アベノミクスを推し進めた3年間に、高所得層と低所得層への二極化が進んだことが分かりました。
金融緩和(円安)による株高の恩恵が富裕層に偏っているうえに、賃上げはごく一部に留まっているためで、個人消費を支える中間層が減少したため消費低迷は長引くことになります。
安倍首相が消費税増税を自身の任期中を超えて延期したのは、円安誘導以外には何の内容もないアベノミクスでは、この長引く消費低迷を解決できないことを承知していたからでしょう。
その一方で、企業の内部留保は空前の366兆円に達し、企業の利益が働く人たちに渡っていないことが明らかにされました。
東京新聞の二つの記事を紹介します。
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資産、所得の二極化進む アベノミクスの3年、細る中間層
東京新聞 2016年6月4日
安倍政権が看板政策のアベノミクスを推し進めた2013~15年の3年間に、個人消費を支える中間層が減少し、高所得層と低所得層への二極化が進んだことが、一橋大経済研究所の小塩隆士教授の試算で4日分かった。家計の貯蓄残高は4千万円以上の層と100万円未満の層がいずれも増加し、資産でも格差が広がった。金融緩和による株高の恩恵が富裕層に偏っていることに加え、賃上げが幅広い層に及んでいないためだ。
世帯数が多い中間層の厳しさは、消費低迷が長引く一因とされる。参院選の経済論議では、アベノミクスへの評価とともに、景気を左右する中間層への支援策も課題になりそうだ。(共同)
膨らむ内部留保 増えない給与 366兆円 最高更新
東京新聞 2016年6月5日 朝刊
企業が余らせた利益に当たる「内部留保」が過去最高になったことが明らかになった。財務省が一日発表した一~三月期の法人企業統計(金融・保険業を除く)によると、内部留保を指す「利益剰余金」は三月末時点で前年同期比6%増の三百六十六兆円。一方で、従業員の給与は横ばいのままで、企業のもうけを働く人たちの賃金の増加と個人消費の増加につなげようとした政府のシナリオは実現していない。 (吉田通夫)
内部留保は正式な会計用語ではないが、一般的には、企業の売り上げから従業員への給料や、株主への配当を終えて残った「利益剰余金」の蓄積のことを指す。
内部留保は安倍晋三政権の発足以降、急増しており、二〇一二年十二月に比べると、34%増えている。日銀による大規模な金融緩和で円安が進み、企業が海外で稼いだ売上高や利益が円に換算すると大幅に増加。その一方で、国内での設備投資や従業員に支払う給与は抑制しているためだ。今年一~三月期に企業が従業員に支払った給与は二十八兆円と、前年同月比でほぼ横ばい。政権発足時の一二年十~十二月期と比べると3%減少している。
企業は内部留保を株式や土地の購入などで運用しているが、手元に残し世の中には出回らない「現金・預金」も積み上がっている。法人企業統計によると、現金・預金は安倍政権が発足してから27%増え、三月末で百八十一兆円と過去最大に上っている。
働く人たちの賃金が伸び悩んでいるため、個人消費は低迷が続いている。さらに年明けからは急激な円高で企業は景気の先行きを不安視しており、第一生命経済研究所の星野卓也氏は「企業はいっそう(将来のコスト負担になる)人件費にお金を投じにくい環境になっている」と指摘している。
<内部留保> 企業の利益から配当などを差し引いて残る「利益剰余金」を指す。預金や株式での運用などに使われる。過去からの蓄積額で評価することが多い。利益自体が増えたり、経費が減ると内部留保は増える。