2020年6月8日月曜日

蓮池透氏のコメントを無視するメディア 拉致問題無為無策を批判しないメディア

 横田滋さんがめぐみさんに会うことなく亡くなられたことについて、各メディアは大いなる同情をもって大々的に報じました。安倍首相が口にした「断腸の思い」、「申し訳ない思い」などの言葉もこぞって流されましたが、安倍政権の無為無策を糾弾する報道はほとんど見られませんでした。

 植草一秀氏が、日刊スポーツ紙拉致被害者家族の蓮池透さんのコメントを報じたことを取り上げその内容を紹介しました。
 蓮池さんは、「みなさん、いい加減気付いてください。安倍首相は拉致被害者を救出するなどという気はさらさらないのです。この期に及んで『早期』救出とか言っているではありませんか。今こそ、安倍首相責任を取ってくださいと叫ばなくてはなりません」と、かなり手厳しく批判していますが、実際この7年あまりに何一つ進まなかった実態に整合した指摘になっています。
 植草氏は、メディアは御用報道をやめて現実を直視する報道を行うべきだと述べています

 また天木直人氏は、ブログ記事拉致問題に関する無策を批判する声が出て来ない不思議」の中で、メディアは安倍首相の『痛恨の談話』を無批判に垂れ流すだけで、野党も含めて、「小泉、安倍政権の無策、失政を批判する声が全く聞かれない」と指摘し、野党は「安倍政権に対しては、拉致被害者全員の生還を拉致問題解決の大前提とする政策は正しかったのか、それで拉致問題は進展すると本気で思っている」のかを訊くべきであると述べました。
 そして「『拉致被害は、立場は違っても国家がお互いの国民に犠牲を強いて来た不幸な状況の中で起きた不幸な事件である』という共通認識に立って、国交正常化交渉と一体となって包括的に解決するしかない」と提起しています。
 二人のブログを紹介します。
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蓮池透氏コメント脇に追いやる御用メディア
植草一秀の「知られざる真実」 2020年6月 7日
横田滋さんが亡くなられた。心からご冥福をお祈りしたい。
メディアが大きく報じるが、拉致被害者の家族である蓮池透さんのコメントを紹介する記事は脇に追いやられている。
蓮池透さんのコメントを報じた日刊スポーツ紙報道は次のもの。 https://bit.ly/3h4tLwc

北朝鮮による拉致被害者家族連絡会元副代表で、拉致被害者の蓮池薫氏の兄、蓮池透氏(65)が、拉致被害者横田めぐみさん(55)の父、横田滋さんの訃報に触れ「安倍首相責任を取ってください!」と、訴えた。

横田さんが老衰のため亡くなった5日、蓮池氏はツイッターを更新。
「いつか、この日が来るのは分かっていたし、怖かった。滋さんは、公には政治家に対しても、右派的思想家に対しても決して異論を唱えることのないジェントルな人だった」
としのび、「世の中はコロナ禍で拉致問題どころではない状況。収束まで動かないのか?滋さんの心中も不安で一杯だったはず。
言うまでもなく、その前に動いておくべきだった
『40年以上救出を先導』とか『再会の願い叶わず』とか言っている場合ではないのだ」と続けた。

「また『断腸の思い』と繰り返した安倍首相。『申し訳ない』は付け足したが。自分たちの無為無策を棚に上げて、拉致問題が進展しないのは国民の関心が薄れているせいだ、と平気で言う政府」と批判。
「みなさん、いい加減気付いてください。安倍首相は拉致被害者を救出するなどという気はさらさらないのです。この期に及んで『早期』救出とか言っているではありませんか。今こそ、安倍首相責任を取ってください!と叫ばなくてはなりません
と持論を述べた。

「そうでなくては、滋さんのご冥福を祈ることはできません。それができるのは、拉致のおかげで二回も総理になった安倍氏が恩返しをして、めぐみさんの問題が解決したときです。合掌」とした。

記事には「蓮池透氏が持論「安倍首相責任を…と叫ばなくては」のタイトルが付せられた。
蓮池透氏のコメントを掲載したことは評価できるが、「持論」との表現には「特殊な意見」との意味が込められている。
メディア情報を支配しているのは、安倍首相の「断腸の思い」、「申し訳ない思い」などの言葉
タレントの「安倍さんは、全力は尽くしているでしょうけど、何の答えが出てこないことが残念です」などの言葉が報じられる。

