2020年2月16日日曜日

新型肺炎 初動ミスは明らか 事態は深刻

 安倍首相は春節祝辞 北京の日本大使館ホームページに載せ、連休期間(12430日)「多くの中国の皆さまが訪日されることを楽しみにしています」と訪日を要請しました。新型肺炎患者が急増している中であり得ないことで、それを疑問視する書き込みがネット上に相次いだため30日に削除したということです(東京新聞)。
 経済指数の落ち込みを春節の中国客のインバウンド収入で少しでも防ごうとしたのですが浅はかなことです。日刊スポーツ紙が「初動ミスにインバウンド優先の批判」とする記事を出しました。水際作戦は当初からないまま、いまや各地で同時多発が進行する状況になっています。

 クルーズ船の検疫官が感染したことで、防護服の不備について問われた加藤厚労相は、「いえ、防護服は特段必要ありません。通常の対応ですから。・・・」と答えました。これはひと月も前に政府が言っていた「怖くはない」の延長で、医療者が感染した段階でも責任者がこれほど基本的な認識を欠いているのでは話になりません(日刊スポーツ)。

 横浜市で開かれている学会に来日したWHOでシニアアドバイザーを務める進藤奈邦子氏は記者に、「中国以外のほかの国では感染経路の追跡ができている。接触者の調査を行って一つ一つ消し止めることで感染は広がりを見せていない。日本だけが少し様相が異なっている日本で今後、感染の広がりがどうなっていくのかを見極めることが、世界的な対策を考える上で重要語りました(NHK)。水際作戦に失敗したテストケースになるということのようです。

 15日時点の感染者数はクルーズ船の乗客・乗員285人、その他が52人で合わせて337人です。一方、中国本土の感染者数は、13時点で累計63,851人、死者は1,380重症者が10,0204人で、医療従事者の感染者は1,716で、6人が死亡しています(東京新聞)
 医療従事者が多数感染していることは、強烈な感染力を持っていることを示すもので、海外の専門家は「15秒(無対策なら2秒)で感染」「数十億人が感染する恐れ」と警鐘を鳴らしています(日刊ゲンダイ)。
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感染拡大後、HPに「訪日歓迎」 安倍首相の春節祝辞削除 外務省
東京新聞 2020年2月15日 夕刊
 外務省は、北京の日本大使館のホームページ(HP)に載せていた安倍晋三首相の中国向けの祝辞を削除した。祝辞は春節(旧正月)を祝うとともに多数の中国人の訪日に期待する内容で、中国での新型コロナウイルス感染拡大後の一月二十四日から一週間掲載していた。同省は危機感のなさを問われかねないとして「不適切だった」(幹部)と陳謝している。
 祝辞で首相は、春節の連休期間(一月二十四~三十日)と、夏の東京五輪・パラリンピック開催時の訪日を要請。「多くの中国の皆さまが訪日されることを楽しみにしています」と呼び掛けていた。連休初日に祝辞をHPに載せると、これを疑問視する書き込みがネット上に相次ぎ、外務省は三十日に削除した。(後 略)

初動ミスにインバウンド優先の批判/政界地獄耳
日刊スポーツ 2020年2月15日
★新型コロナウイルスによる感染症で国内初めての死者が出たことは政界にも衝撃を与えた。首相・安倍晋三は14日朝、「心からご冥福をお祈りし、ご遺族の皆様にお悔やみを申しあげたい。検査態勢の拡充、感染者の治療態勢の充実を一層加速することによって、感染の拡大を抑えるとともに感染者の重症化防止に取り組んでいく」としたが、初動の幾多の判断ミスで取り返しのつかない事態に陥ったという危機感はない

★どうも軍事的安全保障には強気の対応をする首相だが台風などの豪雨やウイルスなどには極めて鈍感だ。加えて今年4月に予定している習近平・中国国家主席の国賓来日が内定して以来、首相を筆頭に中国をはれ物扱いしたために、中国でウイルス報道が出た後でも春節の中国からの観光客を拒めず、入国を拒否する対象地域を発生地の中国湖北省だけでなく、同浙江省に滞在歴のある外国人らに拡大する判断が遅れ水際対策に失敗。見方によればインバウンド収入を優先したとの批判もある

★外務副大臣・佐藤正久はテレビ番組などで「政府の対応が後手後手」であることを認めるとともに、最初対策会議には防衛省が参加していないことに懸念を示し「戦力の逐次投入では、対応できない」と苦言を呈する。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で検疫官が感染したことが判明した後の厚労相・加藤勝信は記者団に検疫官の防護服について問われ「いえ、防護服は特段必要ありません。通常の対応ですから。マスク・手袋の着用という行動ルールを決めていますから、そのルールにのっとってやってもらうということで対応しているはずですが、もう1回そこを確認する」と答えている。12日午前のやりとりだが、事態を認識していないさまがよくわかる。2度目の厚労相を務める加藤は決断力、判断力に欠けるのか。官邸とともに人災といわれかねない覚悟を持つべきだ。(K)※敬称略

新型ウイルス「世界が日本の対応を注視」WHO進藤氏 
NHK NEWS WEB 2020年2月14日 15時32分
日本国内で新型コロナウイルスの感染が相次いで確認されていることについて、WHO=世界保健機関でシニアアドバイザーを務める進藤奈邦子さんが、横浜市で開かれている学会の会場で報道陣の取材に応じ「世界中が今後の日本の対応を注視している」と話しました。
進藤さんは日本国内で、相次いで感染が確認されていることについて「中国以外のほかの国では感染経路の追跡ができている。接触者の調査を行って一つ一つ消し止めることで感染は広がりを見せていない日本だけが少し様相が異なっている」と指摘しました。
そして、和歌山県で医師への感染が確認されたことから「こうした感染症は病院内での感染を契機に大きく広がりを見せるケースがある。患者の診察中だけでなく、マスクやゴーグルなどの感染防護具の着脱の際にも気をつかうなど、院内での感染制御を改めて徹底してほしい」と話しました。

