新型コロナウィルス禍が5月中に沈静しなければ、東京五輪は延期ではなく中止になるという見方が強まりました。そうなればアスリートたちをはじめ関係者、国民の落胆は如何ばかりでしょうか。
26日、自民党の鈴木俊一総務会長は都内で講演し、「万一、ウィルスの感染拡大でオリンピックが予定通りできないということになれば、政治責任というようなことが持ち上がる」と述べました(鈴木氏は17年8月から1年余り東京五輪担当相を経験)。
それに呼吸を合せるように、谷垣前幹事長の「有隣会」代表世話人の中谷元・元防衛相は、27日、ポスト安倍候補の石破氏、岸田政調会長らと都内で会食したようです。
天木直人氏は、それは「もはや安倍政権では世論はついてこないから早く岸田氏に禅譲しろ」と促すものであり、今度のコロナ危機という国難を前にして、自民党内で安倍包囲網を作る流れに急変しようとしているのではないかと思うとして、岸田・石破コンビで安倍政権を否定する政策に舵を切れば、緊急避難的な挙国一致内閣が出来上がる可能性があると述べています。
いずれにしても、肝心の問題解決能力が全く欠如していることが明らかになった安倍政権は、早々に退場すべきです。
天木氏は、東京五輪が延期、中止されることがわかった段階で、政局は一気に動くと見ています(5月以降では遅すぎるのですが)。
それとは別に、IOCのキーパーソンであるディック・パウンド氏が、東京五輪の開催時期の判断期限は引き延ばせて5月下旬がリミットとの見解を示したことに関連して、橋本五輪相や大会関係者側は苦しい弁明を続けていますが、身内のJOC(日本オリ・パラ委員会)からもついに安倍首相へ批判が向けられるようになったということです。
27日のJBpress が報じました。
要するに安倍政権が「東京五輪開催に関して不利な情報を何とか隠蔽しようとしていることが余りにも目立ち過ぎて、このままでは『東京五輪は悪』=『迷惑千万な大会』のイメージがどんどん膨らんでしまう恐れがある」、との思いからです。
新型コロナウイルスを甘く見て初動対策が大幅に遅れたことが、結局政府にとって『肝心』の東京五輪開催の危機に繋がったことで政府の責任が問われるようになったのです。そのときは安倍首相は潔く!? 退場するしかありません。
天木直人氏のブログとJBpressの記事を紹介します。
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東京五輪がなくなれば政治責任になると発言した鈴木総務会長
天木直人のブログ 2020-02-27
きょう2月27日の読売新聞が一段の小さな記事で報じた。
自民党の鈴木総務会長はきのう2月26日、東京都内で講演し、ウィルスの感染拡大で夏の東京五輪・パラリンピックが延期や中止となった場合、安倍内閣の政治責任が問われるとの考えを示したと。
すなわち、次のような発言をしたというのだ。
「万一、オリンピックが予定通りできないということになれば、政治責任というようなことが持ち上がる」と。
これはものすごい発言である。それが野党の党首が言うならわかる。そして、野党の党首が言ったのなら、またいつものセリフかと世論は一笑して終わる。
しかし、安倍1強と言われる自民党の内部からの発言だ。しかも党三役の一人の総務会長の発言だ。みずから東京五輪担当相もやったことがある安倍政権の重鎮の一人だ。
その鈴木俊一総務会長が、いくら、「万が一」という前提を付けて発言したとしても、引責辞任しなければいけなくなると公開の場で言ったのだ。
これは、今朝の各紙が一面トップで報じてもいいくらいの衝撃的な発言である。しかも鈴木俊一議員の派閥を調べたら、元岸田派であり、いまは義兄の麻生太郎の派閥だという。
つまり、反安倍の石破茂が発言したのとはわけが違う。安倍首相を支え、安倍首相から禅譲を受ける岸田を支える側から出た発言なのだ。
