TPP・農協つぶし・強権政治・・・で
しんぶん赤旗 2016年6月18日
従来自民党の支持基盤とみられてきた業界団体に、参院選で変化が起きています。東北では福島を除く5県の農協系団体が「自主投票」を決定。農協関係者は、昨年10月の環太平洋連携協定(TPP)の「大筋合意」や農協つぶしの「農協改革」に対する批判に加え、安倍政権の強権政治に対する不満を理由に挙げます。
前回参院選で自民党候補と民主党候補にそれぞれ推薦を出した宮城県農協政治連盟は、今回16の組織ごとに2カ月間かけて議論を重ね、自主投票を決めたといいます。
農産物の「重要5項目」をTPP交渉から除外するよう求めた国会決議について、安倍晋三首相は「大筋合意」でも守られたと説明していますが、宮城県農政連事務局は「農家は納得していない」と語ります。同時に、自民党を推薦しなかった理由は「農業問題だけではない」といいます。
「TPPは農業だけでなく命とくらし全般にかかわる問題。憲法9条にかかわる安全保障法制の問題も農家の人たちは見ている。支部のなかには、安倍政権をストップしなければいけないという意見をあげる支部もあった。自民党の推薦依頼は昨年のうちにきていたが、国会運営をみて、時間をかけて自主投票と決めた」
青森では県農協農政対策委員会が自主投票を決定しました。県農協中央会の事務方は「TPP大筋合意に対する組合員の感情を考えると、自民党に推薦を出すのはいかがなものかという意見が大勢になった。一方民進党は、政権時の問題から、能力に対する疑問が払拭(ふっしょく)できなかった」といいます。
秋田県農政連は、前回自民党推薦から今回自主投票に変化。県農政連事務局は「自民党を推すべきだという声も少数あったが、大勢にならなかった。県の協議では議論にならなかったが、支部協議ではTPPや農協改革が問題になったと聞いている」といいます。
自民党の締め付けが厳しくなるなか、政権と異なる意見の表明が難しくなっているとの指摘もあります。
秋田県農民連の鈴木万喜夫委員長は、秋田県でもTPP反対などで農協が及び腰になっているところがあるとしつつ、次のように語ります。
「農家のなかには、ここまで自民党にだまされ続けて、それでも自民党を推さなければいけないのかという思いが鬱積(うっせき)している。自民党から自主投票へ変わったのは、そうした農家の思いを農政連も受け止めなければならなかったことの表れだろう」