2016年6月20日月曜日

アベノミクスの失敗はあまりにも明らか

 安倍首相と自民党は、アベノミクスはうまくいっているが、それにもかかわらず未だ目標には達していないという言い方をします。
 アベノミクスが演出した円安=株高は、富裕層と大企業には「直ちに」この上もない利益をもたらしましたが、一般国民は逆に収入が落ちて貧しくなりました。富裕層はまさに秒速で巨額の利益を懐にしましたが、3年経っても一般国民には何のメリットも及ぼさなかったわけです。
 それは利益は富裕層や大企業に「独占された」ということであって、それが国民に回るという仕組みなどもともと何もなかったということです。それなのにこの期に及んでも、まだそのうち国民にメリットが回るかのような言い方をしているのは、安倍首相が常用している政治手法「隠し、歪める、嘘をつく」という「まやかしの顕れ」に他なりません。
 
 年明け以降は円高=株安基調に転じたので、アベノミクスの唯一の成果もなくなりました。それどころか株安は今後もっともっと加速される可能性が高いので、株の買い支えに投じられた巨額の年金積立金もこの先どうなるか、何十兆円を失うことになるのか分かりません。アベノミクスの破綻は余りにも明らかです。
 
 それにもかかわらず参院選を切り抜けようとばかりに、安倍首相はアベノミクスが成果を上げているという虚偽の説明に余念がありません
※   6月12日 「アベノミクス効果」は大ウソ 
 
 五十嵐仁氏が、「誰が見たってアベノミクスの失敗は明らか」とするブログを発表しました。
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安倍首相以外の誰が見たってアベノミクスの失敗は明らかだ
五十嵐仁の転成仁語 2016年6月19日
 「着実に結果を出している」のに「道半ば」? それは成功でもなく、失敗でもない?
 あの目標に到達すると言って始めた政策ではありませんか。そこに到達できなければ失敗だというのが、世間の常識でしょう。
 
 22日公示の参院選を前に、関西プレスクラブ主催の政治討論会が大阪市内で開かれ、与野党9党の幹部が安倍政権の経済政策「アベノミクス」や憲法改正などをテーマに論戦を交わしました。この討論会には、今回の選挙から投票権を持つ18、19歳の若者も参加して各党幹部に質問をぶつけたそうです。
 そこで、自民党の稲田朋美政調会長は「アベノミクスは道半ばだが、着実に結果を出している」と強調したといいます。公明党の佐藤茂樹政調会長代理は「うまく進んでいるが、恩恵がまだ一部にとどまっている」と述べ、家計や地方経済への浸透が課題だと指摘しました。
 この自民・公明両党の幹部の発言には共通点があります。それは、アベノミクスはうまくいっているという点と、それにもかかわらず未だ目標には達していないという点です。
 
 これは6月1日の安倍首相の記者会見での発言と共通しています。消費増税の延期を表明した安倍首相はアベノミクスの失敗を認めず、世界経済の危機と消費腰折れのリスクを指摘して、消費増税を2019年の10月まで延期するという「新しい判断」を示しました。
 一昨年の11月18日にも安倍首相は消費増税の先送りを表明し、その是非を問うとして総選挙に打って出ました。その時に言明したはずです。
 「18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています。」
 
 このように「断言」していたのに、「再び延期」することになりました。それは、「3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる」という「決意」が、単なる「決意」にとどまり、「その経済状況をつくり出す」ことができなかったからです。
 この2014年11月18日の記者会見で、安倍首相は「18か月後」という期限を区切って、「景気判断条項を付すことなく確実に実施」することを「断言」していました。今回の再延期がこの「断言」に反することは、誰が見てもはっきりしています。
 つまり、安倍首相は国民に向かって大きな嘘をついたということになります。それがアベノミクスの失敗に基づくものであるのか、それ以外の「新しい判断」によるものであるかはともかく、記者会見まで開いて「断言」した約束を守ることができなかったのは国民の誰もが知っている事実であり、このような形で国民を欺いたことに対するトップリーダーとしての責任をどう考えるのかが、まず安倍首相に問われなければなりません。
 
 次に問われるべきは、「3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる」と述べていた点です。今回の再延期によって、「その経済状況をつくり出すことができ」なかったことも明らかになりました。
 先に紹介した関西プレスクラブ主催の政治討論会でも、自民党の稲田朋美政調会長は「アベノミクスは道半ば」と発言し、公明党の佐藤茂樹政調会長代理は「恩恵がまだ一部にとどまっている」と述べています。つまり、安倍さんが約束したような経済状況を実現できなかったことを認めたわけです。
 期限を区切って首相が「断言」した約束です。それが実現できなかったということは、「3本の矢をさらに前に進めること」に失敗したからではありませんか。
 
 安倍首相はアベノミクスによって消費増税は必ず実行できるようにすると「断言」していたのです。この「断言」を「新しい判断」によって訂正せざるを得なかったこと自体、アベノミクスの失敗を明示しています。
 「道半ば」や「恩恵がまだ一部にとどまっている」という弁解も、目標に到達できなかったことや恩恵が行き渡っていないことを認めたことにほかなりません。つまり、アベノミクスが成功しなかったということを白状しているようなものです。
 安倍首相は、2年前の記者会見で「信なくば立たず、国民の信頼と協力なくして政治は成り立ちません」と言い、今回の記者会見でも「信なくば立たず。国民の信頼と協力なくして、政治は成り立ちません」と全く同じことを言っています。しかし、その「信」を木っ端みじんに打ち砕いてしまったのは首相自身ではありませんか。
 
 「国民の信頼」を得るためには、最低限、事実を隠したり歪めたりしないということが前提でしょう。嘘をつかないのも、あまりにも当然のことです。
 しかし、安倍首相は、「隠し、歪める、嘘をつく」という政治手法を常用しています。これで「信なくば立たず」などと、よく言えたものです。
 しかも、嘘をつかれた国民の方もそのことに気が付かず、お咎めなしで見逃してしまうということを繰り返してきました。これでは、「騙される方も悪い」ということになるでしょう。
 
 嘘をついてもペナルティを課されず、言い抜けることが許されるところから政治への信頼が崩れていきます。安倍首相の詭弁と嘘が懲罰を受けることのない今の日本が、まさにそうなっています。
 このような形で政治への信頼が失われていくところから、この国の本当の危機が生ずるのではないでしょうか。今度の参院選を、アベノミクスの失敗への責任を問い、嘘をついたら罰せられるという当然の「道徳」を通用させる機会にしなければなりません。