客観的な事実として、蓮池氏のコメントが正鵠を射ている。
口先だけで「断腸の思い」や「申し訳ない思い」などと発言しても何の意味もない。
不祥事で閣僚が次々に辞任しても「任命責任は私にある」とだけ発言して、何の責任も取らない。
「断腸の思い」も「申し訳ない思い」もまったく感じられない。おそらく、そのような思いを持っていないのだろう。
記者会見にしても、自分の言葉で話をしない。自分の言葉で話すことができないのだと感じられる。官僚が用意した原稿を読むだけ。国会の質疑でも、官僚が用意した原稿を読み上げるだけ。

記者会見で原稿を読まずに自分の言葉で話すと、しどろもどろで十分に話すことができない。
政治家にとって大事なのは言葉だ。言葉の重みをどれほど重要に感じているのか。
言葉の重みによって話し手の思いが聞き手に伝わる。
2012年12月に「私の政権で拉致問題を解決する」と豪語したのは誰だったか。
これから7年半の時間が経過した。
米ロ中韓日の五ヵ国トップで北朝鮮の金正恩委員長と直接会話の機会を持つことができずにいるのは安倍首相ただ一人である。
この状況で拉致問題を解決できるわけがない。
メディアは御用報道をやめて、現実を直視する報道を行うべきだ。
(以下は有料ブログのため非公開)


拉致問題に関する無策を批判する声が出て来ない不思議
天木直人のブログ 2020-06-06
 拉致被害者を代表する横田滋さんが亡くなった。
 その訃報に接して私がまっさきに関心を持ったのは、果たしてメディアが小泉、安倍政権の無策、失政をどう批判するかだった。
 そして、予想した通り、どの報道も一切の批判がない
 あるのは、残念だ、無念だ、というものばかりだ。
 安倍首相の痛恨の談話すら、無批判に垂れ流している。
 まるで、北朝鮮というどうしようもない相手が悪すぎた、誰がやっても解決出来なかった、 そう言わんばかりだ。
 権力に忖度するしかなくなった堕落したメディアが安倍政権を批判しないのは仕方がない。
 しかし、安倍政権に批判的な野党からさえも、批判の声がまるで聞かれないのはどうしたことか。
 拉致などなかった、などと言って北朝鮮を擁護した左翼政治家たちが沈黙するのはわかる。
 しかし、そうでないまともな野党政治家はたくさんいるはずだ。

 少なくとも次の二つの質問を、横田滋氏を追悼する来週の国会で野党は行うべきだ。
 なぜ小泉政権は、拉致問題と国交正常化を同時に解決しようとした正しい平壌宣言を貫徹しようとしなかったのか。
 北朝鮮の核開発を許さなかった米国の圧力で断念したのではなかったのか。
 自国民の救済よりも対米従属を優先させたのではなかったか。
 いまこそ小泉元首相を国会に招致して国民の前で説明させるよう、野党は安倍政権に迫るべきだ。
 そして安倍政権に対しては、拉致被害者全員の生還を拉致問題解決の大前提とする政策は正しかったのか、その方針は今後も一歩も譲らないのか、それで拉致問題は進展すると本気で思っているのか

 安倍政権は拉致被害者の消息についてすでに知らされているにもかかわらず、国民にそれを隠し続け、自らの強硬姿勢を貫くパフォーマンスに利用して来ただけではないのか、それは拉致被害者に対する裏切りではないのか。
 そう野党は来週から始まる国会で安倍首相に質問しなくてはいけない。
 野党もまた拉致問題解決に対する本気度が試されているのである(了)


拉致問題の正しい解決策を誰も提示できない日本の絶望
天木直人のブログ 2020-06-07
 横田滋さんの死をめぐるその後の報道を注視してきたが、これでは拉致問題は解決しないと思った。
 同情を誘う感傷的な報道ばかりが目につき、解決するためにはどうすればいいかという具体的な政策提言は何一つ見られない。
 右翼はますます北朝鮮に対して強硬になり、左翼は安倍外交の無策をあげつらうだけだ。
 どちらも解決策にはなり得ない。

 真の解決策とは何か。
 それは、日本と北朝鮮との関係はいまだ正常化されていないという認識に基づいた解決策だ。
 つまり、拉致被害者は、立場は違っても、国家がお互いの国民に犠牲を強いて来た不幸な状況の中で起きた、不幸な事件である、という共通認識に立って、国交正常化交渉と一体となって包括的に解決するしかないということだ。
 そのためには、北朝鮮の核と切り離した、日本と北朝鮮の二国間の謝罪と和解の交渉にして仕切り直しすべきなのだ。
 国内世論に迎合することなく、対米従属から自立した、日本独自の対北朝鮮外交を始めるしかない。
 誰かがそのことを言い出さなければいけない時である(了)