2020年6月27日土曜日

27- ボルトンの暴露本で絶望的になった拉致問題の解決/日米蜜月もウソ

 ボルトン回顧録には安倍首相が100回も登場するということです。
 そのなかで安倍首相が事ごとに米朝は合意すべきでないとトランプに働きかけ、絶えず南北朝鮮の統一を阻止しようと努めたことが記されているので、韓国内では「文大統領の半島平和外交を執拗に妨害してきたのが日本 安倍首相)として安倍政権への非難が沸騰しています。
 安倍首相の嫌韓・韓国蔑視は周知のことなので、この点に関してはボルトンの著述にウソも誇張もありません。

 回顧録では、トランプが金正恩氏を単なる自己顕示欲満足のための対象としか見ていなかったことも明らかにされました。その点は首脳会談に期するものがあった筈の正恩氏にとってはショックだったと思われます。
 北朝鮮側はまだ反応を見せていませんが、反論するという性質のものでもないので無視するかも知れません。
 いずれにしても、金正恩氏が一番望んでいた米朝合意の足を引っ張ったのが日本だと明らかにされた以上、もはや安倍政権下での日朝首脳会談は望むべくもありません(もともとその気はなかったのでしょうが ・・・)。
 天木直人氏が、ブログ記事「ボルトンの暴露本で絶望的になった拉致問題の解決」を出しました。

 それとは別に日刊ゲンダイが「ボルトン回顧録の衝撃『日米蜜月』どころかカモじゃないか」とする記事を出しました。
 安倍首相は4年前の大統領選直前に有利と見たヒラリー候補とツーショット写真に収まったものの、トランプ氏がまさかの勝利をしたため慌ててトランプタワーを訪れ、ゴルフクラブを贈るなどしました。それ以来トランプに足許を見られる関係になったとしています。
 二人に共通している者は「やってる感」の演出だけで、我々に見えるものは、「親しい間柄」はただ空しく聞こえるだけで、国内では“外交のアベ”を強調する一方で、裏ではひたすらトランプにひれ伏し、不要な兵器を爆買いするミジメな姿です。
 政治評論家森田実は、暴露本によって ~ 永遠の属国化を前提にした安倍首相の振る舞いが世界の多くの人に知られること自体、日本の国益とプライドを損ねています」と述べています。
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ボルトンの暴露本で絶望的になった拉致問題の解決
天木直人のブログ 2020-06-25
 私がボルトンの暴露本で一番関心を持ったのは、安倍政権が米朝首脳会談の合意の足を引っ張ったことが明らかにされたところだ。
 いうまでもなく文在寅大統領の韓国はその逆だ。なんとかして米朝首脳会談の成功に向けて動いた。
 まず南北融和を実現してその勢いで米朝首脳会談の成功につなげようとした。
 金正恩委員長はトランプ大統領と直接取引したかったから、文在寅大統領のそのような仲介を好まなかったが、それでも米朝会談が成功していたらすべてがうまく回ったはずだった。
 結果的に米朝会談がうまくいかず、おまけに文在寅大統領は米韓軍事同盟にも未練を持っていたため、金正恩委員長はぶちきれたのだ。
 だから韓国は、ボルトンの暴露本で、谷内正太郎がボルトンと一緒になってネオコンのようにふるまい、それに安倍首相が従って北朝鮮に対して妥協するなとトランプ大統領にけしかけていたことを暴露本で知って、頭に来たにちがいない
 ここにきて韓国が、日本の世界遺産の取り消しを求めたり、WTO提訴に強硬になり、WTO事務局長選挙に自国民の候補を立てるなど、強硬姿勢に出ているのはその為と思える。
 しかし、韓国が日本に対して怒っても安倍首相としては痛くもかゆくもない。
 日本中が嫌韓一色になっているからだ。

