2016年6月14日火曜日

14- 「リーマン級危機」発言はアベノミクスの失敗を隠すため

 安倍首相は消費税増税を延期するにあたって、意地でもアベノミクスが失敗したからとは言いたくなかったので、「アベノミクスは成功しているが、世界経済はリーマンショックの前夜に酷似した状況にある」(から)という理屈を作って、サミットの直前に各国を回ったときにもそれへの同調を求めたということです。
 しかし各国の経済はそれなりに堅調だったのでそれは受け入れられず、現実にサミットでも合意は得られませんでした。
 そこで次に、「中国をはじめ新興諸国の経済に陰りがあるから、その危機打開するために消費税増税延期することで世界景気浮揚に協力する」という理屈をつけて、何とか目的を達することができました。
 しかし、そのフェアでない態度は当然識者から批判されました。
 
 現代ビジネスが、安倍首相と官邸支配している経産官僚を痛烈に批判しました。
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安倍総理「アベノミクス失敗」のお粗末な言い訳
「リーマン級の危機」発言で新たな暴走がはじまった 経産官僚は経済を知らない?
現代ビジネス 「賢者の知恵」 2016年06月11日  
予め用意されていた逃げ道
消費増税延期の舞台裏から、安倍晋三政権の究極の暴走メカニズムが見えて来た。
アベノミクスの効果が一向に表れず、経済の主役である消費が停滞するという状況下だから、消費増税が無理なのは誰でもわかる。しかし、安倍政権にとって、物事はそう簡単ではない。
'14年11月に消費増税の延期を発表した際に、安倍総理は、増税の「再延期はない!」と断言し、しかも、アベノミクスで増税できる環境を作ると宣言した。今、単純に増税延期と決めると、「嘘つき!」と言われ、「アベノミクスは失敗だった」という烙印を押されてしまう
 
失敗した時は謝って過ちを正すのが世の常識だが、永田町や霞が関での常識は「他人のせいにする」ことだ。
そこで、「アベノミクスは成功しているが、世界経済は危機にある。この危機打開のために増税延期によって世界景気浮揚に協力する」という理屈が考案された。主導したのは経済産業省から来ている今井尚哉総理秘書官と経産官僚たちだ。
元々、安倍総理は、こういう時のために、「リーマン・ショックや東日本大震災並みの危機」が起きたら延期するという発言をすることで逃げ道を用意していたので、「リーマン級の危機」がキーワードになった。
しかし、実際には、世界経済は、中国バブルの後始末や資源に頼る新興国経済の停滞などの不安はあるものの、「リーマン級の危機」と言うには無理がある。
それでも経産官僚達は、サミットで「リーマン級の危機」を各国首脳に訴えるための資料を作成し、安倍総理にそれを説明させてしまった。首脳たちは、「馬鹿じゃない?」と思っただろう
 
経産官僚は「経済音痴」
首脳宣言では、安倍総理の面子のために、「新たな危機に陥ることを回避する」という文言が入ったが、「リーマン」の言葉はおろか、「現状が危機だ」ということさえ否定された。
それでも、厚顔無恥、いや、「無知」の安倍総理は、「リーマン・ショック」という単語を連呼し、世界経済危機を何とか国内にアピールしようとした。
もちろん、各国メディアはこの顛末を強烈に批判し、安倍総理の思惑は完全にはずれた
 
なぜ、こんなお粗末なことが起きたのか。それは、官邸が経産官僚に支配されているからだ。
意外かも知れないが、筆者の経験では、経産官僚の経済に関する見識は極めて低い。「経済音痴」だが威勢のよさだけで生きているというのが実態である。
さらに驚くかも知れないが、これだけの失態を演じても、彼らは意に介さない。厚顔無恥ぶりでは、財務官僚と並ぶ双璧、いや、それ以上だろう。
 
今回の騒動で見えてきたのは、官邸が完全に経産省に支配され、内閣府や財務省は完全に「蚊帳の外」状態だということだ。
そして、元々勉強不足な上に安倍政権に完全に押さえ込まれているマスコミも、形ばかりの批判が精一杯だ。
その結果、経産官僚がその途方もない無知により決定的な間違いを犯し、驚くほど傲慢であるため、それが正されなくてもそのまま放置されてしまう。
「安倍政権、無知と傲慢の暴走」。これこそ今の政治状況をもっとも端的に表すフレーズではないだろうか。
『週刊現代』2016年6月18日号より