2020年6月25日木曜日

イージス・アショアのレーダーは使い物にならない

 日本は「イージス・アショア」の導入計画を停止し事実上配備を撤回したので、いまやどうでもいいことになりますが、採用される予定ロッキード社製のレーダー「LMSSR」通称SPY-7)、ミサイル射撃管制能力がないことが分かりました。それなら何のためのレーダーなのかということになります。

 日本は昨年10月末に、このレーダー「LMSSR」2基を約350億円で購入する契約を結んでいます。
 そんなものを売る方も売る方ですが買う方も買う方です。如何にトランプの言うがまま内容をロクに理解しないで超高額のモノを爆買いしているのかが分かります。
 いずれにせよ、迎撃ミサイルシステムとして機能させるためには、射撃管制能力を持つ別システムを組み合わせる必要が生じます(当然さらにコストがかかります)。
 文春オンラインが暴露しました。

 当時防衛装備品取得の最高責任者である防衛装備庁長官だった深山延暁氏去年7月退職)文春の問い合わせに対して、
「射撃管制能力がないって? それは理解に苦しむ。~ LMSSRの採用を決めたときは、今はまだ開発中だけど今後きちんとできるということで決めた。イージスは探知と管制能力が一体でないといけない」
と述べています。それが常識なので、そうなっていなかったことまでトップの責任にするのは酷な話です。
 イージスアショアの購入は安倍官邸が前後の見境なく決めたことなので、後追いで装備の仕様をチェックをする意欲が湧かなかったことは分かるにしても、官僚たるものがそんないい加減なことであってはなりません。
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「防衛省報告書」入手 イージス・アショアのレーダーは使い物にならない
「週刊文春」編集部 文春オンライン 2020/6/24
  週刊文春 2020年7月2日号
 6月15日に突如、河野太郎防衛相が配備計画中止を発表した地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。河野防衛相は、中止の理由を「ミサイルのブースター(推進装置)の落下問題」と説明している。しかし、そもそもイージス・アショアの根幹をなすミサイルの迎撃機能に疑義を呈する報告書が、昨年3月、防衛省の官僚によって作成されていたことが、「週刊文春」の取材でわかった。

「週刊文春」が入手したのは、昨年3月下旬に、防衛官僚が渡米し、ロッキード・マーチン社を視察した際の報告書。A4判2枚にわたるもので、次のように記述されていた。
〈LRDR自体には射撃管制能力は無い〉
 イージス・アショアに採用される予定だったロッキード社製のレーダー「LMSSR」(以下SSRと記す。通称SPY-7)は、LRDRの派生型であり、性能的にほぼ同一とされる。
 海上自衛隊の元海将で、弾道ミサイル防衛にも深く関わってきた伊藤俊幸・金沢工業大学虎ノ門大学院教授が解説する。
射撃管制能力というのは迎撃ミサイルを目標に誘導する能力です。イージス・システムにおけるレーダーには、飛んでくる弾道ミサイルを探知、追跡し、迎撃ミサイルをそこへ誘導して、目標へ衝突させる能力が必要です。通常の軍艦では、レーダーはあくまでも“目”であり、目標へ自らの武器を誘導する“神経”となる射撃管制システムは別にありますが、最新のイージス・システムではそれが一体化しています。例えば、米海軍のイージス艦が搭載予定の米レイセオン社のSPY―6はもちろん射撃管制能力を備えたレーダーです。にわかには信じがたいのですが、もしロッキード社のSSRに本当に射撃管制能力がないのであれば、イージス・システムとして機能させるためには、追加で“神経”となる別システムを組み合わせる必要が生じ、さらにコストがかかる
 イージス・システムが機能しなければ、当然、弾道ミサイルを迎撃することはできない。報告内容が事実なら、イージス・アショアは、弾道ミサイル迎撃が困難だったことになる。
 しかし、防衛省は、報告から7カ月後の昨年10月末、このレーダー「SSR」2基を約350億円で購入する契約を結んでいた。
 防衛省に、視察の日付を特定したうえで情報公開請求を行うと、報告書は存在し、公文書として保存されていた。公文書は、防衛技官2人が、昨年3月25日から6日間の日程でアメリカを訪問、ロッキード社でのLRDRの情報収集及び、米ミサイル防衛局(MDA)との意見交換をしたと記載されている。だが、肝心の報告内容は、すべてが黒塗りされていた。
 小誌が、公文書の黒塗りされていない文字の大きさから、黒塗り部分の文字数を割り出し、入手した報告書の文字数と比較すると大半の部分においては一致していたが、一部で改変されている可能性が高いことがわかった。
 この重要な情報は、防衛省や官邸に報告されたのか。

当時の防衛大臣および関係者を取材すると……
 当時、防衛大臣だった岩屋毅氏、同副大臣だった原田憲治氏、同政務官だった山田宏氏と鈴木貴子氏は、取材に次のように語った。
「担当者の出張は大臣まで報告はなく、内容は承知していない」(岩屋氏)
「そんなのは全然見たことはないし、訪問していたことも聞いていない。ただ、最近になってレイセオンの関係者から、射撃管制能力が(SSRには)ない、と耳にした」(原田氏)
「聞いたことがない。イージス・アショアは決定事項で、レーダーに関して疑問を持たれるような話は一切聞いていない」(山田氏)
「(射撃管制能力の話は)聞いたことがない。報告の存在も知らない」(鈴木氏)

 防衛装備庁の広報・渉外班に尋ねると書面で以下のように答えた。
「職員が同日、同所のロッキード・マーチン社を訪問したのは事実であり、帰国後、当該出張報告書を作成しています。その内容に係ることについては、企業の情報でありお答えできません
 一方、当時、防衛装備品取得の最高責任者である防衛装備庁長官だった深山延暁氏は、小誌の取材にこう証言した。

――ロッキード社のレーダーに射撃管制能力がない、ということが分かり、報告したと。
「射撃管制能力がないって? それは理解に苦しむ。というか、そんなことがあれば契約不履行。SSRの採用を決めたときは、今はまだ開発中だけど新しいシステムだから(今後きちんとできる)ということで決めた。私は去年の7月に辞めているが、そんな話は聞いたことがない。もしそうなら、そんなのは(単なる)レーダーじゃないか。イージスは探知と管制能力が一体でないといけない
 トランプ大統領の要望を受けて、総額4500億円と言われるイージス・アショアの導入に踏み切った安倍政権。それが、本当に日本の国防に資するものだったのか。配備計画中止の本当の理由は、発表された「ブースターの落下問題」だったのか。今後、説明が求められることになりそうだ。

 6月25日(木)発売の「週刊文春」では、ポスト安倍を狙う河野防衛相の突然の発表を巡る混乱、安倍官邸の思惑、イージス・アショアのレーダーの性能に疑問を呈する質問主意書に安倍政権はどう回答していたのか、また1時間にわたって取材に応じた深山前防衛装備庁長官との一問一答や、レーダー選定の「闇」を明かすディープスロートの詳細な証言を6ページにわたって報じている。