2020年2月20日木曜日

検査はしない 家で4日間我慢せよ では感染拡大は必至(世に倦む日々)

 19日()現在、新型コロナウィルスの国内感染者数は84人(中国に次いで2位)、クルーズ船の乗客・乗員621人を合わせると合計705人に達しました。国内感染者は東京25人、和歌山12人、愛知8人、神奈川7人など、11都道府県に及んでいます。
 感染者の中には、病院を何か所もたらい回しされた挙げ句、ようやく検査を受けて認められる例も目立ちます。当然のことですが、感染者の家族や濃厚接触者のうちから感染者が続出しています。感染者には重傷者が多いことからまだまだ氷山の一角に過ぎないことは明らかで、この先どこまで拡大が明らかになるのか予測がつきません。

 感染が市中で広まり始めた1月下旬に全く手を打たず、そのまま長く放置した安倍政権は、今週に入って「新型コロナウイルス感染症の相談・受診の目安」発表しました。
 メディアはいかにも前進したかのように扱いましたが、それは風邪の症状で熱が37・5度以上出た人は4日間会社を休んで家におり、その後で「帰国者・接触者相談センター」に電話して「相談」を受けろというもので、その相談センターの電話は繋がるまで2時間待ちと案内しているということです

 ブログ「世に倦む日々」がこれについて鋭い考察を行っています。
公務員や大企業の社員なら熱が出たので『4日間休みます』で通るだろうが、中小企業の経営者従業員、あるいは小売商店やサービス業に携わる人たちはとてもそうはいかない。普通熱が続けば医師の診察を受けるの当然で、それを抑えてしまえば市中医の営業も成り立たなくなる。家で4日間休めというのは簡単だが、そのためには介護が必要なので、家族(介護者)を通じて感染は拡大する(介護者は市中に出るので新たな感染源となる)。感染者が一人暮らしの場合は、37・5度以上熱の身体で自分の食事を賄わないといけないし、普通4日間自宅にこもれば生活物資が不足するので、肺炎が進行している身で買い物に出かけることになる」・・・と。
「だから感染者は必ず政府が責任をもって隔離をしなければならず、隔離して療養できる施設が必要で、それは国が予算して整備しなくてはいけない
・・・それを必死に行うのが政府に課せられた責任だと述べています。

 要するに政府が出した当面の方針は一見妥当のようではあるものの、実際は感染拡大の方に作用するという指摘です。これまでの無為無策に間尺を合せた施策がこれしかなかったというお粗末さですが、この期に及んで感染拡大につながる策しか打ち出せないという点が、正に無能な政府を持つことの悲劇です。
 自らの無為を棚に上げて口先だけで事態を取り繕おうとするのはそもそも無理です。
 中国政府が問題発生と同時に極めて迅速に隔離病棟を作り上げたことや、韓国政府が感染者が安心して隔離病棟に入られるように支援策を実行していることを、政府は大いに取り入れて少しでも感染の拡大を抑える必要があります。
「世に倦む日々」の記事を紹介します。

 註 文中「サスペクト」という聞きなれない言葉が出てきますが、調べたところ「潜在的なお客」という意味です。
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「目安縛り」の新対策 – 検査はしない、して自分で治せ 
世に倦む日々 2020-02-19
昨日18日は4都県で8人の感染者が出た。東京の3人のうち80代男性と50代男性は重症で人工呼吸器の状態にあり、神奈川の1人の60代男性も重症とある。東京の50代男性の会社員は5日に発症後、10日から13日の間に二つの病院で診察を受け、15日に別の病院に入院、18日に陽性と判明している。神奈川の60代男性は、5日に病院を訪れて風邪と診断、8日に別の病院を紹介され受診、10日にも受診したが症状が治まらず13日に入院、さらに別の病院に転院となり、17日にウィルス検査を受けて陽性と判明、発表となった。この二人も病院を何か所もたらい回しされた挙げ句、入院先で人口呼吸器の重症となり、最後に検査されて感染者にカウントされる身となった。日本の市中感染のパターンである。 

屋形船の例のような大きなエピソードに引っかかったサスペクトでないかぎり、あるいは厚労省職員や横浜市消防局員やDMAT職員でないかぎり、普通の市民は即時の積極的な検査を受けることができない。「武漢縛り」を変えて検査対象を緩和し、市中感染者を公表し始めた13日から、この5日間で市中感染者は30人ほど出ているが、うち死者と重症者は6人に上っている。(1)神奈川80代女性、(2)北海道50代男性、(3)東京40代男性、(4)東京80代男性、(5)東京50代男性、(6)神奈川60代男性。中国人旅行者を含めた現在の市中感染者数は61人なので、重症者率は1割ということになる。いかに、厚労省が重症となった者だけを選んで検査しているかが分かる。また、重症者は決して高齢者だけに限られるわけではないことも分かる。働き盛りの現役世代が重症化している。

もう一つ、この5日間に起きた重大な出来事は、4つの病院が外来を停止して医療活動ができなくなったことである。(1)済生会有田病院、(2)相模原中央病院、(3)大田区の牧田総合病院、(4)杉並区の佼成病院。1日に1件のペースで病院が閉鎖されていて、地域の医療崩壊が発生している。医師・看護師・入院患者を検査して安全が確認されなくてはならず、そのぶん周囲の病院に負荷がかかる。まさに日本の武漢化の進行であり、こうしたケースが各地で続出するだろう。安倍官邸と厚労省は、感染が市中で広まり始めた1月下旬に全く手を打たず、感染者も医療機関もそのまま1か月放置した。もし、初動で全国で検査体制を敷いていれば、相模原中央病院や佼成病院の院内感染は防ぐことができただろう。同様のケースは報道の表面に出てないだけで、全国で起きていると考えられる。呼吸器をつけられた重症患者が、何十人と検査と公表の順番を待っているに違いない。

