2020年6月27日土曜日

検察の本命は「自民党の交付罪」立件

 河井夫妻の件は、選挙に1億5000万円以上が投じられるという前代未聞の規模でそれ自体にまず圧倒されます。同時にそんなことが実行できたのは背後に自民党と言う巨大政党、そして更にその背後に安倍晋三氏がいたからであるのも明らかです。
 普通であれば前法相を逮捕したとなれば検察の勇断と讃えられますが、上述した構図から見ると河井夫妻はやはり「シッポ」に過ぎません。しかも河井夫妻は、自分たちで策動してこの仕掛けを生み出したのではなく、上部の意図で必死の踊らされた立場であったのでした。
 もしも追及がシッポだけに留まるのであれば、世間はこの事件でも検察に対して大きな失望を味わうことになります。

 いわゆる金銭のばら撒きは、その時期が投票日より3ヶ月以上前の場合には、これまでは「地盤培養のために行う支持拡大の依頼と受け止め、「選挙違反とは見做さない」のが通例だったということです。
 元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は、今回その枠を取り払い選挙違反としたのは異例で、「選挙違反の摘発のあり方に今後、非常に大きな影響を与えるでしょう。公職選挙法の趣旨から、買収罪を適用するべきです」と述べています。
 そして自民党が、案里議員を当選させる目的で「自由に使って良い金」として各方面に配られることを知って資金提供していれば、交付罪が成立すると考えられとして、
「ここまで摘発のハードルを下げてやってきた以上、徹底的にいくところまでいかざるを得ないでしょう。もし腰砕けになって終わったら、検察はおしまいです。このタイミングでの官邸との手打ちはあり得ない」と話しています

 是非そこまで追及して、国民の間にある検察への失望をこの際払拭して欲しいものです。
 AERAと日刊ゲンダイの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
検察の本命は「自民党の交付罪」立件だ 河井夫妻事件で専門家が指摘
AERA dot.  2020/6/26
 前法相と妻の買収疑惑に切り込んだ検察が狙う「本丸」は、権力の中枢・自民党本部を公職選挙法の「交付罪」で立件すること--。元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士がそう指摘する。問われるのは、検察の覚悟だ。
* * *
「ひとつ、よろしく」と現金入りの封筒を差し出す。日本中で行われてきた政治家の「風習」に、検察が切り込んだ。しかも相手は、つい先日まで自分たちの上司だった前法務大臣。政権への忖度を捨てた検察が次に見据えるのは、安倍晋三首相率いる巨大与党、自由民主党側の立件だ。
 通常国会が閉会した翌日の6月18日、東京地検特捜部が前法相で衆院議員の河井克行容疑者(57)と、妻で参院議員の案里容疑者(46)を逮捕した。広島県議だった案里議員を国政に転じさせたのは、克行議員が補佐官を務めた安倍首相や、菅義偉官房長官だった。
 動画配信サイトでは、今も選挙戦の様子が確認できる。安倍首相が「心を一つにすれば、乗り越えられない壁はない!」と声を張り上げれば、二階俊博幹事長も「どうぞ安心して河井案里さんをよろしくお願いします」と、今となってはシャレにもならないことを言う。党が案里議員側に支出した選挙資金は溝手氏の10倍の1億5千万円。安倍首相は、自らの指示で自身の秘書を広島入りさせててこ入れをしたことも認めている。

 その裏側で行われていたとされる河井夫妻の容疑はこうだ。
 克行議員は昨年3月下旬~8月上旬、案里議員の選挙で票の取りまとめを依頼する趣旨で計約2400万円の現金を地元の地方議員ら91人に渡した疑いがある。案里議員は昨年3月下旬~6月中旬、克行議員と共謀して計170万円を5人に渡した疑いがある。夫妻から重複して受け取っていた人物も2人いる。河井夫妻は容疑を認めていないという。朝日新聞などの報道によれば、多くの地元議員らが、現金を受け取ったことを認めている。

 元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は、逮捕容疑となる行為が選挙の3カ月以上前から始まっていたことに注目する。
「従来は、選挙期間やその直前での投票や具体的な選挙運動の対価の供与を買収罪の適用対象にしてきましたが、今回はかなり様子が違っています。時期を考えれば、これまで地盤培養のために行う支持拡大の依頼と受け止められてきた行為を含めているからです。こうしたものを選挙違反の摘発の対象にしているのが異例と言えます」

