18日、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」では681人を検査し、新たに88人の感染を確認しました。累計では、乗客・乗員2404人を検査した結果542人の感染が確認され、感染率は23%に達しました。
米国に続き、韓国政府も18日午後、クルーズ船の韓国人乗客を帰国させるために大統領専用機を羽田空港に派遣し19日午前に帰国(金浦空港到着)させる段取りをしています。
カナダや香港、オーストラリアもチャーター機を使って自国民らを帰国させる方針で、日本側と調整に入っています。このように各国が自国民の引き揚げに動いているのは、日本政府の対応に信頼が置けないからです。
国内での新型コロナウィルス感染対策は元よりですが、クルーズ船に対する対応においても日本は海外からの信用を大いに失墜しました。安倍政権の失態です。
日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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新局面ではなく大失態 米チャーター機派遣“本当の意味”
日刊ゲンダイ 2020/02/17
後手後手の日本政府には、もう任せておけないということだろう。
新型コロナウイルスの集団感染が起きているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員について、米政府がついに自国民の救出に乗り出した。乗船中の米国人に対し、在日米大使館が15日に「下船して帰国するよう勧告する」と電子メールを送信。16日夜、米国務省が用意したチャーター機が羽田空港に到着した。
米国立衛生研究所(NIH)の幹部によると、ダイヤモンド・プリンセスの乗客乗員のうち、米国人は約400人。そのうち、44人が感染しているという。
米国内では、船内での感染拡大を招いた日本政府への批判が強まっていた。
CNNテレビは「閉鎖空間である船内にとどまることで感染リスクを高めている」と日本の検疫手法を批判する専門家の見解を紹介。ニューヨーク・タイムズ紙も、日本政府は一貫した情報発信ができておらず、信頼感を損ねていると指摘し、「公衆衛生危機の際に行ってはいけない対応の見本」と酷評していた。
他のメディアも、「ウイルスに汚染された巨大な入れ物に人々を閉じ込めている」「乗船客を取り巻く環境は感染の恐れの巣窟だ」などと、批判を強めている。
諸外国がシビレを切らすのは当然
17日朝、日本を発った米国のチャーター機はカリフォルニア州の米軍基地に向かい、一部の乗客はその後、テキサス州の空軍基地に移動。クルーズ船の下船前に検査を行うだけでなく、チャーター機の離陸前や機内でも医療関係者が体調を観察し、基地に移動後に再び検査を受けて、14日間、隔離されるという。今回のチャーター機で戻らなければ、当面は米国に帰国できない見通しだ。
ずいぶん厳重で、米国人は帰国してからも隔離生活を強いられて大変だが、それだけ米政府は事態を重く見ているということでもある。
「香港男性の感染が分かってから、日本政府はダイヤモンド・プリンセス号の乗客乗員約3700人を船内に閉じ込めてきた。16日までに延べ1200人余りを検査して、すでに感染者が355人ですよ。逃げられない船内で感染が広がったのは明らかです。閉鎖空間でウイルスが蔓延するのは、ちょっと考えれば分かることです。日本政府の対応はあまりにお粗末だったし、ウイルスの巣窟に乗客乗員を“監禁”したのは人権軽視も甚だしい。
安倍政権が無能すぎるせいで、国際問題にも発展しかねません」(政治評論家・本澤二郎氏)
香港人男性が下船したのは1月下旬。船が横浜に帰港したのが今月3日で、政府は14日間の洋上待機を決めたが、その間にみるみる感染者が増え、船内の約1割にまで達してしまった。ウイルス検査で陽性反応の人が一気に数十人も増える日が相次いでいる。
厚労省によれば、乗船者のうち19人が集中治療室で治療を受けるなど重症化。これでは、諸外国がシビレを切らして、自国民を退避させるのは当然の措置だろう。日本政府は完全に見限られたということだ。
姑息な対応がミエミエ国際社会から信頼されない