もはや安倍政権では世論はついてこないから早く岸田に禅譲しろと言ってるのだ。
そう思っていたら、やはりきょう2月27日の読売新聞がもう一つの衝撃的な政局がらみの記事を掲載した。すなわち、谷垣前幹事長を中心とするグループ「有隣会」(24人)が、次期総裁選をにらんで活発な動きを見せ始めたと。
そして、ここが注目すべきところであるが、代表世話人の中谷元・元防衛相は、きょう2月27日、ポスト安倍候補の石破氏、岸田政調会長らと都内で会食する予定であると。
ここからは私の想像だが、今度のコロナ危機という国難を前にして、ついに自民党は、安倍一強から一転して、安倍包囲網に流れが急変しようとしているのではないかと思う。
つまり、安倍に禅譲されるだけの岸田一人では日本を任せられない。だからといって世論の人気だけが先行し、安倍に嫌われている石破だけでは自民党総裁になれない。
ここは石破が岸田に譲り、岸田は石破を自分の後継者としてナンバー2の重要ポストを与えて、岸田・石破コンビで安倍政権を否定する政策に舵を切る。
そういう包囲網の始まりが動き出したと言う事ではないのか。そしてその場合はあらゆる野党に声をかけるのだ。
政党はそのままでもいい。岸田・石破が掲げる脱安倍政策に賛同できるなら連立政権に参加しないかと。
これこそが私が繰り返しそうならざるを得ないと言っている、緊急避難的な挙国一致内閣なのである。あらゆる面で行き詰っている日本を救うにはそれしかない。
岸田・石破で解散・総選挙を行い、どうせ自公の両党で過半数を占めるのだから、自公連立政権は変わらなくても、自公だけでは政治が出来なくなる。自公政権に合流を希望する野党に対しては、獲得議席数に応じて閣僚のポストを与えるのだ。
皆が閣僚のポストを欲しがる現実の政治の世界ではあり得ない事であっても、いまは常識が通じない政治になりつつある。
そして自民党と公明党は見事にその困難を克服してやってきた。その気になれば出来ないはずはないのだ。
政権交代など夢のまた夢である野党は、政策の異なる野党同士で無理に連立政権を目指すよりも、どうせ政策の違いをごまかすのだから、安倍よりは違いの少ないと思われる岸田・石破自民党との連立政権に入って、権力の一角を占めた方が存在意義を示せる。
共産党や社民党を除いた野党は皆そう考えるだろう。
東京五輪が延期、中止されることがわかった段階で、政局は一気に動くのではないかという気がする(了)
新型コロナ、隠蔽疑惑の政府にJOCが"反旗"
「開催強行突破」に向けたなりふり構わぬ姿勢に身内から反発も
臼北 信行 JBpress 2020.2.27
新型コロナウイルスの猛威が止まらない。日本のプロスポーツ界もモロに影響を受け、大きく混乱している。プロサッカーのJリーグは3月15日までに予定していた全公式戦の中止と延期を決定。国内男子プロバスケットボールのBリーグも3月11日までに予定されていたB1とB2の計99試合を延期すると発表した。
そしてプロ野球のNPB(日本野球機構)でも12球団代表者会議が行われ、3月15日まで組まれていた残りのオープン戦全72試合を無観客試合とすることを決めた。26日に政府から「今後2週間は大規模なイベントを中止、延期または規模縮小などの対応を要請する」との告達が出されたことも拍車をかけ、各プロスポーツ界は具体策を示さざるを得ない状況となっている。
IOC委員が口にする東京五輪開催への懸念
これらの先にあるのはやはり東京五輪開催の可否だろう。
JリーグとBリーグ、NPBはお膝元の日本で行われるスポーツの祭典に対して所属選手たちを日本代表として参加させる運びとしていることから、どの組織も全面的な協力体制を整えている。そして水面下で東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会やJOC(日本オリンピック委員会)なども束ねながら陣頭指揮を執っている政府は、新型コロナ渦に苦しみつつ、何が何でも大会を成功に導こうと国運を賭すつもりでいるらしい。
