2016年6月16日木曜日

16- アベノミクスが加速されたら国民は壊滅だ

植草一秀の「知られざる真実」 2016年6月14日
7月10日の参議院選挙を主権者である市民はどのように戦うべきか。
世界で一番貧しい大統領として知られるウルグアイ元大統領のホセ・ムヒカさんが4月7日に東京外国語大学で講演して次のように語った。
 
「極めて少数の者に、世界の富が集中している。生産性が高まったけれども、分配の仕方が悪いので、社会的な弱者に恩恵が及ばないのだ。
「政治に関心がない」「政治は重要じゃない」と言う人がいるが、政治を放棄することは少数者による支配を許すことにつながる。
民主主義には限界がある。それでも社会をよくするために闘わなければならない。政治とは、すべての人の幸福を求める闘いである」
 
ムヒカさんは、「政治とは、すべての人の幸福を求める闘いである」と言われている。
私たちは、この言葉を胸に刻んで参院選に臨むべきだと思う。
安倍政権は「アベノミクス」という言葉を掲げて参院選を戦おうとしているが、「アベノミクス」がもたらしたものは何か、そして、この言葉の裏側に隠されている安倍政権の本当の目論見は何か、を考えて参院選に臨むべきである。
ムヒカさんは、「分配の仕方が悪いので、社会的な弱者に恩恵が及ばない」ことを政治の最重要問題であると指摘しているが、
「アベノミクス」と呼ばれる安倍政権の政策運営がもたらしてきたものが、「社会的な弱者に恩恵が及ばない」という現実である。
 
2012年12月の衆院総選挙から数えて、今回が4回目の国政選挙になる。
実は過去3回の選挙のたびに「アベノミクスの是非を問う選挙」という情報が流布されてきた。
「この道しかない」とか、「まだ道半ば」とか、「加速させるのか、それとも逆戻りさせるのか」などと言われてきたが、アベノミクスが何をめざしているのかを安倍政権ははっきり言わない
そして、アベノミクスが成功してきたかのように安倍首相は発言している
私たちはマスメディアの情報に誘導されてしまいがちだが、真実を正しく洞察しなければならない。
 
安倍首相は大企業の利益が史上最高を更新したこと、株価が上がったこと、失業率が下がったこと、有効求人倍率が上がったことを「アベノミクス」成功の証しだと言う。
しかし、これだけをもって日本経済が良くなったとはまったく言えない。
経済の良し悪しを測る最も基本的な尺度は経済成長率だが、安倍政権が発足してからの経済成長率は平均で07%である。
これに対して、その前の民主党政権時代の経済成長率は20%である。民主党政権時代の日本経済が良かったという人はいない。
しかし、安倍政権が発足してからの経済成長率は、その半分にも満たないのである。
株価が上昇したと言うが、東京証券取引所第1部上場企業の数は約1900社。
日本の法人数400万社の005%にも満たない。
1%対99%の二極分化と言われているが、良くなったのは1%にも満たないような日本経済の上澄みの、さらにその上澄みの部分だけなのだ。
 
失業率の低下、有効求人倍率の上昇は、就業者が増えたことを意味するが、全体のパイが小さくなり、大企業の分け前だけが大幅に増大し、残りの部分を分け合う人数が増えたということだから、一人あたりの取り分は大幅に減ったということなのだ。
これこそまさに、ムヒカさんが言う、「分配の仕方が悪いので、社会的な弱者に恩恵が及ばない」ということそのものではないか。
 
経済全体を超低迷させる。
一握りの上澄みの企業だけが利益を拡大する。
一般の労働者は人数は増えるけれども、手取りの所得が大幅に削り取られる。
これが「アベノミクス」がもたらすものであるから、こんなものを加速させられたらたまらないのである。
安倍首相は「この道しかない」と言うが、日本の主権者の立場から言い換えれば、「この道はありえない」ということになる。
メディアの情報誘導に惑わされてはならない。
 
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