安倍首相は何故か経産官僚の今井尚哉補佐官に心酔し、何ごとも彼のアドバイスに忠実に従って政治を行ってきたと言われています(今井氏は陰の総理大臣と言われました)。
しかし昨年、半導体素材などの対韓国輸出規制を始めた辺りから、やること為すことのピント外れが特に目立つようになりました。
コロナ対策は、今井氏に加えてやはり経産官僚の長谷川榮一補佐官と新原浩朗経済産業局長が3人組で立案しているということですが、目玉政策だとして出された「1世帯当たり2枚のマスク支給」は失笑の対象でしかありませんでした。総経費466億円を別のことに投じればそれこそかなりのことが出来たわけで、期せずして3人組の浅はかさが露呈しました。
安倍政権のコロナ対策は無策そのものでした。そもそも3月下旬に至るまで今夏の東京五輪が実現できると踏んでいたこと自体が安倍政権の無能さを示すものでした。そこには昨年末日にコロナ対策本部を立ち上げた台湾政府の叡智もなければ、世界中から賞賛を浴びたコロナ対策を生み出した韓国政府の優秀さとも無縁でした。
政府が組織した専門家会議が時代遅れのメンバーで、「PCR検査は医療崩壊につながるとする一方でクラスター対策を徹底すれば感染拡大が防げる」というようなピント外れの見解しか提示できなかったのも大問題でした。ただし彼らを選出した責任は当然安倍内閣に帰します。
その結果が安倍首相が会見(17日)で、今度の対策として「クラスター対策に磨きをかけてゆく」という発言でした。そんな認識ではとても第2波に対応できるとは思えません。
安倍政権には一刻も早く退場して欲しい。
やや観点は違いますが、ジャーナリストの横田由美子氏の記事「安倍経産内閣の凋落、コロナ失政で塗り変わる霞が関の勢力図」を紹介します。
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安倍「経産」内閣の凋落、コロナ失政で塗り変わる霞が関の勢力図
横田由美子 ダイヤモンドオンライン 2020/06/19
河井克行前法相と案里議員が公職選挙法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。他に黒川弘務元東京高検検事長の賭けマージャン問題、コロナ経済対策の不手際など、安倍政権は強烈な逆風にさらされている。そしてその道ずれとなるのが、秘書官や補佐官を出すなど、政権に深く食い込んできた経済産業省だ。自民党内でポスト安倍政権の動きが活発化するのと同時に、霞が関の勢力図も塗り変わろうとしている。(ジャーナリスト 横田由美子)
ターニングポイントとなった
6.16河井案里秘書有罪判決
第2波、第3波の懸念は消えないが、新型コロナウイルスの感染拡大にようやく落ち着きが見えてきた。
その一方、永田町では、ポスト安倍の時代を見据えた動きが活発化し始め、連動するように霞が関の勢力図も変わり始めている。
6月16日は、後から振り返った時、ひとつのターニングポイントになるかもしれない。
昨年7月の参議院選挙で初当選した河井案里議員の公設秘書が公職選挙法違反(買収)罪に問われていた裁判で、広島地裁の冨田敦史裁判長は、懲役1年6カ月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。
判決によると、公設秘書は、案里議員の夫である河井克行前法相の政策秘書と共謀の上、車上運動員に違法な報酬を払ったとされており、量刑的にも連座制適用の対象となる。夫妻は、自民党に離党届こそ出したものの、議員辞職は否定している。
そして6月18日、東京地検特捜部は河井前法相と案里議員を、公職選挙法違反の買収の疑いで逮捕した。
夫妻の往生際の悪さにはあきれるばかりだが、河井前法相は「安倍総理を支える5人組」と呼ばれるほど政権中枢で存在感を発揮している。このような人物を重用し、法相にまで抜擢したことから、コロナ禍の終息がより鮮明に見えてきた瞬間に、安倍総理に対する批判が今以上に強く噴出することは誰の目にも明らかだ。
敵失をひたすら待つ野党
アフターコロナは政局に
「黒川弘務元東京高検検事長の賭けマージャン問題など、ほかにも問題山積で、本来なら、野党が攻勢を強め、倒閣運動が起きてもおかしくないのが現状です。安倍政権を維持させているのは、皮肉なことに、日本どころか世界中を混乱に陥れているコロナウイルスなのです。おかげで、我が社も追及を免れている部分があるのは否めない。アフターコロナは政局になるでしょう。当然、われわれ財務省も批判の対象になる」
中堅の財務官僚は、苦虫をかみつぶしたような表情で言う。
森友学園を巡る公文書改ざん問題に関係した財務省近畿財務局職員の妻が、「夫は改ざんを強制されて自殺に追い込まれた」とする手記を出し、佐川宣寿元理財局長と国を訴えたことは、平時なら国会が紛糾し、倒閣にも至りかねない大問題だ。しかし、野党の追及がそこまで激しくないのは、「コロナ禍の中、解散総選挙を主張しても日々の生活にあえぐ庶民の批判を浴びるだけ」という計算が働いているからだ。
