2016年6月27日月曜日

破綻しているアベノミクスを加速するとは!?

 参院選で「改憲」を打ち出せない安倍政権は、経済面の成果を強調するとばかりに、臆面もなく「アベノミクスは道半ばだ」とあたかも何か成功しつつあるかのように「アベノミクスのエンジンを吹かす」と吹聴しています。
 そしてこともあろうに「給与が3年連続で2%水準の賃上げを実現した」、「企業の収益が過去最高」、「税収も増加」とかを、アベノミクスの実績として強調しています。
 
 しかし国民の実質賃金が2013年3月から2016年3月にかけて3・9%も落ちているということは厚労省の「労働基本調査」が明らかにしていることです。
 また確かにアベノミクスで実現した円安=株高で、昨年度は大企業は大儲け(例えばトヨタは1円円安になる毎に400億円の増益になる)をしましたが、いずれ必要になる日銀買取分=360兆円の国債の始末や株の買い支えに投入されたまま消失した分(5兆円+α)は、すべて国民の肩に掛かって来るものです。
 それなのにそんなものを成果と吹聴するとは、まさに「息をするようにウソを吐く」と言われる所以です。
 
 安倍政権が虚妄のアベノミクスの成果を強調する以上、その実態のバクロも続ける必要があります。
 経済学者の植草一秀氏による アベノミクスの実態についての酷評を紹介します。
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円高・株安・景気悪 もたらすアベノミクスを加速?
植草一秀の「知られざる真実」 2016年6月25日
英国の主権者が決定したEU離脱は、反グローバリズム潮流の端緒になる。この視点が決定的に重要である。
「反グローバリズム起点になる英国民EU離脱決定」
 
英国のEU離脱決定で為替・株式市場に大きな変動が生じているが、株式市場で最大の影響を受けているのは日本市場である。
6月24日の株価下落率は以下のとおり
日経平均株価      -792%
NYダウ          -339%
FTSE100.    -315%
DAX30   .    -682%
Hang Sen        -292%
Strait Times       -209%
株価下落が大幅になったのは日本とドイツである。
 
安倍首相は伊勢志摩サミットで「リーマンショック時に似ている」と発言して主要国首脳に否定されたようだが、実は、日本の状況だけは「リーマンショック時に似ている」のだ。
リーマンショックの前後、日本では、円高=株安が急激に進行した。いまの日本が極めて似た状況にある。
 
つまり、世界経済はリーマンショック時とまったく似ていないが、日本経済が置かれた状況だけは、リーマンショック時に似ているのである。
詳しくは、『金利・為替・株価特報』 http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html 6月27日号 『英国EU離脱決定で安倍政権経済環境急変』に記述したので、関心がある方にはご高覧賜りたいが、安倍政権下で日本経済は悪化の一途を辿っている。
 
アベノミクスはすでに破綻し、安倍政権は窮地に陥っている。公約で断言した消費税再増税など、とても実施できる状況にはない。増税を延期せねばならず、サミット参加国に積極策を取ってもらわなければ、日本経済の崩落を止められない。そこで、サミットで主要国に懇願したが受け入れられなかった。これが実情である。
 
実際、アベノミクス下の日本経済のパフォーマンスは最悪である。
この現実がありながら、「アベノミクスを加速させる」と言うのは正気の沙汰でない。
ガダルカナル島の戦いを分水嶺に連戦連敗の推移をたどるなかで進軍ラッパを吹き鳴らした旧日本軍の姿勢と完全に重なる。壊れたアベノミクスを加速すれば、爆発・炎上するのが関の山である。
 
経済のパフォーマンスを測る総合尺度は経済成長率だ。この経済成長率がアベノミクスの失敗を明白に物語る。
2012年10-12月期から2016年1-3月期までの実質GDP成長率の平均値は+07%。
2009年10-12月期から2012年7-9月期までの実質GDP成長率の平均値は+20%。
あの民主党政権時の日本経済は決して好調でなかった。いまひとつパッとしなかった、あの時期の成長率と比較して、その3分の1の成長率に留まっているのが安倍政権下の日本経済である。壊れたアベノミクスを自慢するのは喜劇でしかない。
 
そして、労働者の実質賃金指数は、安倍政権下で3年連続低下し続けている。
安倍首相が自画自賛する失業率の低下、有効求人倍率の上昇は、悪い話ではないが、経済の超低迷下で、減少した労働者の取り分を分け合う人数が増えたことを意味するもので、大多数の労働者が下流に押し流されたことを裏付けるデータでしかない。
円安を止めようとして悪戦苦闘した日銀だが、6月16日には遂にさじを投げた。白旗を揚げた
安倍首相はせめてタオルを投げ入れる行動を取るべきだろう。
 
