辺野古の米軍新基地建設地の海面下70m超の地盤が「軟弱」とする実測データが存在していた問題で、新潟大の立石雅昭名誉教授ら地質や地盤の専門家でつくる調査チームがこのデータを基に護岸の安定性を試算したところ、国の要求水準を満たさないことが分かりました。
同チームは、防衛省の報告書に記された安定計算の数式に準じて計算したところ、70mより深い地盤が今回判明した強度だった場合、このまま施工すれば盛り土が崩れ、護岸が崩壊する恐れがあるという結論になりました。
立石名誉教授は「データの信頼性が低いというなら防衛省は調査をやり直し、正確な強度を示せばいい。危険性が指摘されているのにデータを見直そうともしない防衛省には、リスクを見積もる姿勢が欠落している」と語りました。
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軟弱地盤 設計水準満たさず 辺野古護岸「最悪崩壊する」
実測値、専門家試算
東京新聞 2020年2月16日
沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設地の海面下七十メートル超の地盤に「軟弱」と示す実測データが存在していた問題で、辺野古工事を独自に検証している専門家チームが、このデータを基に護岸の安定性を試算したところ、国の要求水準を満たさないことが分かった。最悪の場合、埋め立てた盛り土が崩れ、護岸が崩壊する恐れがあるという。チームは「安全な施工は保証できない。今からでも地盤を再調査すべきだ」と指摘する。(中沢誠)
防衛省は「信頼性が低い」として、「軟弱」データを設計に反映していない。仮にデータ通り七十メートル超も軟弱地盤となれば、国が求める設計水準を満たすには地盤改良の必要がある。しかし、国内の作業船の能力では七十メートルまでしか対応できず、新基地建設が行き詰まる恐れも出てくる。
試算したのは、新潟大の立石雅昭名誉教授ら地質や地盤の専門家でつくる調査チーム。「軟弱」を示す実測データが検出された「B27」地点には、巨大な護岸が設置される。チームは、B27地点で七十メートル超の地盤が「軟弱」だった場合、護岸が安全に建設できるかどうか安定性を試算した。
防衛省は、新基地建設において、国土交通省が定める港湾施設の基準に基づいて設計している。
防衛省が昨年三月に国会へ提出した地盤改良の検討報告書では、B27地点から最長七百五十メートル離れた三地点から類推した強度を基に、護岸の安定性を計算している。報告書によると、深度七十メートルまで地盤改良すれば要求水準をぎりぎり満たす結果だった。
一方、調査チームが、護岸下の地盤強度を今回発覚した「軟弱」なデータに置き換えて計算し直したところ、安定性は国が求める設計の要求基準を満たさなかった。国交省の基準を満たさない設計は通常認められない。
調査チームの試算について、防衛省は取材に「仮定の話には答えられない」とした。
実測データを設計に反映していない点を、河野太郎防衛相は十四日の会見で「設計に影響が出ることではなく、リスクがあるとは思わない」と発言。別地点のデータから七十メートル超の地盤が「非常に固い」とした判断は、「(有識者の)技術検討会からもお墨付きをもらっている」として、追加のボーリング調査は必要ないとの見解を示した。
B27地点の地盤強度の実測データは、防衛省が国会に提出した資料の巻末に英文で記載されていた。これまで防衛省は、本紙の取材や国会の質問に「強度試験はやっていない」と虚偽説明を繰り返し、実測データの存在も明らかにしていなかった。
◆地盤調査やり直しを
調査チーム代表、立石雅昭・新潟大学名誉教授(地質学)の話 防衛省の報告書に記された安定計算の数式に準じて計算しており、国の設計水準を満たさないと判断するには十分な試算だ。七十メートルより深い地盤が今回判明した強度だった場合、設計が成り立たず、このまま施工すれば盛り土が崩れ、護岸が崩壊する恐れがある。データの信頼性が低いというなら防衛省は調査をやり直し、正確な強度を示せばいい。危険性が指摘されているのにデータを見直そうともしない防衛省には、リスクを見積もる姿勢が欠落している。