2020年6月6日土曜日

「2日で1食 一家心中を考えた人も」 コロナ禍で解雇された女性たち

 河井案里参院議員の立候補時に1億5000万円もの法外な金が流れたのが安倍首相の意向に拠るものであることは、いまや公然の秘密ならぬ「事実」です。その原資に政党交付金が含まれている可能性は大で、そうであれば税金の私物化です。
 これまでも「税金をポケットマネーのように勘違いして好き勝手に扱ってきたのが安倍首相で、生活苦に喘ぐ国民を横目に海外で気前よくバラまいたりもしてきました」(本澤二郎氏)。安倍首相はもはや税金とポケットマネーの見境いがつかなくなっているようです。

 その一方で、コロナ対策費である「持続化給付金」を巡っては、電通やパソナが巨額の税金を中抜きしている疑いが明らかになり、「コロナ禍で多くの国民が生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされているのに、この災害時にも利権重視で仲間内に税金を横流しし、かすめ取ろうとする人たちが政権を牛耳っていると思うと、絶望的な気分になります(山田厚俊氏)
 それがここにきて「Go Toキャンペーン」では、3000億円という目もくらむような額の「給付事業費」(事務手数料)を同じ電通パソナなどがモノにしようとしていることが明らかになりました。
 コロナ対策費は勿論天から降ってくるものではなく全て国民が負担するものです。そんなデタラメは到底許されません。

 多くの国民にはいまだに10万円が届かない人たちも沢山いるし、持続化給付金に至っては申請して受理の連絡が来てから2ヶ月間も届かない人までいます。
 多くの人たちが生きるか死ぬかの瀬戸際のなかでも、もっとも困窮を極めているのは、シングルマザーや非正規労働者です。
週刊女性PRIME」がコロナ禍で解雇された女性たちの窮状を報じました。
 安定した収入が約束されている政治家や官僚、コロナ禍の特別予算で大儲けを企む一部大企業主とはあまりの違いです。(文中の太字強調は原文に拠っています)
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2日で1食、一家心中を考えた人も──

「コロナ解雇」された女性たちの悲痛告白

週刊女性PRIME  2020/06/05
「自分がコロナに感染したらどうしよう、コロナにかかったら最後だなと思っています。倒れたら収入がなくなります。精神的にうつになってもいけないと今も気を張っています。私が病んだら、子どもたちを守れないからです」
 新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)する直前、今年2月に離婚したシングルマザーの高橋裕子さん(仮名、30代)は、とにかく感染しないことを最優先に非常事態を生き抜いてきた。

生活を脅かされるシングルマザー

 5月末、緊急事態宣言の全面解除を受け安倍晋三首相は「感染リスクをコントロールしながら、段階的に社会経済活動のレベルを引き上げる」と、経済活動の再始動に舵を切り始めた。
 しかし、自粛の要請で商業施設や飲食店などが休業を余儀なくされた4月から5月にかけて、日本各地で経済活動は停滞し、国民が打撃を受けている。
 アパレル大手『レナウン』は経営破綻に追い込まれ、大手旅行会社『HIS』は夏のボーナスを支給しないことを決定。コロナ不況がじわりじわりと広がり、非正規労働者が4月に、97万人減少していたことも判明。
 踏み止まっている人も6月いっぱいでの「雇い止め」が懸念される中、シングルマザーも生活を脅かされる日々を送っている。
 NPO法人『しんぐるまざあず・ふぉーらむ』には現在、メールや電話による相談が、1日20~30件あるという。同会の小森雅子さんは、
「相談に来られる方の特徴としては、経済的にお困りの方が多いです。ここ1、2か月は何とかなるけど、その後に不安を持っている人が多い。子どもが休校になり、家で面倒を見るために仕事に行けないという方がたくさんいます」
 と現状を伝え、生活の一端を次のように明かす。
「切り詰めるところは食費しかないので、子どもには食べさせますが、自分が1日に1食だけ、なかには2日に1回しか食べませんとおっしゃるお母さんもいます。
 健康を害するレベルの切り詰め方で、体重が4キロ減りましたという方もいます。肉体的精神的にも追い込まれていますが、過去に役所に相談した際に、何の保障も得られなかったこともあり、どうせ助けを求めてもダメだろうと、あきらめている方は大勢います」
 先進国で最悪のレベルと指摘されていた、日本におけるひとり親家庭の相対的貧困率が、ここにきてシングルマザーをいっそう苦しめている。