かくして、日本では円高=株安が持続する可能性が高まっている。
円高・株安・景気悪 の三拍子こそ、アベノミクスを象徴する現象である。このアベノミクスを掲げて選挙に臨めば、安倍政権が敗北しないわけがない
マスメディアの情報誘導に乗ってはならぬ。
「安倍政治を許さない!」主権者がひとつにまとまれば、必ずこの選挙に勝つことができる。
私たちの敵は、ウソを垂れ流すマスメディアであることを忘れてはならない。
 
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インフレ誘導失敗したから実質賃金プラス転換
植草一秀の「知られざる真実」 2016年6月26日
経済全体のパフォーマンスを示す経済指標をただひとつ挙げるとすれば 実質GDP成長率 ということになる。このGDP成長率において、安倍政権の実績は悲惨なものである。
2012年10-12月期から2016年1-3月期までの実質GDP成長率の平均値は
+0・7%。
2009年10-12月期から2012年7-9月期までの実質GDP成長率の平均値は
+2・0%。
民主党政権時の日本経済は決して好調でなかった。東日本大震災もこの時期に発生している。
この好調でない日本経済と比較して、安倍政権下の経済成長率はその3分の1に留まっている。
いくら安倍首相が口角泡を飛ばして「アベノミクスで日本経済は良くなった」と言い張っても、実績を示すデータがアベノミクスの失敗を明確に物語っている。
 
労働者の実質賃金も3年連続で減少し続けている。このことに関連して安倍首相がおかしな主張をしている。テレビなどでも懸命に主張していることだが、間違いだから周りにいる者が注意してやめさせるべきだ。
それは、労働者一人当たりの実質賃金が消費税増税の影響を超えてプラスになったという点である。
NHKは日曜討論で、偏向した統計数値を用いる。
日本の労働者の一人当たり実質賃金が、2016年になって、ようやくプラスに浮上したことを示すグラフである。
たしかに、実質賃金指数が2016年に入ってからプラス数値を示している。
実質賃金指数の前年比伸び率は
2013年度   -1・3% 
2014年度   -3・0%
2015年度   -0・1%
であり、本年1月以降は
2016年1月    0・0%
2016年2月  +0・3%
2016年3月  +1・6%
2016年4月  +0・4%
である。
 
今年に入って、数値がプラス基調に転じている。しかし、この変化をもたらしているのは、インフレからデフレへの転換である。
 「もはやデフレではない」ではない。インフレ率がマイナスに転じて、実質賃金の伸び率がプラスに回帰し始めているのだ。
 
安倍政権は「アベノミクス」の主要目標にインフレ誘導を掲げた。日銀幹部を総入れ替えして、2年間でインフレ率を2%まで引き上げることを公約に掲げた。
日銀の岩田規久男副総裁は、2年後にインフレ率2%の公約を実現できない場合には、職を辞して責任を明らかにすることを国会答弁で明言した。しかし、インフレ誘導は失敗した。
日銀は常軌を逸する金融緩和を実施しているが、インフレ誘導は失敗し、円高推移も止められないでいる。
 
アベノミクスの主要目標であったインフレ誘導は完全に失敗に終わっている。
このインフレ誘導失敗によって、実質賃金伸び率がプラスに転じているのである。
インフレ誘導を主張し、これに失敗した安倍政権が、インフレ誘導失敗の結果として生じている実質賃金のプラス転換を自画自賛するのはおかしいだろう。
 
「インフレ誘導」は「百害あって一利なし」の政策だと、私は一貫して主張してきた。
「インフレ誘導」を喜ぶのは、実質賃金を切り下げることができる企業の側で、労働者にとっては「百害あって一利なし」だと主張してきた。
「インフレ誘導」に失敗し、日本経済が元の「デフレ」に回帰したから実質賃金がプラス転換しているだけなのだ。安倍政権が実質賃金のプラス転換を自画自賛するのは完全な筋違いだ。その前に、「インフレ誘導」というアベノミクス政策が誤りだったことを認めるべきである。
 
NHK日曜討論で自民党の稲田朋美政調会長は、民主党時代の実質経済成長率が高かったのはインフレ率がマイナスだったからだと主張して、民主党時代の経済パフォーマンスを批判したが、その稲田氏が、インフレ率がマイナスに転じたことで実質賃金伸び率がプラスに転じた現状を自画自賛するのは、完全な論理矛盾である。
 
さらに安倍首相は、消費税率を3%引き上げたあとで、実質賃金伸び率がプラスになったことについて、
「消費税増税後に実質賃金がプラスになるのは大変なこと」だと自画自賛しているが、これは、初歩の算数における致命的な誤りに基づく発言であるので、これも周囲の者がやめさせるべきものだ。
安倍首相は一次方程式も解けないと揶揄されているが、簡単な算数もできないと疑われている。初歩の算数を学び直した方がいい。
(以下は有料ブログのため非公開)