 ところが北朝鮮が怒り出せば安倍首相はたちまちのうちに窮地に陥る。
 いまのところ北朝鮮はこのボルトンの暴露本について何の反応も示していない。
 しかし、そのうち間違いなく激しく安倍首相を罵るだろう。
 金正恩委員長が一番望んでいた米朝首脳会談の足を引っ張ったのが日本だということが暴露本で明らかになった。
 金正恩委員長にとってこれ以上腹立たしい事はない。
 文在寅大統領に対する怒りよりはるかに強く、激しい怒りを金正恩委員長は抱いているに違いない。
 これで拉致問題は解決不能になった。金正恩委員長との無条件の首脳会談は不可能になった。そして、もしトランプ大統領が金正恩委員長と取引して一気に米朝関係が好転すれば、その時こそ安倍首相は完全に仲間外れにされる。
 ボルトンの暴露本で一番苦しい立場に追い込まれるのは安倍首相だと私は書いた理由はそこにある(了)


ボルトン回顧録の衝撃「日米蜜月」どころかカモじゃないか
 日刊ゲンダイ 2020/06/24
(阿修羅より転載)
 何が何でも出版を止めたかったわけだ。米国のボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)が上梓した回顧録。トランプ政権の内幕を詳細につづった“暴露本”を巡り、政権側は「機密が含まれている」とワシントン連邦地裁に出版差し止め命令を求めたが棄却され、予定通り23日(現地時間)に出版された。
 2018年4月に大統領補佐官に就任した強硬派のボルトンは、トランプ大統領との意見対立から昨年9月に解任された。大統領執務室で起きた出来事を振り返った衝撃的な内容は、米国だけにとどまらず世界中に大きな波紋を広げている。
 日本に関する記述にも「ギョッ」とする。592ページに及ぶ回顧録には安倍首相の名前が100回以上も登場多くは、トランプに舐めに舐められ、従うだけの“忠犬”としての姿だ
 とりわけ情けないのは、在日米軍駐留経費の日本側負担「思いやり予算」について。ボルトンは昨年7月に訪日し、谷内正太郎国家安全保障局長(当時)と会談した際、思いやり予算の大幅増額を要求。トランプの意向として、現在の4倍以上にあたる年間80億ドル(約8500億円)の負担を求めたと記した。
 帰国後、トランプはこう指示したという。
「米軍を撤収させると脅せば、非常に強力な交渉上の立場を得られる」
 まるでチンピラのような言い草だ。トランプは北朝鮮のミサイル実験にも言及し、「(日韓両国に)お金を要求する良いタイミングだ」と話したというから、もう言葉も出ない。とことん、同盟軽視の「自分ファースト」大統領である。
 思いやり予算に関するボルトン証言について、安倍政権は「全く承知していない」(菅官房長官)、「政府として要求があったことはない」(河野防衛相)と全面否定。しかし、どちらの言い分を信じるのか迷う人はいないだろう。

この4年、ずっと務めたパシリ役
 ただでさえ、安倍政権は米国の言われるがまま。不要不急な高額兵器を言い値で“爆買い”。事実上の日米FTAでは平然と日本の農業を売り渡す。トランプが来日すれば、国賓待遇で税金を使って盛大にもてなした。今さら法外な思いやり予算を吹っ掛けられても何ら不思議ではない
 ボルトンは米国とイランの緊張激化を受け、トランプが昨年、安倍に仲介を要請した際の内情も明かしている。日本の現職首相のイラン訪問は41年ぶりで、米国とイランの緊張緩和を促す狙いも成果ナシ。そもそもトランプは仲介を要請しながら成功への期待はゼロ。案の定、失敗に終わると、安倍に米農産物の輸入拡大の方がはるかに重要だと訴え、早期の輸入増を迫ったというのだ。
 いやはや、安倍はトランプに完全にカモにされ、パシリ程度にしか見られていないのである。経済アナリストの菊池英博氏はこう指摘する。
「安倍首相は『日米蜜月』を強調しますが、その実態は米国の対日貿易赤字の穴埋めに日本の富を毟られるだけ毟られてきただけ安倍首相には思想も理念もなく、米国の言いなりになれば政権を潰されないとかたくなに信じている。まさに亡国首相です。そもそも在日米軍が日本から土地の提供を受けた上で、守っているのは主に米国です。思いやり予算の増額はあり得ません。安倍首相は4年前の大統領選直前にヒラリー候補とツーショット写真に収まったものの、トランプ氏がまさかの勝利。その負い目からトランプタワーを慌てて訪れ、ゴルフクラブを贈って以来、足元を見られている印象です」
 思いやり予算の増額交渉は11月ごろから本格化する予定だが、この調子だと、安倍は法外な要求を受け入れかねない。