しかし今はとにかく気が気でないはずだ。国際オリンピック委員会(IOC)で委員を務め、キーパーソン的な立ち位置にいる有力者のディック・パウンド氏がAP通信のインタビューに応じ、東京五輪の開催時期の判断期限は引き延ばせて5月下旬がリミットとの見解を示したからである。
1978年から要職に就いてIOC最古参となっている同氏の発言は非常に重い。そのIOCの重鎮が中止も辞さない構えを見せたことで日本政府や大会幹部にも計り知れない衝撃が走っている。
そんなドタバタぶりを証明するかのように橋本聖子五輪相が26日の衆院予算委員会で、AP通信のインタビューで口にしたパウンド氏の発言を大慌てで強く否定。東京オリ・パラ大会組織委員会がIOCに説明を求め、回答を得たとし「IOCの公式見解ではない」と述べた。
ところが、こうした橋本五輪相の対応を含む日本政府や大会関係者側の苦しい弁明や逃げ口上については、身内からもついに批判の声が向けられ、いよいよ愛想を尽かされ始めているというから救いようがない。
JOC幹部から漏れだした政府への疑念
JOCの上層部からは「東京五輪開催に関して不利な情報を何とかすべて必死に打ち消そうとしている政府の姿勢があまりにもリアルに目立ち過ぎてしまい、このままでは『東京五輪=悪』のイメージがどんどん膨らんでしまう恐れがある」との警鐘が鳴らされるとともに、次のような厳しい指摘も飛び出している。
「パンデミック寸前の危機的状況にありながら、政府が開催を強行しようと情報操作をしていると見る人が増えている。だから政府の思惑とは逆に、東京五輪は『迷惑千万な大会』と印象付けられる結果となり、開催する側の我々としても大きなとばっちりを受けている。
ここまで新型コロナウイルスのPCR検査の件数が隣の韓国など他国と比較しても異常にまでに少なく、国家ぐるみで感染者の数を過少報告しているとの疑念を持たれてしまっているのも、その一例だ。つまり、東京五輪のせいで検査を受けたくても受けられない“隠れ患者”が実は万単位で存在しており、検査を受けられたとしても、政府の陰謀によって重症化するまで陽性反応が出ないように仕立てあげられているのではないか――などという疑念だ。
この話に一体どこまで信ぴょう性があるかどうかは分からないが、少なくとも疑いがもたれていることで東京五輪のイメージは今やオリンピック史上最悪レベルになっているのは間違いない。
それもこれも、すべて新型コロナウイルス対策への初動が遅れ、甘く見過ごそうとしていた政府の責任だと思う。ウヤムヤにしようとしているから、おかしい。パウンド氏の“5月末リミット発言”に関する橋本大臣の説得力不十分な答弁についても、そして感染者数の過少報告疑惑にも怪しいニオイがプンプンと漂ったままだから、多くの人が『東京五輪なんて中止にしてしまえ』と声高らかに叫ぶようになっているのだろう。この状況においては東京五輪開催に関し、国民の方々からの理解を得られるのは非常に難しいと言わざるを得ない。
とにかくもう一枚岩ではないようだ。このJOCの上層部だけでなく、これまで大会を運営する側として東京五輪の成功に心血を注ぎ込んできた数多くの関係者からも、日本政府の安倍晋三首相や橋本五輪相、東京オリ・パラ大会組織委員会の森喜朗会長ら要職に就く人物たちの失策及びリーダーシップの欠如について猛烈に批判する意見は今、後を絶たない。
ここまで大会運営側がバラバラになり、国民からの理解も得られずじまいとなりそうな政府主導の東京五輪にポジティブな要素を見つけるのは難儀な話だ。とてもじゃないが“コロナショック”を乗り越え、平穏無事に開幕を迎えられるとは思えない。