2020年2月10日月曜日

米が「使える核兵器」を潜水艦に実戦配備

 沖縄タイムスが「米『使える核兵器』配備 軍拡競争の懸念拭えぬ」とする社説を出しました。

 核兵器(核爆弾)は究極の兵器と呼ばれてきました。それはあまりにも甚大な被害を及ぼす非人道的な爆弾であるため実際には使えない兵器であるという意味です。
 米国の原爆・水爆の開発に続いてソ連も核兵器を持つようになると、米国は戦術核兵器と呼ばれるものの開発に注力しました。50年以上も前のことです。
 小型核兵器の完成を公言したのはトランプが大統領になってからですが、実際にははるか以前に完成していたものと思われます。それを敢えて公言した理由は、「ロシアなどを念頭に核配備増強を思いとどまるよう警告した」というのですが、あまりにも身勝手な論理で何の説得力もないものでした。
 ただいつかは実際に使用しようという意図に基づいていることは明らかです。

 先に、核兵器の使用条件を緩和し小型核の開発を盛り込んだ米国の核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」に対して、それを「高く評価する」との談話を出したのは当時の河野太郎外相でした。一体どんな了見で「高く評価した」のか理解に苦しみます。国会での「ブチ切れ」対応を見るにつけても、河野氏という人物は安倍首相と同様に人格というものを感じさせません。

 多少爆発の規模を小さくしたからといって、核兵器が非人道的兵器であることには何の変りもありません。史上空前の戦争国家アメリカは、ついに自分が勝つためにはそれを使うことも厭わないという本性を現わしました。
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社説 [米「使える核兵器」配備]軍拡競争の懸念拭えぬ
沖縄タイムス 2020年2月9日
 米国防総省は、新型の小型核弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を海軍が実戦配備したと発表した。低出力の核弾頭を潜水艦に配備するのは初めてだ。
 トランプ米政権には核戦力を増強させている中国、ロシアに対抗する狙いがあるとみられるが、軍拡競争の激化をもたらすだけである。核廃絶を求める世界の流れにも逆行するもので、米国は直ちに配備をやめるべきだ。
 新型の小型核弾頭は「使える核兵器」といわれる。爆発力を抑え、敵国の重要施設へのピンポイント攻撃などを想定して開発された。

 国防総省のルード次官(政策担当)は声明で「米国はあらゆる脅威のシナリオに確実に対処できる」として、ロシアなどを念頭に核配備増強を思いとどまるよう警告した。
 身勝手な論理というほかない。核拡散防止条約(NPT)は、核兵器保有国を米ロ英仏中の5カ国に限定すると同時に、核軍縮のために誠実な交渉を義務付けている。その義務に違反し、NPT体制を形骸化させるものだ。

 現行の核弾頭の爆発規模は約100キロトンに対し、小型核弾頭は約5~7キロトン。広島に投下された原爆は16キロトン、長崎は21キロトンだった。米国は抑止力強化を配備の目的に掲げているが、まやかしというほかない。むしろ核使用のハードルが大きく低下するのではないかとの懸念が拭えない。
 米軍によって広島と長崎に人類史上初めて原爆が投下され、未曽有の惨状をもたらした。非人道的で「絶対悪」の兵器であり、使用することは決して許されない。
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 トランプ政権が2018年2月に発表した米核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」に核兵器の使用条件を緩和し「使える核兵器」として小型核の開発を盛り込んだ。
 通常兵器による攻撃に核で反撃する可能性を排除せず、先制不使用も否定している。危険極まりない。
 トランプ大統領は18年10月、米国と旧ソ連で交わされた中距離核戦力(INF)廃棄条約破棄を表明。冷戦終結を後押しし、核軍縮の潮流をつくった画期的な合意だったが、19年8月に失効した。
 米ロ間に唯一残る核軍縮の枠組みは21年2月に期限切れとなる新戦略兵器削減条約(新START)である。トランプ政権は延長に後ろ向きだ。失効すれば軍拡に歯止めをかける手だてを失い、世界が核を巡り不安定化するのは避けられないだろう。
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 日本政府は事あるごとに核保有国と非保有国との間の「橋渡し役」を担うと言っている。だが、核禁止条約に背を向けている。米国の「核の傘」に依存するあまり、トランプ大統領の核政策に追従するばかりだ。NPR発表の際もいち早く「高く評価する」との談話をだしたのは当時の河野太郎外相だった。
 広島、長崎の被爆者の筆舌に尽くしがたい痛苦の思いを裏切るものだ。
 冷戦時代に逆戻りしかねない今こそ、唯一の戦争被爆国として米国の暴走にブレーキをかけるのが日本政府の国際的な責務である。