今週に入って、政府から「新型コロナウイルス感染症の相談・受診の目安」が発表され、テレビ報道は連日この内容を民草にダウンロードして周知徹底を図っている。中身は本当にふざけたお粗末なものだ。風邪の症状で熱が37.5度以上出た者は、4日間、会社を休んで家で我慢しろと言い、その後で「帰国者・接触者相談センター」に電話して「相談」を受けろと言っている。4日間は病院に行ってはいけないのであり、検査も受けさせてもらえないのだ。相談センターの電話は繋がるまで2時間待ちなのだと案内している。相談と検査はあくまで症状の重い者を医療サービスに導くためのもので、重症者の救命を目的とした措置である。軽症者の発見や保護は考えていない。また、既存の病院を感染者から守るための対策であり、病院に感染者を近づけずブロックするための予防策でもある。要するに、罹ったと思ったら家に籠もって自力で治せと言っていて、呼吸器の必要な重症者になったら検査して救命治療してやると言っている

結局のところ、「武漢縛り」が新しく「目安縛り」に変わっただけで、検査から排除しているのは同じであり、拒絶のフェーズがさらに上がって、近くの病院に診察を受けに行くことすらできなくなった。政府の考え方としては、発症しても8割が軽症で体内に抗体を作って自然治癒するのだから、37.5度以上の熱と咳を4日間辛抱してもらえればいいというメッセージであり、持病持ちの高齢者はそこを2日間でいいよと勘弁するものだ。徹底した自己責任主義の対策であり、政府の行政責任を放棄した中身と言える。自分で罹って自分で治せば、感染者の数も増えず、「日本は対策に成功している」と体面を保て、国際社会に「エビデンス」を見せて東京五輪を守ろうという魂胆だろう。「武漢縛り」の政策と発想は同じであり、断固とした隠蔽と閑却の態度が貫かれている。マスコミはこの政府の無策と放置を何も批判せず、ただ政府の布告を流すだけだ。

公務員や大企業の社員なら、熱が出ましたから4日間休みますも通るだろう。中小企業の経営者とか従業員がこの話が通るだろうか。小売商店やサービス業に携わる者がこんな対応が可能だろうか。それが可能なら市販の風邪薬(感冒緩和剤)が売れたりはするまい。日雇い同然の働き方をしている非正規は休めるのか。ウーバーイーツの配達員は休めるのか。テレ朝のワイドショーでも論じていたが、そもそも、発熱はあらゆる病患に共通する初期症状であり、体内からの非常警告信号に他ならない。新型コロナウィルスによるものとは限らない。すぐに医師の診察を受けるのは当然で、町で開業する内科医はその需要で経営が成り立っている。現実離れした対策だ。それと、この対策で決定的に見落とされている基本的な点は、介護と感染という問題である。医療機関がサスペクトを検査して感染者と判定し、施設に隔離すれば、感染者はその環境で食事等のケアを受けられる。それが入院の意味である。感染を周囲や市中に広げることはない。

だが、自宅待機ならば、介護する家族が感染してしまう。家族は感染者の食事等の世話をしないといけないから、外出して他者と接触せざるを得ない。家で4日間休めというのは簡単だが、生きるためには介護が必要で、誰かが世話をしなくてはならず、家族を通じて感染は拡大するのである。感染者が一人暮らしの場合は、37.5度以上熱の身体で自前で食事を賄わないといけない。肺炎が進行している身で買い物に出かけて濃厚接触を続けないといけない。本来、レントゲン撮影してすぐに病床に就けなくてはいけない患者のはずである。この点はどうなのか。結局のところ、「目安」の新対策は対策になっておらず、国民を感染禍の中に放置して、感染拡大を助長する悪手になっているだけだ。要するに、社会政策として論じるべきことは、感染者は必ず政府が責任をもって隔離をしなければならず、隔離して療養できる施設が必要で、それは国が予算して整備しなくてはいけないということだ。そのために憲法25条があるのであり、国民の納税義務がある。

韓国政府は4人家族の世帯に123万ウォンの生活費を支給する。検査費と治療費は全額を国が負担する。見事な社会政策で感染症禍に立ち向かっている中国では、咳や熱の自覚症状を自主的に届け出て検査に応じた場合は報奨金をもらえる。身辺のサスペクトを通報した場合も報奨金がもらえる。サスペクトは強制的に検査を受けざるを得ない。そうやって国が積極的に感染者を見つけ出し、強引に検査に誘い、国が感染拡大を潰している。日本は逆だ。不思議なことに、国が必死になって検査対策から逃げている。検査と国民の間に鉄の壁を築いている。日本は、検査や隔離の数を広げると国の負担が増えるから困るという理由で、検査対象に縛りをかけてサスペクトを保健医療機関からシャットアウトしている。感染拡大を防ぐのも、感染の治癒も、すべて個人の自己責任と自力更生に任せている。国民に犠牲を強いることだけが、日本の新型コロナウィルス感染の対策なのだ。