2020年6月22日月曜日

22- イージス計画停止 敵基地攻撃能力の検討は問題のすり替え(北海道新聞)

 安倍首相は19日の記者会見で、イージス・アショアの計画停止に伴い、「敵基地攻撃能力」の保有について検討する考えを明らかにしました
 敵基地攻撃能力の保有が専守防衛を逸脱するのは自明で、その故に歴代の政権は否定してきたのでした。
 それを口先で「専守防衛の考え方の下で議論する」と言ってみても、それ自体が論理矛盾です。それは歴代の政権が行使できないとしてきた集団的自衛権を、無理矢理の理屈をこじつけて「行使できる」ことにして制定した「戦争法」が、依然として憲法違反であることと一緒です。
 そもそもイージスの計画停止から、何故「敵基地攻撃能力」の保有にまで飛躍しなくてはならないのでしょうか。とにかく、何が起ころうともすべてそれらを違憲の攻撃兵器の保有に結び付けたいという邪心しか感じ取れません

 北海道新聞は、首相官邸主導で進められてきたイージス配備計画の見通しの甘さの責任がいま問われているのであって、問題のすり替えだと述べています。
 先ずは問われている責任を明らかにし、イージスは本当に「当たる」のか、本当に必要なのかから検討をやり直すべきです。新型コロナ対策で大出費を重ねているこの時期に、常に基本であるべき「費用対効果」を疎かにすることなど絶対にあってはならないことです。

 「メガフロート」案が早くも登場したということですがそういう問題ではありません。
 第一「当たらない」ものを海に浮かべてみても何の意味のないし、脆弱な構造物は恰好の標的以外の何ものでもありません。
 時事通信の記事を併せて紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
敵基地攻撃能力 検討は問題すり替えだ
北海道新聞 2020/06/21
 安倍晋三首相がおとといの記者会見で、歴代政権が否定してきた「敵基地攻撃能力」の保有について、検討する考えを明らかにした。
 政府は先週、秋田、山口両県で進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を停止すると発表し、それを受けた措置として言及した。

 首相は今年夏、新たな安全保障戦略を国家安全保障会議(NSC)で徹底議論するとし、敵基地攻撃能力もテーマとして挙げた。
 地上イージスはかねて費用対効果が疑問視されながら、首相官邸主導で進められてきた。
 見通しが甘かった配備計画の責任が問われているのに、問題のすり替えと言うほかない
 歴代政権は敵基地攻撃能力の保有について、憲法上は認められるものの、政策上の判断で保有しないとの立場を取ってきた。
 首相は「専守防衛の考え方の下で議論する」と強調したが、専守防衛に徹すればこそ、これまで保有してこなかったのではないか。
 安倍政権は事実上の「空母」保有など、専守防衛を逸脱しかねない政策を次々と進めている。

 なぜ今方針を転換するのか詳細な説明はない。地上イージスの計画停止に対する自民党などからの批判をそらす意図が透ける。
 まずは計画停止の経緯と責任を明らかにするのが先だろう。
 地上イージスは北朝鮮の弾道ミサイル対処を目的に導入を決めたが、中国やロシアの警戒感も根強い。計画を停止しながら敵基地攻撃能力の保有を検討すれば、その警戒感をあおることにもなろう。

 そもそも地上イージスの導入は、トランプ米政権から米国製の防衛装備品を大量購入するよう迫られる中で決まった。
 運用を含めた費用は5千億円を超す。周辺国が弾道ミサイル技術を向上させる中、巨費投入に見合う効果があるのか、政府は十分な根拠を示してきたとは言えない。
 約1800億円は契約済みで、100億円超を支払ったが、回収できるのか。国民の税である意識が乏しすぎる。これを機に、米側の言い値で取引するその他の防衛装備品も精査するべきだろう。
 今回の計画停止は、迎撃ミサイルから切り離される推進補助装置が、自衛隊の演習場外に落下する恐れがあることを理由にする。
 この危険性は当初から指摘され、防衛省は「安全に運用できる」と約束してきた。それは虚偽だったのか。導入ありきだったことの証左であり、政府の責任は重い。


イージス代替策、検討着手 「メガフロート」案も浮上 政府 
時事通信 2020/06/22
 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の計画停止を受け、政府はミサイル防衛の代替策の検討に着手した。海上基地にイージス・システムを置く「メガフロート」案や、護衛艦にシステムを転用する案などが浮上。今夏中のとりまとめに向け、防衛省や国家安全保障局が対応に当たっている。

「代替案なき停止だ」。政府高官は陸上イージスの計画停止によって、日本の防空に空白が生まれたと認めた。防衛省は既に、陸上イージス専門班に防衛政策局や整備計画局の幹部を加えた検討チームを新設。国家安全保障会議(NSC)による議論の「たたき台」を練る考えだ。
 ただ、浮上した代替案はいずれも問題を抱える。メガフロートは海上に設置されるため、迎撃ミサイルのブースターが民家などに落下する懸念はないが、警備部隊を配置しにくく、テロリストなど外部からの攻撃には脆弱(ぜいじゃく)という欠点がある。
 河野太郎防衛相は、護衛艦にイージス・システムを搭載する案に言及しているが、海上自衛隊の慢性的な乗組員不足が課題となる。

 陸上イージス以前に導入が検討された、移動式の地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」は、落下物の危険が残り、日本全土を防衛するには6基が必要とされる。2基で全土をカバーできた陸上イージス以上に、配備先となる地元との調整のハードルは高い。
 防衛省幹部は、陸上イージスの配備計画停止について「導入を拙速に決めた結果、技術検証が足りなかった」と悔やむ。安倍晋三首相は今夏の議論を踏まえ「方向性を出す」としているが、結論を急げば同じ轍(てつ)を踏む恐れもあり、同省は慎重に検討を進めたい考えだ。