コロナ禍に乗じた使い捨てが横行

 労働トラブルに悩んでいる人の駆け込み寺として機能しているNPO法人『労働相談カフェ東京』の横川高幸理事長は、
「もともとの生活ベースが厳しい方にとっては、今回のコロナ騒動は致命的な出来事だと思います」
 と指摘し、コロナだから解雇もしかたないんだ、という従業員の生活を守る意識の低い経営者による安易な解雇の風潮に釘を刺す。
シフト制で働いているがシフトを入れず『雇い止め』にして解雇という責任を曖昧にするケースが増えています。
 さらに正社員のシングルマザーも追い込まれています。子どもが休校になり面倒をみることになると“君には仕事を任せられない”というケースがありました。
 こういう場合は、『小学校休業等対応助成金』(子どもの世話を行うことが必要になった労働者に有休を与えると、事業者が助成金を受ける対象になる制度)があり、事業者は助成を受けられますが、手続きが面倒でやりたがらない。このシングルマザーは申請をしてもらえませんでした」
 5月中旬、飲食店の事務の仕事を即時解雇になったという20代のシングルマザー・田所美佐子さん(仮名)は、会社の対応に怒り心頭だ。
「緊急事態宣言が解除になってもお店を開けるかどうかわからない、急きょ人員を減らす、という説明でした。その後の保障は何もありません」
 と政府が設定した生活を支えるための支援を活用することさえもしなかったという。
 コロナ禍に乗じた使い捨てに田所さんは、
「私と同時期にパートの妊婦の方も解雇になりました。もうすぐ産休に入るというので、切りやすいと解雇になったんです。弱い立場の人を標的にしていることに本当に腹が立ちます」
 現在、田所さんは新たなパートの仕事を見つけ、シール張りの内職と兼業で子どもを支えている。

正規雇用でも安泰ではない

 パートやアルバイトにとどまらず、正社員にもしわ寄せが。
 入社2年目で解雇されたという池上葉子さん(仮名、20代)は、
「私は仕事が好きだったので、生きる目標を失いました」
 とがっかり肩を落とす。都内の人材関連の広告代理店が職場だったが、
「3月からテレワークが始まり、4月から休業で、4月末に、5月からもこの状態が継続するという連絡が来ました」
 ところが5月1日、国際的に労働者の祭典の日であるメーデーに、
「メールで解雇通知を受け取りました。ほとんどの社員が一斉に解雇されました」
 と池上さん。
「売り上げが当初の20%くらいになってしまって、会社の存続のためには人材を削るしかないという判断になったとのことでした。突然だったので焦りました。
 貯蓄が80万円くらいありますが、学生の妹と住んでいて、節約しても4か月くらいしかもたないと思います」
 新卒で入ったので、退職金はないという。
「失業保険の手続きはしました。今度、『住居確保給付金』(表参照)の申請に行きます。妹はバイトをしていましたが、この春に仕事がなくなってしまいました。最近は、食事の回数を減らしたりして節約しています」(池上さん)
 現在、次の仕事を探しているが、再就職もままならない状態が続く。
「実家の家族には、解雇になったことは言っていません。心配かけたくないので、今もずっとテレワークだと伝えています。転職した後に報告するつもりです。
 次は、どんな状況でもつぶれない安定した会社で働きたいですね」
 未知のウイルスが原因とはいえ、就職2年目で直面するにはむごい現実だ。
 池上さんは、
「『緊急小口資金』(表参照)は、返さなければいけないお金なので、あまり借りたくない気持ちがあります」
 と躊躇(ちゅうちょ)しているが、あらゆる公的支援を利用してでも、コロナ禍を生き延びることが先決だ。