日本国内では和歌山県の病院や東京都内のタクシー組合など、クルーズ船とは関係ない感染も相次いで確認されている。
加藤厚労相は「感染経路が判明していない事例がある。以前とは状況が異なっている」と言い、国内感染が新たな局面に入ったとの認識を示したが、「新局面」ではなく、「大失態」ではないのか。
15日に新たに感染が確認されたうち、都内に住む40代の会社員男性が重症で入院している。今月2日にせきの症状が出て、5日には発熱で医療機関を受診したという。その時に新型コロナの検査を受けていれば、重症化は避けられたかもしれないが、武漢からの帰国などの条件を満たさないため検査を受けられず、10日には新幹線で愛知に出張していた。そこからまた感染が広がった可能性もあるのだ。
検査を受けない、受けられないまま、無自覚にウイルスをまき散らしている感染者も相当いると考えた方がいい。
山野美容芸術短大客員教授の中原英臣氏(感染症学)が言う。
「国内の感染発覚当初は、武漢への滞在歴があり発熱の症状がある人など、検査対象が限られていた。だから発覚していなかっただけで、実際は確認されている10倍、100倍の感染者がいてもおかしくない。検査対象を緩和した途端、次々に感染者が確認されているし、いま潜伏期の人もいるでしょう。政府の初動が結果的に感染の実態を隠すことになり、ウイルスが日本中に広まって、感染ルートも分からなくなってしまった。PCR検査も最初から民間への委託を考えておけば、初期段階で大量の検査ができたはずなのです。すでに市中感染が始まっている以上、封じ込めにも失敗したということ。水際対策どころの話ではなく、今度こそ後手は許されません」
米国だけでなく、カナダや香港、オーストラリアもチャーター機を使って自国民らを帰国させる方針で、日本側と調整に入っている。
ゴマカシ、隠蔽政権の真骨頂
「クルーズ船を停泊させ、国内での検査対象を絞り込んでいた政府の対応は水際阻止などではなく、いかに感染者の数を少なく見せるかに腐心していたとみられても仕方ない。WHO(世界保健機関)に1000万ドルも寄付して、クルーズ船の感染者は日本国内に含めないよう頼み込んだわけでしょう? 都合の悪いことはゴマカし、隠蔽する安倍政権らしいやり方です。国民の安全よりカネが大事とばかりに、インバウンド重視で他国のクルーズ船乗客まで危険にさらした。五輪開催に影響が出るのも嫌だったのでしょう。そういう姑息さが見抜かれ、各国が自国民の引き揚げに動いている。もはや日本は国際社会からまったく信頼されていない。いつも通りの“やってる感”演出で乗り切れるとタカをくくっていたのかもしれませんが、公文書と違ってウイルスは覆い隠せなかった。蔓延を認めざるを得なくなって右往左往ですが、初動の失敗と中途半端な対策のせいで、国内での感染が爆発的に広がったのは間違いありません」(本澤二郎氏=前出)
政府の不誠実な態度は、国民も敏感に察知している。共同通信社が15、16日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は41・0%で、1月の前回調査から8・3ポイント下落した。森友学園問題をめぐる決裁文書改ざん発表後の2018年3月の調査で9・4ポイント急落して以来の大幅下落だ。だが、コトここに及んでも、安倍首相の動きは鈍い。土日は基本、自宅でのんびり過ごし、対策会議のためにちょろっと官邸に出てくるだけ。16日の首相動静を見ても、新型コロナウイルス感染症専門家会議はわずか3分間である。
今がシーズンで全国あちこちでマラソン大会が開かれているが、これに対しても政府の見解は出ていない。スタート地点ではランナーや関係者が密集するため、感染が広がる可能性が専門家からも指摘されている。3月1日の東京マラソンには約3万8000人がエントリーしていて、開催中止を求める声も多いが、東京五輪の男子マラソン代表の選考会を兼ねていることを理由に強行されそうだ。
五輪開催を優先する政府が新型肺炎の対策に及び腰では、どこまで感染が広がるか分かったものじゃない。アタマが腐ると……は本当で、役人も国民より官邸の意向を重視してきたから、感染拡大を止められなかった。もはや神頼みの領域だ。
国民に不安を与えるだけの対応しかできないことの責任をどう取るつもりなのか。安倍は国会でヤジを飛ばしている場合ではない。