、日本の人々は、精々国内政治、否、政治家醜聞批判を愉しんでいるようだが、それよりも百倍重要なトランプ候補の存在だ。その辺のことを追いかけてみよう。
(後 略)