さらに日本で今後、感染の広がりがどうなっていくのかを見極めることが、世界的な対策を考える上で重要だとして「クルーズ船への対応も含め、世界中が今後の日本の対応を注視している」と話しました。

新型肺炎 中国、医療従事1700人感染
東京新聞 2020年2月15日 朝刊
 【北京=坪井千隼】新型コロナウイルスによる肺炎の感染で中国国家衛生健康委員会は十四日、これまでに医師、看護師ら医療従事者の感染が千七百十六人に上り、六人が死亡したと発表した。
 感染した医療従事者は、発生源とされる武漢市を含む湖北省で千五百二人と、中国全体の大半を占める。同省では防護服などの不足で医療従事者への感染が深刻な問題になっており、入院患者や医師らが相次いで感染する大規模な院内感染も確認されている。
 新型肺炎の流行にいち早く警鐘を鳴らし七日に亡くなった武漢市の眼科医、李文亮(りぶんりょう)さん(33)も院内感染したとみられる。
 同委員会によると、中国本土の感染者数は、十三日までの累計で六万三千八百五十一人。死者は千三百八十人。また重症者が一万二百四人いる。
 感染者、死者の大半を占める湖北省では、十三日から検査キットに頼らず臨床診断で感染を確認する手法を本格化。これまで表面化していなかったケースが判明し感染者数が増加した。

 日本外務省は十四日、浙江省温州市の感染症危険情報を、湖北省と同じ「渡航中止」を勧告するレベル3に引き上げた。湖北省と温州市以外は、四段階中の「レベル2(不要不急の渡航中止要請)」に据え置く

2.20が新型肺炎パンデミック節目 最大8200万人感染の恐怖
日刊ゲンダイ 2020/02/15
 肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの猛威に歯止めがかからない。日本国内では数時間おきに新たな感染が判明する状況となり、明らかにフェーズが変わった。海外の専門家は「2秒で感染」「世界の3分の2が感染する恐れ」と警鐘を鳴らしている。パンデミックの分水嶺まで残された日数も、わずかしかない。
 3日から横浜港で停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染は、米メディアから「第2の感染中心地」と批判されるひどさで、80歳以上の一部乗客がようやく税務大学校(埼玉県和光市)に移送された。

 それでも政府の対応は相変わらず場当たり的だ。外務省は震源地の武漢を含む湖北省に続き、浙江省温州市について感染症危険情報をレベル3に引き上げ。渡航中止を勧告した。安倍首相はきのう(14日)の新型コロナウイルス感染症対策本部会合で、感染症の専門家会議を対策本部内に設置したと表明。「これまで以上に対策の検討を進めていく」と勇ましかったが、その言葉に説得力はない。

 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏は言う。
「国内での感染拡大は完全に人災です。感染症対策に力量がない厚労省と官邸のデタラメが重なり、事態を悪化させたのは明らか。クルーズ船の海上検疫・隔離を決定したのは、英医学誌『ランセット』で中国の研究チームが無症状感染者やヒト・ヒト感染の可能性を指摘した後。ウイルス検査の対象を滞在歴などで限定したため、感染者の確認が後手に回ってしまった。神奈川で80代女性が死亡しましたが、すみやかに検査して抗HIV薬を投与していたら、結果は違っていたかもしれません。政府がやるべきは指示ではなく、ロジ  必要資材の調達、ロジスティクス?。全国各地でウイルス検査ができるような態勢を整備することに尽きる。検査は1万円程度ですから、1万人検査に要する費用は1億円、10万人で10億円に過ぎない。検査件数の増加はエビデンスの積み上げにもつながるのですから、早急に方向転換すべきです」
 ようやく厚労省は滞在歴を問わない検査対象拡大を検討。大学病院や民間の検査会社に協力を仰ぎ、1日の検査実施件数を約300件から約1100件まで増やすという。しかし、その程度で感染スピードに追いつけるのか。

政府の後手後手対応で事態が悪化
 北京大第一医院感染疾病科の王貴強主任は新華社通信の取材に「ウイルスの感染力は強い。15秒で感染は十分に可能で、何も対処していなければ2秒で感染もあり得る」と指摘。WHO(世界保健機関)の非常勤顧問を務める感染症の権威のアイラ・ロンジーニ氏(米フロリダ大感染病統計研究所所長)の試算では、世界の感染者は数十億人に達する可能性があるという。香港大学のガブリエル・レオン教授(公衆衛生学)も、世界の3分の2近くが感染する恐れがあると警鐘を鳴らしている。この推計を日本に当てはめると、感染者は8200万人に及ぶ。

 一方、中国政府の新型肺炎対策チーム長を務める鐘南山氏は「2月20日が大きな節目」と分析している。武漢閉鎖が1月23日。潜伏期間を14日とすると、2月5日ごろまでは武漢から移動した人が各地でウイルスを拡散させるが、そこで感染網を断ち切れていれば14日を過ぎた20日あたりに一服するというのである。まさにパンデミックの分水嶺まで、あと数日。翻って日本はこの間、政府の後手後手対応で事態が悪化した。初動の遅れは悲劇を量産しかねないのではないか。