 そこに今回、手を突っ込んだ意味合いはどこにあるのか。
「選挙や選挙違反の摘発のあり方に今後、非常に大きな影響を与えるでしょう。公職選挙法の趣旨から、買収罪を適用するべきです」
 今後最大の焦点となるのが、買収に使われた金の原資だ。克行議員が一部の町議に「安倍(晋三)さんからです」と現金を渡したこともわかった。前出の郷原氏は一連の金の流れから、自民党側が罪に問われる可能性を指摘する。公職選挙法の「交付罪」の適用があり得るというのだ。
「交付罪とは、供与などの行為が行われるとの認識を持って、資金を交付することです。私自身はかつて検事時代にこの罪で起訴した経験がありますが、今までに事件化された例は大変少ないです。不透明な選挙資金の提供も含めて犯罪になるということを示す意味は非常に大きい。捜査の中で、党本部への家宅捜索も当然、検討の対象に上ってくるでしょう」
 今回の事件は交付罪の構成要件を満たすのか。郷原氏は、具体的な買収先や金額を認識していなくても、案里議員を当選させる目的で「自由に使って良い金」として各方面に配られることを知って資金提供していれば、成立すると考える。
 郷原氏は「ここまで摘発のハードルを下げてやってきた以上、徹底的にいくところまでいかざるを得ないでしょう。もし腰砕けになって終わったら、検察はおしまいです。このタイミングでの官邸との手打ちはあり得ない」と話す。(AERA編集部・小田健司)

※AERA7月6日号では、検察が自民党の立件を目指す背景にある「政権との確執」など、より詳細な記事を掲載している。


河井買収総汚染 自民党本部と安倍事務所のガサ入れが必要
日刊ゲンダイ 2020/06/25
 18日の逮捕以来、検察リークもあるのだろうが、前法相の河井克行容疑者と参院議員の案里容疑者夫妻の金銭授受に関する生々しい話がこれでもかと表に出てくる。
 昨夏の参院選を巡る公職選挙法違反(買収)容疑で、克行は広島県議ら計94人に総額2570万円を提供し、案里への票の取りまとめなどを依頼した疑いが持たれている。案里もこのうち5人への170万円について、克行と共謀した容疑で逮捕された。実に121回に分けてカネを渡していた。克行は現金配布の事実は認めながら、買収の意図はなかったと容疑を否認しているという。だが、買収を裏付ける事実が次々と、なのである。自民党ぐるみの総汚染状態には唖然とするしかない。

 すでに各メディアが94人の内訳や金額の詳細を報じている。それによると河井夫妻がカネを配ったのは、広島県議十数人、広島市議などの市町議員約40人、首長2人、残りは後援会や陣営の関係者だった。1回の提供額は5万~100万円。約20人には複数回カネを渡していたというから驚く。最高額は元県議会議長で当選12回のベテラン県議への計200万円だったという。
 その元議長は24日、報道各社の取材に、200万円の受領を認めた。元議長によれば昨年4月に克行から50万円、同5月に案里から50万円、同6月に克行から100万円を受け取ったという。自民党本部から夫妻への1億5000万円の資金は、同4~6月に1500万~4500万円が複数回に分けて振り込まれている。まさに、党本部のカネが下りてきたタイミングに合わせて、地方議員らにカネを流していたということではないか。

河井夫妻と党本部は一蓮托生
 特捜部と広島地検は、地元での影響力などに応じて、提供回数や金額を変えていたとみている。克行は現金の配布先や金額を記したリストを作っていたというから計画的だ。そして、専門業者に広島の事務所のパソコンデータを削除させていた疑いもある。つまり、自らの犯罪行為を認識していたということだ。
 元議長の他にも、24日には安芸高田市長が60万円、府中町議も30万円など、これまで金銭授受を否定していた人たちが次々と受領を認め出した。もう逃げられないと観念したようにもみえる。
 もらう方もなぜ簡単に受け取ったのか。「トイレで背後からスーツのポケットに差し込まれた」など、克行のカネの渡し方は手慣れたものだ。「違法性を指摘しても渡された」「まあまあと30万円を押し付けられた」などの地元議員の証言も出ている。
 政治家同士の金銭のやりとりの多くは政治資金規正法に基づき「寄付」として記載するのが普通。それには領収書が必要なのに、今回は領収書なし。克行から「領収書は困るからいらない」と言われたという広島市議もいる。
 つまりカネは裏金。それを受け取った地方議員らもそう理解していたということだろう。広島で金権政治が常態化していたことの証左である。

