2016年6月5日日曜日

首相のサミット資料 「リーマン」危機前夜を繰り返す

 ”安倍首相は26日から始まったG7サミットで、現在の経済状況がリーマンショック前の経済状況と同等であることを訴えたが、参加者から「危機」の表現は強すぎるとの批判を受けて、それを消費税増税の理由にできなくなったので…” という風に、サミットにおける首相の発言を国民は理解していました。
 しかし、安倍首相は30日夕方の自民党の役員会で、「私がリーマンショック前の状況に似ているとの認識を示したとの報道があるが、まったくの誤りである」と述べ、それを受けて世耕氏が翌日、首相は『リーマン・ショック前に似ている』とは発言していない。私が解説的に言ったことで、少し言葉足らずだった」と釈明し、泥をかぶった形になりました
 
 一体何が真実なのかという話になりますが、東京新聞はサミット会議で各国首脳に配られた4枚のペーパーを検証した結果、そこではリーマンという言葉が何度も繰り返され、全体として現在の世界経済が「リーマン並みの危機を抱えている」と受け取れるとしました
 世耕氏が間違えて伝えたという説明にはどう考えても無理があります。
 この一連の経過から明らかになったことは、世耕氏は紛れもない安倍首相の忠臣であるという事実のようです。
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首相サミット資料 「リーマン」繰り返す 増税再延期へ経済危機「演出」
東京新聞 2016年6月4日
 安倍晋三首相は消費税増税を先送りする根拠に「世界経済の危機」を挙げた。首相は5月末の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で「危機の兆候」を示す4枚紙の資料を紹介。2008年のリーマン・ショック前と、現在の経済指標を比較したものだが、各方面から異論が相次いだ。資料はどんな内容で、狙いは何だったのか。 (岸本拓也)
 
 サミットで各国首脳に配られた資料は、国際通貨基金(IMF)のデータを引用し、(1)原油や食料品など国際商品価格指数の推移(2)新興国の投資や輸入、成長率の伸び率(3)新興国への投資の推移(4)世界経済の成長率-を紹介した。
 いずれもリーマン前後と、直近の指標の類似性を強調。たとえば、商品価格指数では、二〇一四年六月からの一年半で55%下落し、「リーマン時と同じ下落幅」と説明。新興国の投資は「リーマン時より低い水準まで低下」。輸入や成長率は「リーマン以降、最も低い水準」といった具合だ。
 リーマンという言葉が繰り返され、全体として現在の世界経済が「リーマン並みの危機を抱えている」と受け取れる。世耕弘成官房副長官もサミット初日の五月二十六日、記者への議論内容の説明で「総理は(各国首脳に)リーマン前の状況と似ていると申し上げた」と述べた。
 
 だが、この認識に各方面から異論が相次いだ。最近の商品価格の下落は原油価格の急落要因が大きいが、第一生命経済研究所の熊野英生氏は「リーマン時は需要が急激に落ち込んで価格が下落したが、最近の急落はシェール革命を背景にした供給過剰が原因。強引に『危機』を演出している」と指摘した。
 新興国経済の減速についても「危機からは抜け出している」(IMFのラガルド専務理事)や、「私たちは危機の中にはいない」(オランド仏大統領)と首脳らが真っ向から反論した。
 
 これらの反論を意識したのか、世耕氏は五月三十一日に「首相は『リーマン前に似ている』という発言はしていない。私の言葉足らずだった」と説明内容を突如撤回した。しかし、こうした資料で「危機」について首脳らに同意してもらい、再延期への布石にしようとした意図があったのは間違いない。
 安倍首相も増税再延期を表明した六月一日の会見で、「確かにリーマン・ショック級の出来事は起きていない」と認めたものの、「危機に陥るリスク(不確実性)には備えなければならない」と強調し、世界経済を延期の理由にした。