経済評論家の高橋乗宣氏は、三菱東京UFJ銀行が国債の入札に有利な条件で参加できる「国債市場特別参加者」の資格を国に返上する意向を正式に伝えたことが大ニュースにならないことを、「不思議でならない」と述べました。
それは日本のトップ銀行が、「国債の信用を揺るがすバラマキ政権に、あえて身を切ってまで協力するのはゴメンだ。もう、アベノミクスには付き合い切れない」という、強烈な意思表示をしたことを意味するからです。
高橋氏は、安倍内閣が消費税増税を延期したことも三菱東京UFJを ”国債…参加者” から離脱させた間接的な理由になっているとしていますが、それは、逆進性の高い消費税を税収の基本に据えていることの矛盾に他なりません。
”論より証拠” 大衆課税された税収で社会保障費を賄うということでは、まさに自らの金で自らの保障をしていることになるので、税の再分配後も「相対的貧困率」は全く改善していません。
消費税をあげれば景気が落ち込むから延期せざるを得なかったという事実が、消費税を基調とする税制の間違いを雄弁に物語っています。
「悪魔の税制」に依拠してきた結果がこの始末です。税収のアップは、富裕税、所得税の累進課税強化、法人税の適正化等々によるべきです。
(関係記事)
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日本経済一歩先の真相
とうとう三菱まで見放した アベノミクスのバラマキ財政
高橋乗宣 日刊ゲンダイ 2016年6月17日
これだけの大ニュースがマスゾエ問題の狂騒にうずもれているのは不思議でならない。
メガバンクの雄、三菱東京UFJ銀行が国債の入札に有利な条件で参加できる「国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー)」の資格を国に返上する意向を正式に伝えた。この資格は国債の安定消化を図るため、国が大手行や証券会社に付与するもの。財務当局との情報交換など、いくつかの特権を得られる見返りに、すべての国債入札で発行予定額の4%以上の応札が義務付けられる。
日本のトップ銀行として国債の安定消化を支えてきた三菱が特権返上にいたったのは、「もう、この政権には付き合い切れない」という強烈な意思表示だ。市中銀行の代表格として、反アベノミクスの旗色を鮮明にさせたのである。
黒田日銀がマイナス金利政策にとうとう踏み切ったことで、長期国債の利回りはマイナスに張り付き、過去最低を日々更新している。
国の借金を支えている側が将来的に損を被る理不尽政策にも不満はあるだろうが、旧財閥時代から「三菱は国家なり」と呼ばれてきた社風だ。このタイミングでの国への反旗は、安倍政権の消費増税先送りにお灸を据える意味合いが強いのではないか。
■国家運営がマトモでこその「所期奉公」
安倍政権は改めて財政健全化を遠ざけたどころか、最近では禁じ手の「ヘリコプターマネー」なる言葉まで横行し、財政運営のかじ取りは国債依存脱却の方向から完全に逆行してきた。
年間30兆円以上もの赤字予算の埋め合わせに発行してきた国債を市中銀行は日銀と一緒に買い支えてきた。視点を変えれば、銀行が猛烈な勢いで国にカネを貸し続け、そのカネで高齢化により増え続けるばかりの医療や介護などの社会保障費を何とか支えてきた。
この構図は、あくまで自公与党が借金分の税金を集めて、いずれ国債償還の形で銀行にカネを返すことで成り立つ。この大前提が消費増税を再延期すれば崩れてしまう。自公与党が参院選の票目当てに経済対策と称して、プレミアム商品券や旅行券発行の検討に興じていれば、なおさらだ。
経営の「三綱領」のひとつに「所期奉公」を掲げ、「国家のためにベストを尽くせ」というスリーダイヤの精神も、国家の運営がマトモであればこそのことである。国債の信用を揺るがすバラマキ政権に、あえて身を切ってまで協力するのはごめんというわけだ。
欧米系格付け大手フィッチ・レーティングスは、すでに日本国債の格付け見通しを「安定的」から「弱含み」に引き下げた。ただでさえ、中韓両国を下回り、東欧の小国並みの日本国債の格付けは、恐らく増税先送りによって地に落ちていく。
幅広く国際展開し、海外運用はお手のモノの三菱にすれば、日本国債との共倒れリスク回避は賢明な選択だ。グローバル時代が叫ばれて久しい今、いつまでも「お国のために」というわけにはいかないのだ。