2020年2月17日月曜日

新型肺炎 抜き差しならなくなってきた五輪と景気の行方

 新型肺炎に対する安倍政権の無作為や隠蔽が結局いまの収拾のつかない事態を招来しました。

 200211月に中国で発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)は翌年7月終息宣言が出ましが、今回の新型肺炎の終息時期は全く見通しがついていません。
 日本での新型肺炎の蔓延が長引けば、当然訪日客は激減するのでインバウンド収入どころではありません。元々、日韓対立の小さくない影響を受けていた上にこの事態が重なれば、国内の観光産業は壊滅的な状況に陥ります
 一方、安倍政権の消費者無視の政策で、既にスーパー百貨店売上4年(前者)~2年(後者)連続で前年割れとなっています。消費税増税後の家計の消費支出は3カ月連続で前年同月比マイナスで、昨年1012月期のGDPは前期比年率換算で4%程度のマイナスになると見られています。

 新型肺炎の発生地・中国湖北省武漢市は素材、自動車、ハイテクと幅広い産業が集まっている工業地帯で、18度、中国から輸入された自動車部品輸入部品の約3割を占め総額は約3470億円に達しています。このサプライチェーンが止まれば日本の自動車産業は壊滅的な打撃を受けることになりますが、肝心の現地工場の稼働時期はまだ見通せていません。

「今後感染拡大し、4月の習近平国家主席の訪日が中止となるような事態になれば、IOCも五輪延期や中止を呼び掛けるでしょう。そうなれば景気浮揚の核がなくなり、真っ先に株価の急落が起きます。普通、政府はそうした事態を避けるため、金利や財政出動などのあらゆる対策を講じるのですが、今の日本はアベノミクスによって、もはや打つ手が残されていないのです(要旨)」(経済評論家斎藤満氏)

 日刊ゲンダイは「泥沼に沈む日本経済を黙って見るしかない最悪の展開になるかもしれない」と述べています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新型肺炎 抜き差しならなくなってきた五輪と景気の行方
日刊ゲンダイ 2020/02/15
 これは国内「パンデミック(感染爆発)」の始まりなのか。厚労省は13日、新型コロナウイルスに感染した神奈川県に住む80代の日本人女性が死亡したと発表。感染者の死亡が確認されたのは国内では初めてで、東京、愛知、和歌山、北海道などでも感染が確認された。
 死亡した女性は同じ日に感染が判明した東京都内のタクシー運転手の70代男性の親族で、中国への渡航歴はなく、持病があったとの情報もない。1月22日に倦怠感を覚え、28日に医療機関を受診し、その後症状が悪化したという。
 和歌山県の患者は70代男性で、1日に風邪の症状を訴え、近所の医療機関を受診。6日に39度の発熱があったため、男性外科医の感染が判明した済生会有田病院(湯浅町)に入院。一昨日、別の病院に転院して検査したところ陽性反応が出た。
 厚労省は死亡した女性らの感染経路について本格的な調査を開始するとともに、和歌山県にも国立感染症研究所の職員らを派遣して感染ルートの特定を急ぐ方針だ。

<すでに国内にウイルスが入り込み、街の中で散発的な流行が起きていてもおかしくな い> 
<症例の増加に伴って、今後、重症例が報告されてくることを覚悟しておかなければならない>
 今月初め、日本感染症学会は「国内感染」に備えて、こう警鐘を鳴らしていたが、まさにピタリ的中したワケだ。

終息時期はまったく見通しがつかない
 2002年11月に中国広東省を発生源として流行が始まったSARS(重症急性呼吸器症候群)は翌03年から感染地域が拡大し、WHO(世界保健機関)の終息宣言が出たのは同年7月。今の段階で、今回の新型肺炎の終息時期は全く見通しがつかないが、事態が長引くほど影響を受けるのが経済だ。梶山弘志経産相はきのうの会見で、「風評も含めて観光地で大変な状況になっている」と言っていたが、すでに国内のホテルや旅館、旅行などの観光産業は、インバウンド(訪日外国人)の激減で壊滅的な状況になりつつある。
 19年の訪日外国人客数は約3200万人。消費総額は4・8兆円で、そのうち中国人観光客の消費額は約1・8兆円を占めた。仮に中国人観光客が今後3カ月間、全く日本を訪れないと想定した場合、GDP(国内総生産)の約0・1%の需要が失われる計算になるというから衝撃だ。
 そうでなくても、昨年10月の消費増税10%の影響で日本経済はボロボロ。日本チェーンストア協会が発表した19年のスーパー総販売額は4年連続で前年割れとなり、日本百貨店協会が発表した同年の全国百貨店売上高も前年比1・4%減で、2年連続で前年を下回った。増税後の家計の消費支出は3カ月連続で前年同月比マイナスの上、内閣府の景気動向指数も5カ月連続で「悪化」。週明け17日に1次速報が公表される昨年10~12月期のGDPについても、民間シンクタンクの予測通りであれば、消費増税の影響から、前期比年率換算で4%程度のマイナス成長となる見込みだ。
 そこに追い打ちをかけたのが今回の新型肺炎なのだ。
 筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)はこう言う。
「国内の散発的な感染拡大を受け、国民の多くは自己防衛のため、不要不急な外出を避けるでしょう。当然、消費活動にも影響が出ることになる。消費増税で落ち込んだ景気をさらに冷やすのは間違いないでしょう。政府は対策などと言っていますが、焼け石に水です」

