舛添都知事はメディアによる総攻撃を受けて遂に辞任に追い込まれました。
政治資金の使途の不適切さは明らかで、公私混同に加えて蓄財用の投資か?と思われるものも大量に見られましたが、元検事によれば「違法性」はないということでした。
要するに、使途が如何に不適切であろうともそれは一切問われずに、「虚偽記載」や「不記載」がなければ「政治資金規正法」には抵触しないということです。
一方、「いまどき、そんな"絵に描いたような"国会議員や秘書による『口利き・あっせん利得』が行われているとは」と、郷原信郎弁護士(元東京地検特捜部検事)に言わしめた甘利氏とその秘書による「口利き」とそれに伴う多額の金品のやり取りに関しては、「嫌疑不十分」で不起訴となりました。
郷原氏はそれに対して、「あっせん利得処罰法」の不備に基づく検察側の敗北という見方を示しました。
甘利氏は、大臣を辞任後は「睡眠障害」を口実にして4か月間国会を休んでいましたが、不起訴になった途端に「医師から徐々に政治活動を始めて良いと言われた」として、平然と復帰しました。それに対してのメディアの批判は皆無で、舛添氏に対する対応とはまさに月とスッポンの違い、メディアが如何に権力に対して弱いのかを余すところなく伝えるものでした。甘利氏の鉄面皮ぶりは言うまでもありません。
ここで明らかになったのは「政治資金規正法」も「あっせん利得処罰法」もともにザル法であったということです。舛添問題であれだけ大騒ぎをしたメディアはその改正を訴えないのでしょうか。
河北新報の社説「政治とカネ/ザル法放置是正は急務だ」を紹介します。
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(社説) 政治とカネ/ザル法放置是正は急務だ
河北新報 2016年6月15日
多額の現金授受が明らかになったにもかかわらず、都市再生機構(UR)と建設会社の補償交渉に関与した疑いで告発された甘利明衆院議員と元秘書らが「嫌疑不十分」で不起訴となった。
「不適切」な私的流用であるにもかかわらず、東京都の舛添要一知事が政治資金を家族旅行や子ども漫画、中国服の購入などに充てたのも「違法」ではないという。
政治とカネを巡り、政治家が自ら襟を正すためのあっせん利得処罰法と政治資金規正法が機能不全に陥っている。ともに「ザル法」の指摘が絶えなかった法律である。これほど欠陥が露呈するまで、放置してきた国会の責任の重さは問われるべきだろう。
甘利氏と元秘書らは、千葉県の建設会社から道路整備の補償交渉が有利に進むようURへの口利きを依頼され、報酬として計600万円を受け取ったなどとして告発された。UR側は元秘書らと12回面談し、元秘書から「もっと色を付けて」などと働き掛けを受けたと明らかにしていた。
あっせん利得処罰法は、国会議員や地方議員らが権限に基づく影響力を行使し、公務員や政府出資法人の職員に職務上の行為をあっせんし、利益を得ることを禁じている。
東京地検は甘利氏が当時、経済再生担当相で、URは所管外であったことなどから「権限に基づく影響力」はほとんどなかったと判断したとみられる。
安倍晋三首相の盟友として内閣中枢にいたことを考えれば、政治的な発言力、影響力は無視できないはずだが、構成要件の「権限に基づく影響力」には該当しないのだ。
一方、舛添氏の問題で明らかになった政治資金規正法の欠陥は、より単純だ。政治資金を何にいくら使ったか収支報告書に記載し、公開するよう義務づける同法では「虚偽記載」「不記載」は罪になっても、支出の中身についてはほとんど制限がない。
舛添氏の政治資金の使い方を調査した佐々木善三弁護士は記者会見で「不適切な部分がかなりある」と指摘する一方で、どれも「違法性はない」としていたのは、まさに「不適切な支出も(政治資金収支報告書に)書いており、(不記載や)虚偽記載はない」といった意味合いだ。
漫画「クレヨンしんちゃん」を読んで最近の子どもの言葉遣いを検証した。中国服を着て書道の稽古をすることで揮毫(きごう)の上達を図った。それもこれも政治活動だと言って開き直れる余地が、この法律には残されているわけだ。
ただ、都議会から公私混同と道義的責任を追求され、不信任案が提出されるなど辞任不可避に追い込まれた。
2014年に発覚した小渕優子元経済産業相の政治資金規正法違反事件でも、ベビー用品や下仁田ネギの購入が明らかになったが、支出の違法性は問われなかった。
甘利、舛添両氏は今回、政治とカネの規制に中心的な役割を担う二つの法律の欠陥を国民に示した格好だ。
もはやザル法の放置は許されない。各党は何をどう改正するか、早急に参院選の公約に掲げるべきだろう。