米国内外の人権団体や平和団体など113組織は連名でバイデン大統領に書簡を送り、歴代政権がテロとのたたかいを口実に世界各地で続けてきた無人機攻撃をやめるよう求めました。米同時多発テロから20年の今年こそが「戦争中心のやり方を捨て去る好機だ」と強調しています。
書簡は無人機攻撃について「秘密裏に行われる違法殺人」だと批判。標的誤認による殺害や民間人死傷の責任も取っていないと非難しました。
ベトナム戦争からアフガン戦争に至る戦争の連続の中で米国民間に厭戦気分が蔓延する中で、オバマ政権は国際的に非難が沸き起こる中で、無人機攻撃を大々的に採用しました。
それがトランプ政権を経てバイデン政権下でも継続されているわけです。
国連事務総長は、この間繰り返し無人機による爆撃や攻撃が違法であることを伝えてきました。
軍人ではないCIA職員が米国本土にいながら、無人機が送ってくる画像を見ながらミサイルの発射ボタンを押しているというのが実態です。
古いデータですが、英国のジャーナリスト団体の集計によると、米国は2004年以降10年間で、パキスタン領内で360回以上の無人機攻撃を実施し、2500人~3600人を殺害し、そのうち分かっているだけで400~800人が民間人でした。
しんぶん赤旗が取り上げました。
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それとは別に櫻井ジャーナルは、「ウクライナから露国を攻撃するよう求められている米国に対し、露国が強い姿勢」とする記事を出しました。これはいわばバイデンの旧悪をバラすもので、かつてオバマ政権の副大統領時代に、ウクライナで起こした不祥事を強権をもって隠蔽した借りを返すことを、いまウクライナから求められているというものです。
それはともかくとしていま中東の黒海では、日本も参加する形で米英を中心とする勢力が盛んにロシアを挑発している実態が分かります。
櫻井ジャーナルの記事を併せて紹介します。
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無人機攻撃の停止を 米大統領に書簡 米内外113団体
「戦争中心のやり方捨てる好機」
しんぶん赤旗 2021年7月5日
【ワシントン=島田峰隆】米国内外の人権団体や平和団体など113組織はこのほど、バイデン米大統領に連名書簡を送り、歴代政権がテロとのたたかいを口実に世界各地で続けてきた無人機攻撃をやめるよう求めました。米同時多発テロから20年の今年こそが「戦争中心のやり方を捨て去る好機だ」と強調しています。
書簡は6月30日付。「全米市民自由連合」(ACLU)など米国の団体のほか、アフガニスタン、イエメン、ソマリアなど無人機攻撃の被害を受けている国々の団体も名を連ねました。
書簡は無人機攻撃について「秘密裏に行われる超法規的殺人」だと批判。標的誤認による殺害や民間人死傷の責任も取っていないと非難しました。
また無人機攻撃は戦争や紛争をさらに招くだけでなく、米国内でも関与した帰還兵の自殺などの悲劇をもたらしているとしました。
特に無人機攻撃の被害がイスラム教徒や黒人に集中していることを指摘。バイデン氏は人種差別撤廃や人権中心の外交を掲げているとし、その観点からも無人機攻撃の停止は「避けられない課題」だとしました。
バイデン氏が副大統領を務めたオバマ元政権は、対テロ戦争で無人機の活用を強化。民間人被害が後を絶たず国際的な批判が高まったことから、政権2期目には攻撃基準を若干厳しくしました。トランプ前政権は基準を緩和。バイデン政権は基準の見直しに触れていますが、攻撃そのものをやめる方針は示していません。
ウクライナから露国を攻撃するよう求められている米国に対し、露国が強い姿勢
櫻井ジャーナル 2021.07.05
アメリカ軍を中心とする軍事演習「シー・ブリーズ」が6月28日から7月10日にかけて黒海で実施されている。参加している兵員は約4000人、艦船は40隻、航空機は30機で、その中には日本も含まれている。
その直前、6月23日にイギリス海軍の駆逐艦「ディフェンダー」がロシアの設定している領海を侵犯、クリミアのセバストポリへ接近した。そこでロシアの警備艇は警告のために発砲、それでも進路を変えなかったことからSu-24戦術爆撃機が4発のOFAB-250爆弾を艦船の前方に投下している。