一家心中を考えている事例が全国で何例も

 この春、立ち上げた政策提言組織『生存のためのコロナ対策ネットワーク』の共同代表を務める社会福祉士の藤田孝典さんは、次のように手順を示す。
「家賃の支払いが難しい場合は『住居確保給付金』か『緊急小口資金』の特例貸し付け、それでも厳しい方は『生活保護制度』の利用を促します。住居確保給付金は最低3か月、最大9か月の間、家賃を給付してくれるので、比較的使い勝手がいい。
 自治体の福祉課に行けば、自立相談窓口を紹介してくれるはずです。ただ、窓口が混んでいるので、支給まで時間がかかります。
 緊急小口資金の特例貸し付けは、最大20万円まで無利子無担保、保証人もなくて貸し付けますよという制度です。窓口は社会福祉協議会です」(下の表参照)
 金銭的な問題は、さまざまな支援制度が活用できるが、新型コロナウイルスは生活を壊すと同時に、生活者の心を壊している。
 自治体や国も、精神保健福祉センターなどで悩み相談を受け付けたり、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』で情報提供や健康相談を受け付けたりなどしている。 
 しかし心の問題は、前出・藤田さんのところにも持ち込まれるという。
「一家心中を考えている事例がありました。それも全国から何例もです。
 あるケースは、もともと、うつ病があって死にたいという気持ちが出てしまうお母さんだったんですが、これまで何とか踏ん張ってきたところ、中学生になる娘さんとケンカになってしまった。
 娘さんも多感な時期なので、何で母子家庭になったんだと責めてしまう。感染拡大しないためにずっと一緒に家にいるので、ケンカが絶えなくなる。お母さんも仕事がなく、両者ともうつうつとしてしまって、このままこの状況が続いたら娘に手をかけてしまうかもしれない、という相談でした」
 いつも以上に家族が密接することで、適度な距離を保てずに摩擦が生じることが増えている。
「心の悩みでいちばん重要なことは、話を聞いてあげることです。
『いのちの電話』とか『寄り添いホットライン』などといったサービスを活用して、まずは死にたくなるほどつらいという話を誰かに打ち明けて和らげてほしい。
 ただ、それらを運営するボランティア団体は予算が少なく、疲弊しています。コロナの問題の前から団体の高齢化は進んでいますし、これを機に見つめ直す必要があると思います」 
 前出・藤田さんはそのように提言する。

辞めてくれるのを期待する経営者のずるさ

 労働組合などに寄せられる解雇や雇い止めの問題。社会的支援を誰しもが利用できる権利があるが、それさえも頼れない、無責任きわまりないケースもある。
 接骨院でパート勤務していた50代の山瀬智子さん(仮名)は、5月25日に解雇らしいことを伝えられた。
接骨院は濃厚接触になり危険だから、完全予約制にして(院長)ひとりでやっていく。みなさん、それぞれお仕事を探してください、と言われたのですが、雇用調整助成金の申請も『うちでは難しくてできません』と拒まれました。解雇なんですか、と聞いても、はっきり言わない。
 休業補償もしないで、なんとなく辞めてくれるのを期待するそのずるさが許せないんです。
 5月2日に、緊急事態宣言が解除されないので、このまま自宅待機をお願いします、と言われていたんです。その時点で、保障もできないから解雇です、と言われたほうがよかった。なんとなく期待をもって待ってしまったので、余計にショックでした」
 なじみの患者さんに別れの挨拶もできぬまま、2度と職場に戻ることはできなくなってしまった。
 前出・『労働相談カフェ東京』の横川理事長は、
「大企業の方の相談は少数です。大企業は解雇するにしても、ちゃんと退職の募集をするなど手続きを踏んでいて、余力のあるうちにいい条件で辞めてもらったり、解雇を回避する努力をしている。
 ところが、中小企業は手続きなんか完全に無視で、突然解雇されるなんてこともあります。それも巧妙に、アルバイトになるか辞めるか二者択一を迫ったり、地方に転勤するか辞めるかを選ばせたり、やり方がひどい。この人は訴えてこないと思われてしまう人は損をさせられている印象を受けます
 と、泣き寝入りにならない姿勢の大切さを訴える。
 経営努力を放棄して従業員を使い捨てにする“コロナ解雇”をされないためにも、公的な支援制度や相談窓口の存在などに普段から気を配っておくしかない。
説明している。【山下貴史、工藤昭久】