2020年2月22日土曜日

検事長の定年延長問題 これでも法治国家なのか

 東京高検の黒川弘務検事長の定年延長の法的な根拠についての政府の説明は破綻状態にあります。そもそも違法に定年を延長したのですから、整合性のある説明などもともと無理なのでした。
 1981年に「改正国家公務員法制定された際に、人事院が検察官や大学教授などには適用されないと説明していた事実を、10日に山尾志桜里議員から指摘されるまで森雅子法相は知らなかったのでした。
 安倍政権は定年延長に関する法解釈の変更を閣議決定するという禁じ手を使わざるを得ないところに追い込まれました。法の解釈を為政者の都合のいいようにコロコロ変えるというのは法治国家ではありません。

 検察官も国家公務員であるから定年延長が適用できるというのは余りにも幼稚な言い分で誰をも納得させません。「検察官も国家公務員ではあるが、訴追権を独占しているという特権に鑑みて定年の延長は行わない」と解すべきが当たり前であって、国会公務員法と検察庁法を並べてその都度、都合の良い方をとるというのは滅茶苦茶な話です。

 そもそも黒川氏はこれまで何でも安倍・菅氏の言うことを聞いて来た(あるいは忖度して来た)から、彼を半年後に検事総長に就けて身の安全を図ろうという考え方自体が、三権分立を根底から覆す違法行為です。
 普通仮にそうした着想が浮かんだとしても、良心を持っていればそんなアコギなことは恥ずかしくて出来ないものですが、安倍氏の場合は逆で、何の抵抗もなく実行に移そうとするわけです。まことにかつて恩師が彼のことを無知と無恥の人間であると称した所以です。それにしても「今だけ、自分だけ」良ければよいとして、法解釈を変えてまで強行するとはまことに異常なことであり、異常な人間です。
 二つの社説、毎日新聞の「検事長の定年延長問題 これでも法治国家なのか」、北海道新聞の「森氏の答弁 法の支配否定する暴論」を紹介します。
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社説 検事長の定年延長問題 これでも法治国家なのか
毎日新聞 2020年2月21日
 法律の解釈を恣意(しい)的に変える。それが法治国家のすることだろうか。 
 安倍政権が黒川弘務・東京高検検事長の定年を延長した問題は、さらに疑問が深まっている。 
 1947年に制定され、検察官の定年を定めた検察庁法には、延長の規定がない。81年に国家公務員法が改正され、一般職の定年や延長の特例が定められたが、人事院は当時、「検察官に国家公務員法の定年制は適用されない」と答弁していた。 
 これに対し、安倍晋三首相は今国会の答弁で「今般、検察官の定年延長に国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」と述べ、法解釈を変更したと明言した。 
 しかし、40年近く維持された法解釈を時の内閣が好き勝手に変えてしまうことには、大きな問題がある。 
 法律は、趣旨や適用範囲を議論した上で国会が制定する。運用の原則を変えるのならば、法改正を議論すべきだ。解釈変更で済ませるのは、国会軽視に等しい。 
 そもそも国家公務員法は公務運営に著しい支障が生じる場合に定年延長を認めているが、黒川氏のケースが当てはまるとは思えない。 
 法解釈を変更した経緯についての政府説明も迷走している。 
 人事院の担当局長は国会で、81年の人事院答弁について「現在まで当時の解釈は続いている」と答えた。 
 ところが首相の発言を受けて、担当局長はこの答弁を撤回した。81年当時の解釈が続いていたのは、黒川氏の定年延長を閣議決定する直前の1月下旬に解釈を変更するまでだったと修正した。 
 強引な解釈変更を取り繕うため、無理に答弁を修正し、つじつまを合わせたとしか見えない。このようなことが繰り返されれば、官僚組織は成り立たなくなる。 
 刑事訴追の権限を原則独占する検察官は、行政官でありながら裁判官に準ずる待遇を与えられている。このため政府は検察庁法の制定後、検察官の任免は一般の公務員とは取り扱いが異なると説明している。 
 こうした法の趣旨を無視するような形で、安倍政権は今回、人事権を行使した。政権に近いと目される黒川氏は、検事総長就任への道が開けた。やはり、黒川氏の定年延長ありきだったのではないか。 


社説 森氏の答弁 法の支配否定する暴論
北海道新聞 2020/02/21
 検察官の定年延長を巡り、法務省のトップが国会で支離滅裂な答弁を重ね、ついには「法の支配」を否定するような発言をした。
 看過できない。
 森雅子法相はきのうの衆院予算委員会で、法律の規定について「前に適用されなかったことが適用されるように(法)解釈することはある」と述べた。
 法律の制定時に政府が認めていなかった解釈を後に変更し、法の適用対象を変えることを当然視する認識を示したものだ。
 驚くほかない。
 それを認めては国会も、三権分立も成り立たなくなる。

 国会は国権の最高機関であり、政府は国会で定めた法律に従わなければならない。政府の都合で法の解釈を覆していいはずがない。
 法相は法の秩序維持を担う。
 森氏は法相にふさわしくないと言わざるを得ない。
 この発言は、東京高検の黒川弘務検事長の定年延長に伴い、法解釈を変更したことを問われた際に飛び出した。
 安倍晋三政権は憲法解釈を強引に変更して集団的自衛権の行使を可能にし、違憲の疑いが濃い安全保障関連法を成立させた。
 法相の見解は、安倍政権の「法の支配」を軽視する姿勢を象徴するものと言えよう。
 そもそも検察官の定年は特別法の検察庁法で定められ、一般法の国家公務員法の定年延長規定からは除外されている
 これが1981年の人事院の法解釈であり、政府の見解だった。
 検察官の職務の特殊性を踏まえれば当然である。
 しかし法相は10日、人事院の解釈について「詳細は知らない」とし、85年の改正国家公務員法施行時から検察官も勤務延長制度が適用されているとの認識を示した。
 その2日後、人事院が過去の法解釈を「現在まで引き継いでいる。特に議論はない」と明言した。
 そのため、首相が法解釈の変更を表明したというのが実情だろう。つじつま合わせの後付けの対応だったことは疑いようがない。
 法相は法解釈変更前の先月下旬、内閣法制局と人事院の理解を得た上での決定だとも説明した。
 そうなると人事院の説明と食い違うことになり、人事院は答弁撤回に追い込まれた。
 そこには政権への忖度(そんたく)が垣間見え、人事院の独立性は影もない。
 検事長の定年延長には検察内部からも説明を求める声が出ている。政府は撤回するのが筋だろう。