ロシア政府の広報官、ドミトリー・ペスコフはイギリスでなく「海外の主要パートナー」、つまりアメリカが領海侵犯を計画したと個人的に考えているとした上で、同じことが行われたなら沈めると警告した。
本ブログでも繰り返し書いてきたが、2014年にウクライナでネオ・ナチを中心とする集団によるクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領が排除されたが、この政権転覆に反対するクリミア市民は住民投票を実施した。この投票には80%以上の住民が参加、その95%以上がロシアへの加盟に賛成している。そうした住民の意思を西側の政府や有力メディアは無視、クリミアをロシア領だと認めていない。イギリスの駆逐艦がクリミアの軍港に近づいて何が悪いということだろう。
Su-24戦術爆撃機による爆弾投下は想定外だった可能性があるが、ロシア海軍の黒海艦隊は黒海で航空機によるミサイルや爆弾による対艦攻撃の訓練を実施してアメリカ側を牽制している。Su-30SM戦闘機、Su-24M戦闘爆撃機、Su-34戦闘爆撃機、Su-27戦闘機、さらにBe-12哨戒飛行艇が参加したようだ。
こうした好戦的な政策を進めているジョー・バイデンは2020年の大統領選挙で民主党の候補者選びから脱落したように見えた時期がある。バラク・オバマ政権で副大統領をバイデンは務めていたが、その際、2014年にウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを同政権は成功させた。現場で指揮していたのは国務次官補を務めていたビクトリア・ヌランド、ホワイトハウスにおける指揮官はバイデンだった。
クーデター後、2014年6月からウクライナの大統領を名乗ったペトロ・ポロシェンコは、ウィキリークスが公表したアメリカ政府の2006年4月28日付け公電によると、アメリカ政府へ情報を提供してきた人物。欧米の支配者を黒幕とする「オレンジ革命」で登場した銀行員あがりのビクトル・ユシチェンコと親しかったことでも知られている。
クーデター後、汚職の捜査対象になったウクライナの天然ガス会社ブリスマ・ホールディングス(本社はキプロス)の重役にバイデン副大統領の息子、ハンターが就任。捜査に対する牽制が目的だったと見られている。
ブリスマの汚職捜査ではバイデン親子も対象になるが、検事総長だったビクトル・ショキンによると、数カ月にわたってバイデン副大統領から捜査を止めるように圧力がかかったという。
FOXニュースのジョン・ソロモンによると、2015年終わりから16年初めにかけてバイデンは検事総長を解任するようウクライナ側に圧力をかけていたと6名ほどのウクライナの高官が語っている。ウクライナの議員、アンドリー・デルカチによると、バイデンはブリスマからロビー会社を介して90万ドルを受け取ったという。
バイデン自身、2018年1月に開かれたCFR(外交問題評議会)のイベントの中で、検事総長を解任する決断に6時間だけ与えたと自慢していたが、ショキンによると、ポロシェンコ大統領から捜査を止めるように命令され、最終的には解任されたのだという。
結局、ポロシェンコ時代にこの事件は水面下へ沈んだが、2019年5月に大統領がポロシェンコからウォロディミル・ゼレンスキーへ交代して状況が変化する。捜査が再開されたのだ。
ドナルド・トランプは2019年7月にゼレンスキーと電話で会談、その際にバイデン自身がCFRで話したことを話題にした。それだけのことなのだが、それをトランプがゼレンスキーに対し、ハンター・バイデンについて捜査するように求めたのだとアメリカ下院情報委員会へ2019年8月に「内部告発」した人物がいる。
その告発者はエリック・チャラメラなるCIAの分析官。民主党の支持者で、2015年の夏からNSC(国家安全保障会議)でスーザン・ライス国家安全保障補佐官の下で働き、バイデン副大統領やジョン・ブレナンCIA長官の下でも働いていた。民主党やアメリカの有力メディアはバイデンの圧力はショキンが汚職捜査を妨害していたからだと主張しているが、これは「お話」の次元から抜け出ていない。ショキンは宣誓供述書を提出している。
その後、ブリスマの事件は有耶無耶になり、バイデンは大統領に就任した。バイデン政権に貸しを作ったウクライナはアメリカにロシアを攻撃するよう求めている。バイデンは厳しい状況に陥っていると言えるだろう。