事実、中川俊男副会長らのクーデターで急転直下、会長選挙が行われることになった日本医師会に対する国民の視線は厳しく、中川氏の背中を押した尾崎治夫東京都医師会会長に対しては、医師会内部よりも、コロナ対策に追われる永田町と霞が関から、「国民の命や生活よりも、会長職の名誉の方が大事なのか。今、トップの交代劇など起こして、医療政策に穴があいたらどう責任をとるつもりなのか」という強い批判の声が上がっている。
永田町の住人の感覚では、野党ならとりあえず今は一致団結する形にし、庶民の生活に直結するコロナ対策の失敗をついて時を待つ――というそろばんをはじいて動いているのだ。
浮き彫りになった
経産3人組のセンスの無さ
これは霞が関も同様だ。
基本的には、政局の動きを予見しながら、後に国民から批判を受けないよう、他省と連携して粛々とコロナ対策に邁進することに集中している。
ただし、そんな中で最もアフターコロナを恐れているのは、経済産業省である。
安倍政権発足以来、かつてないほど「わが世の春」を謳歌してきた経産官僚は、不安を隠さない。
「橋本政権時に経産省が重用されたことを覚えている年代の官僚は、安倍政権の終焉とともに、権力は財務省に戻り、しっぺ返しは相当激しいものになるだろうと懸念していました。しかし、コロナ対策で失態が続いた今、国民全体を敵に回しかねない印象です。国会を見ても、与野党のどこにも味方はいなくなるでしょう」
こう経産省の高官は話し、頭を抱える。
当初こそ、初動の遅れなどで厚生労働省が批判の的にされていたが、コロナ経済対策のあまりのひどさに、立案の中心となっていた経産官僚に対する批判が高まり始めている。各種助成金の振り込み遅延については、「担当部局は不眠不休で働いている」「政府のIT環境を整備させてこなかったのは政治家の責任」と言い訳をし、持続化給付金の民間委託の問題が明らかになると、「ノウハウを持つ会社に発注しただけで、手続き上は何の問題もない」と梶山弘志経産大臣に言い切らせた。
持続化給付金にしても、その他の支援事業にしても、個人情報をかなり詳細に提出しなくてはいけない。正直、会社の代表として持続化給付金を申し込んだ身としては、自分の個人情報も含め、会社のさまざまな情報が、電通という巨大民間企業の顔の見えない社員によって、審査されていたのかと思うと気持ち悪さは払拭できないし、丁寧な説明が必要であると感じる。そう思うのは私だけではないだろう。
「それでも経産省は、消費喚起策である『GO TOキャンペーン』を従来のまま推進するというのです。主導している今井尚哉補佐官、長谷川榮一補佐官、新原浩朗経済産業局長の経産3人組のセンスのなさに、皆、あきれている。今井さんと長谷川さんが、第1次安倍政権の失敗後も総理を支え、第2次政権の幕開けと長期化に多大な貢献をしたことは皆知っていますが、彼ら自身、権限を持ちすぎて、感覚がズレてしまったのでしょう。安倍内閣の終焉は経産内閣の終焉であり、それを招くのもまた、今井さんたちだということです」
こう他省の幹部は、冷ややかに言い放った。
動き出したキーマン二階幹事長
経産省の凋落は避けられない
河井案里議員の政策秘書に有罪判決が下った晩、二階俊博幹事長と麻生太郎副総理兼財務相が赤坂の日本料理屋で会食したニュースが、永田町のみならず、霞が関をも駆け巡った。
二階幹事長の最近の動向はまさに注目の的だ。安倍晋三総理に対し、「総裁4選の期待」を表明した一方で、安倍総理の宿敵でもある石破茂元幹事長に急接近する。都知事再選に意欲を燃やす小池百合子東京都知事とは早々に盟友関係をアピール、中川俊男副会長のクーデターで大荒れに荒れている日本医師会会長選挙では、現職の横倉義武会長を激励した。そして、河井議員に対しては、「政権に何の影響力もない小物」と、切って捨てるコメントをしたのだ。
その二階氏と、自他ともに認める「安倍総理の後見人」の麻生氏が、いったい何を話したのか。
ある経産省幹部は声を潜めて言う。
「志師会会長の二階さんは、経産大臣を経験していますが、公共事業に強い思い入れがあり、国土交通省とのパイプが太い。誰が後継になっても、コロナ禍の失策は、経産省の責にされるだろうし、もともと政権中枢に足場のないに等しい省庁だった我が社は凋落を免れない。だからこそ、今井さんも新原さんも暴走せざるを得ないのかもしれない」
永田町と霞が関では、コロナ終息と時を同じくして安倍政権は終焉を迎えることは既定路線として捉えられており、経産省はその道連れとなることが確実視されている。持続化給付金や『GO TOキャンペーン』に関する経産省のあきれた対応と発言は、同省の断末魔の叫びなのかもしれない。