泥沼に沈む日本経済を黙って見るしかない最悪の展開になる恐れ
 ダメージは国内の観光産業にとどまらない。新型肺炎の発生源となった湖北省武漢市は中国内陸部の交通の要衝。素材、自動車、ハイテクと幅広い産業が集まる。中国国内に生産拠点を置く日本メーカーにとって、武漢などの封鎖が長引いてサプライチェーン(部品供給網)が寸断された状態が続けば、現地工場の稼働時期すら見通せない
 実際、ホンダは武漢市にある四輪車工場の生産再開時期を17日以降から24日以降に延期することを公表したほか、トヨタ自動車も稼働停止中の中国4工場の再開を17日以降に再延期した。販売車数の約3割を中国市場が占める日産も、工場稼働見通しが立たないことなどを理由に、2020年3月期(今期)の業績予想を下方修正。日本貿易振興機構によると、18年に中国から日本に輸入された自動車部品の総額は約3470億円で、日本への輸入部品の約3割を占めるから、長引くほど業績悪化は避けられないだろう。
 中国国内でピアノを販売するヤマハも20年3月期の連結業績予想を当初の増収増益予想から下方修正。新型肺炎の影響による減収額を20億円と見積もったほか、中国国内でのピアノ販売が前年同期比4・0%増(19年4~12月期)と好調だった河合楽器も今後の販売について厳しい見方を示しているという。
 経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
中国はサプライチェーンの核であり、他国に移すということができない。感染が封印されないまま、工場を再開させて感染が拡大すれば、さらに終息時期は後ろにずれ込むでしょう。日本のGDPも10~12月期に続き、今年1~3月期もマイナス成長となる可能性が高いとみています」

海外は日本以上に敏感になっている
 新型肺炎の動向に世界経済も注視している。米紙NYタイムズは中国のGDPが14兆ドル(約1530兆円)あり、世界の貿易に占める割合が12・8%という統計数値を示した上で、新型肺炎が03年のSARSと比べて「より大きな潜在的脅威」と指摘。欧米のシンクタンクや大手金融機関もそろって20年の世界経済の実質成長率予測を引き下げた。感染拡大への懸念から、13日のNY株式市場も反落し、ダウ工業株30種平均は前日終値比128・11ドル安の2万9423・31ドルで終了。同日の外国為替市場では、新型肺炎が欧州経済に及ぼす可能性がある――との見方が広がり、欧州単一通貨であるユーロが売られ、対ドルで約2年10カ月ぶりの安値を付けた。
 中国向けの輸出依存が大きい欧州や韓国なども中国経済悪化の影響をモロに受ける。まさに「コロナ恐慌」とも言える最悪の事態になりつつあるが、日本経済をさらなる奈落の底に突き落としかねない「地獄の連鎖」のトドメが東京五輪の延期だろう。
「東京大会の中止や延期は検討されていないことを改めてはっきり申し上げたい」
 一昨日、都内で開かれたIOC(国際オリンピック委員会)と大会組織委員会による会合で、組織委の森喜朗会長はこう断言していたが、日本サッカー協会などの競技団体からは「(国際大会の主催者から)新型肺炎に感染していないという証明書を出せと言われた」といった声が出たという。つまり、それだけ諸外国が新型肺炎に神経をとがらせているワケだ。
 東京五輪では世界中から観戦客が集まるだけでなく、約5万人の警備員と8万人のボランティアが大会運営に携わる。そんな中で感染爆発が起きれば五輪どころじゃない。NYタイムズは、横浜港で停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の日本政府の検疫体制について、<日本政府の対応は、公衆衛生危機の際に行ってはいけない対応の見本>と批判する専門家の意見を報じていた。風鈴や打ち水といった世界が唖然とした五輪の熱中症対策のように、新型肺炎でも後手後手の対応が続けば、大会参加を辞退する国が出てくる可能性はあるだろう。

「感染拡大が続き、今春の習近平国家主席の訪日が中止となるような事態になれば、IOCも五輪延期や中止を呼び掛けるでしょう。景気浮揚が期待されていた五輪がなくなるのだから株価の急落は避けられない。ふつう、政府はそうした事態を避けるため、金利や財政出動などのあらゆる対策を講じて経済へのダメージを最小限に食い止めようとするのですが、今の日本はアベノミクスによって、もはや打つ手が残されていないのです」(斎藤満氏=前出)
 泥沼に沈む日本経済を黙って見るしかない最悪の展開になるかもしれない。