沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設について、政府はその後工事費9300億円、完成までの工期12年と大幅に計画を変更しました。しかし海面下70m以深(最深90m)の軟弱海底地盤を改良する方法がないので工事計画は事実上頓挫しているのですが、いまだに中止の声は聞かれません。ゴマカシの工法で進めようというのでしょうか。
地盤改良が不十分なまま施工すれば完成後に傾斜はおろか不同沈下がおきるので滑走路はデコボコになります。
防衛省が19年12月に公表した設計変更案では、滑走路の不同沈下は供用開始後20年で最大12cmと試算しているということです(最深部の地盤改良の詳細は不明)。
それを前提に政府は、供用開始から20年間に北側滑走路は2回、南側滑走路は4回補修すれば、不同沈下があっても「長さ45mにつき高低差3cm未満」の国際民間航空機関の基準が満たせるとしていますが、米軍の基準では、滑走路の端から300m未満までの路面は「勾配に変化がないこと」と定め、一切の路面の起伏(デコボコ)を認めていないということです。
そもそも完全な地盤改良が見込めない所に米軍の滑走路を作ること自体に無理があります。政府は一体どうするつもりなのでしょうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
辺野古、米軍基準満たさず 滑走路の設計変更案
東京新聞 2020年1月31日
沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設で、防衛省の設計変更案が、米軍の滑走路の性能基準を満たしていないことが分かった。一兆円近い税金を投じて建設しても、性能の劣る基地になりかねない。防衛省は、より条件の甘い民間空港の国際基準を採用しており、建設推進のためハードルを下げた格好だ。(中沢誠)
新基地では、辺野古沿岸部を埋め立て、V字形に二本の滑走路を建設する。着工後、埋め立て予定海域に軟弱地盤が広がっていることが判明。地盤を固める改良工事を迫られ、防衛省は現在、当初の設計を見直している。
防衛省は、地盤改良しても基地の供用開始後も沈下が続くと想定している。問題は、海底の地形が複雑なため、ふぞろいに地盤が沈下する「不同沈下」が予測されていることだ。
防衛省が二〇一九年十二月に公表した設計変更案によると、滑走路の不同沈下は、供用開始後二十年で最大十二センチと試算している。
航空機が離着陸する滑走路は、平坦(へいたん)であることが必須の条件だ。
防衛省が準拠したのは、国際民間航空機関(ICAO)の基準。設計変更案では、供用開始から二十年間に北側滑走路は二回、南側滑走路は四回補修すれば、不同沈下があっても「長さ四十五メートルにつき縦断面の高低差が三センチ未満」というICAOの平坦さの基準を満たせるとしている。
ところが、米軍には飛行場の設計基準があり、日本国内の米軍施設も適用される。米軍の基準では、離着陸に重要な滑走路の端から三百メートル未満までの路面の平坦さについて、「勾配に変化がないこと」と定め、一切の路面の起伏を認めていない。
防衛省は、供用開始一年目で、滑走路の端から三百メートル未満の路面でも不同沈下が起きると試算している。米軍基準並みの平坦さを保つには、より小まめな補修が必要となり、その分、維持費がかさむことになる。
二十九日の沖縄基地問題の野党会合で、伊波洋一参院議員は「米軍基準をクリアしないからICAOの基準を使ったのでは」と防衛省の対応を追及した。
防衛省整備計画局は、本紙の取材に「米軍と調整の上、ICAOの指針に準拠し設計することとした」と回答。在日米海兵隊は「特にコメントすることはない」とした。
防衛省の変更案では、工期が倍の十六年、費用は当初計画から三倍近い九千三百億円と見込む。将来の維持費は明らかにしていない。河野太郎防衛相は一九年十二月、有識者の了承が得られたとして変更案に沿って工事を進めることを表明した。