永遠の属国化を前提にヨイショと税金献上
 ボルトンが暴いた米朝首脳会談の実態にも、あきれてしまう。トランプは自身が注目されることに執心し、中身や結果は二の次。歴史的会談は単なる政治的演出に過ぎなかった。
 18年6月にシンガポールで行われた史上初の米朝首脳会談で、トランプは事前に「これは宣伝のためだ」「中身のない合意でも署名する」と発言。ボルトンは「完全な非核化」の実現よりも自らのアピールに関心があったと指摘する。
 19年2月末のハノイで開かれた2回目の会談で、トランプはロシア疑惑を巡る元側近の公聴会からメディアの関心をそらすことに気を取られてばかり。金正恩・朝鮮労働党委員長が寧辺の核施設の廃棄と引き換えに国連制裁解除の提案に固執すると、側近たちに「スモールディール(部分合意)と席を立つのはどちらが大きな記事になるか」と尋ねてきたという。
 昨年6月の3回目もメディアに注目されることが動機とし、ボルトンは「トランプ氏は個人の利益と国益が区別できない」と猛批判。そんな世紀の俗物大統領にすがり、拉致解決を懇願してきたのが安倍その人だ。
 結局、トランプが「席を立つ」ことを選んだ2回目の会談後の昨年4月、安倍は首都ワシントンを訪問。回顧録によると、安倍は交渉決裂の判断に同意し、トランプを「交渉の場外に出ていくことができる唯一の人間だ」と持ち上げていた。必死でトランプをヨイショしながら、国民に黙って巨額のマネーを渡す準備も怠らない。北が非核化した場合、トランプは日韓両国にその対価を分担するよう希望し、日本もその意思を示していたのだ。
 昨年7月、ボルトンは日本と韓国を順に訪問した際を振り返り、「私の考えでは、その時点で日本は北朝鮮に相当な金額の小切手を切る準備ができていた」と明らかにしている。

互いに「やっている感」演出の共犯関係
 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言った。
「散々トランプ大統領をおだて上げ、国民には秘密の小切手を用意しながら、当のトランプ本人は目立ちたがりで、本気で北朝鮮問題を解決するつもりはない。『やっている感』の演出は安倍首相のオハコですが、上には上がいるということ。そんな相手に拉致問題の解決をお願いするとは漫画のような滑稽さですが、本気で解決する気がないのは安倍首相も同じ穴のムジナ。拉致解決をトランプ氏に頼りきっている時点で本気度はうかがえません。つまり、両者は互いに『やっている感』を演出する共犯関係で、安倍首相は被害者家族を振り回しているだけです」
 ボルトン回顧録は、トランプの常軌を逸した人間性を暴くと同時に、日本のトップの裏の顔もえぐり出している。
 国内では“外交のアベ”を強調する一方で、裏ではひたすらトランプにひれ伏し、こっそり巨額の税金献上すら、いとわない。そんなミジメな姿をおくびにも出さない典型的な内弁慶。ボルトン回顧録が世界に訴えるのは、日本国民を愚弄する二枚舌首相の本性でもある。政治評論家の森田実氏が言う。
「トランプ政権の報復を恐れ、日本政府は回顧録の内容を否定せざるを得ませんが、命がけの告発は全て真実と理解すべきです。特に思いやり予算の増額要求について、米国側の当事者が明確に認めたのは大きい。沖縄の世論を無視した辺野古基地建設の強行に加え、法外な税金まで差し出すつもりなのか。いつまで米国の言いなりとなるのか。国民的議論を起こす必要があります。ボルトン氏が安倍首相を『世界のリーダーでトランプ大統領と最も個人的な関係を築いている』と評したのは皮肉な話で、世界で最も尻尾を振っていることの裏返し。永遠の属国化を前提にした安倍首相の振る舞いが世界の多くの人に知られること自体、日本の国益とプライドを損ねています」
 ボルトンの暴露本を機に、沖縄を中心とした倒閣運動のうねりが起こらなければ嘘である。