 典型的な選挙違反というのは、案里の秘書が逮捕された事件のように、ウグイス嬢などに法律で定められた金額を超える報酬を支払ったなどというもの。しかし、河井夫妻の容疑は違う。案里のために広く票を集めることを依頼するものだ。それは今回、選挙戦で対決し落選した同じ自民党のベテラン現職・溝手顕正氏から案里へ票を移すことだった。要は、自民党内の身内の票の奪い合いなのだ。そこに党本部から通常の10倍という1億5000万円もの破格のカネ。党ぐるみの材料は揃っている。

 元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏はこう言う。 
「検察は今回、選挙違反のハードルを下げて『買収罪』で河井夫妻を逮捕した。現金を受け取った相手が、『案里氏を当選させる目的で』『自由に使ってよいカネ』との認識で受領したことが立証できれば買収罪の立証は可能です。同様に、党本部が1億5000万円を『案里氏を当選させる目的で』『自由に使ってよいカネ』として供与する資金であることの認識があって提供したとすれば『交付罪』(供与させる目的を持った金銭の交付)に該当する。『買収罪』と同じく『交付罪』のハードルも下げていい。河井夫妻と自民党本部は一蓮托生とみることができるのです」

「票はカネで動く」それが自民党の選挙
 自民党の金権選挙については、別のところからも衝撃証言が飛び出した。新潟県選出の自民党衆院議員だった金子恵美氏が22日にラジオで「私自身も選挙の時に、『お金を配らなければ地方議員の皆さんとか、みんな協力してくれないから、配りなさい』と言われた」と発言したのだ。広島だけじゃない。選挙の際には、全国の自民党でカネが飛び交っていると想像させる話である。
 政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「そうなんだと思いますよ。票はカネで動く。それが長年の自民党の選挙のパターンです。自民党の組織というのは利権でつながり、利権で動いているので、選挙で誰を当選させるのかどうかも、ひたすらカネ、カネ、カネ。地方議員にとってもそれが常識なのです。案里氏が当選した広島の参院選は、現職を叩き落とす選挙でしたから、現職にぶら下がっている人たちを買収しなければならなかった。熾烈を極める選挙戦で、巨額が動いたということでしょう」

 国民もそう疑っているから、共同通信の世論調査で河井夫妻の逮捕について、75%もが「自民党総裁の安倍首相に責任」と答えているのだ。
 現職の溝手氏を落選させることは安倍の意向だった。だから案里の陣営に安倍事務所の秘書が4人も派遣されていた。石破元幹事長はメディアの取材に「1億5000万円もの資金提供は幹事長の一存ではできない」と断言している。幹事長は党ナンバー2だ。つまりその上のトップの「総裁」の判断ということだ。
 河井夫妻が逮捕される前日には、1億5000万円は「党勢拡大のための広報費に充てられた」と説明していた二階幹事長も、突然24日になって「支出したその先がどうなったか詳細を把握していない」と言い出した。幹事長が分からないなら、総裁に聞け、ということか。いよいよ自民党内もガタガタしてきた。

ルビコン川を渡った検察
 党が巨額の選挙資金を融通し、安倍事務所が丸抱えで手伝った前代未聞の破廉恥選挙。1億5000万円のうち8割に当たる1億2000万円は政党交付金だという報道も出ている。国民の血税だ。それが選挙買収に使われた可能性が濃厚なのだから、全容解明は国民にとって重大な関心事であり、“本丸”への斬り込みが不可欠だ。検察はなぜ、党本部や安倍事務所へのガサ入れをしないのか。
「安倍首相の決断なしには、空前絶後の巨額資金が案里氏のために使われることはない。党本部の家宅捜索が絶対に必要です。幹事長室の金庫を調べ、経理局の資料などを押収すれば、政党交付金や国民政治協会(自民党の献金窓口)の資金の流れ、党費の動きなどが分かる。党本部の捜索をするのかどうかで、稲田検事総長をトップとする検察の正体がハッキリします。辞職した黒川氏と同様に安倍政権と取引したのか否か、です」(本澤二郎氏=前出)
 党本部へのガサ入れはあるのか。前出の郷原信郎氏はこうみる。
「過去に例がなく、なかなかそこまではと思いますが、一方で検察は『ルビコン川』を渡ってしまった。これまで自民党本部側が『公選法適用の常識』としてきた『買収罪』の前提を覆し、ハードルを下げて前法相を逮捕したのです。そこまで攻め込んだら、引き返せない。1億5000万円には政党交付金が含まれているので、使途を国民に明らかにすべきと詰め寄られれば、検察もやらざるを得なくなるのではないか」
 でなければ国民は納得しない。河井事件の本質は安倍事件なのである。