2016年6月4日土曜日

自民 参院選予想で現有議席割れの「48議席」

 安倍首相は1日の会見で国民の信を問うとして、その勝敗ラインを「連立与党で改選議席の過半数(61議席)」としました。因みに3年前の参院選では自民65議席、公明11議席(連立与党で76議席)を獲っているので大変に後退した目標です。
 安倍首相と同様、強気の改憲派で知られる稲田政調会長も、「過半数の獲得は困難な目標」という慎重な見方をしています。
 
 政治評論家の野上忠興氏の現時点での予想では、自民は現有割れの48議席明の13議席と合わせてギリギリ61議席だということです。選挙通の見方は大体一致するので、自民党側も同じような予測をしているものと思われます(自民党はかなり正確な数字を出す予測機関をもっていて、そこから折に触れて情報を得ているようです)。
 野上氏の予想では、1人区では自民の18勝14敗、比例区では15議席ということで、自民は1人区では新潟、長野、滋賀などで苦戦し、東北の6選挙区で全敗する可能性もあるということです。同じような予想を自民党側もしている筈で、それが大いに安倍氏らを慌てさせて、大いに後退した勝敗ラインになったものと思われます。
 実際にこの正月あたりまでは、参院自民党の前進を前提にして改憲派の野党を抱き込めば改憲の発議も視野に入ったというような言い方をしていましたが、野党の選挙協力が実を結んだ結果 もはやそんなことは口にできない情勢になりました。
 まだ1人区においても与野党逆転にはなっていないということですが、今後も野党協力を強めて自民党を追撃して欲しいものです。
 
 日刊ゲンダイの二つの記事を紹介します。
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安倍自民に激震 参院選予想で現有割れ「48議席」の現実味
日刊ゲンダイ 2016年6月3日
 弱気な勝敗ラインは自信のなさの表れか――。通常国会が閉幕し、参院選への号砲が鳴った。安倍首相は1日の会見で「連立与党で改選議席の過半数(61議席)」を勝敗ラインに設定。3年前の参院選(自民65、公明11)と比べるとかなり低い数字だが、実際、選挙情勢を分析すると確かにそう甘くない。政治評論家の野上忠興氏の現時点での予想では、自民は現有割れの48議席。公明の13と合わせてギリギリ61議席という結果になった。
 
■東北1人区は全敗の可能性も
 衆参ダブル選を視野にずっと強気だった安倍首相は、これまで改憲勢力の3分の2獲得や、27年ぶりの自民単独過半数を目指してきたはずだった。ところがここにきてトーンダウンである。
 参院選は今月22日公示、来月10日投開票に決まった。定数の半分の121議席が改選で争われる。
 勝敗を大きく左右するのは、やはり1人区だ。32ある1人区の全てで、民進、共産、社民、生活の野党4党が候補者を一本化したこともあり、野上氏は自民の18勝14敗と予想した。自民は新潟、長野、滋賀などで苦戦し、東北の6選挙区で全敗する可能性すらある。
「1人区は農村地帯が多く、TPPに批判的。安倍政権に対する農業の現場で不満は根強い。東北では福島を除く5選挙区で、従来は自民党を支持してきたような農業団体が、自主投票を決めたそうです」(野上忠興氏)
 1人区の逆風は安倍首相も分かっていて、「18勝14敗」という自民党の調査結果を見て大慌てだったという。
 複数区でも、候補者を2人立てる北海道(改選数3)や神奈川(改選数4)で2人目の当選が苦しい。
 
■比例票に響きかねない女性たちの“嫌安倍”
 比例代表は15議席という予想だ。
「自民党の参院選の比例は、過去5回のデータで平均16議席です。最低は2010年の12議席、大勝した3年前でも18議席でした。世論調査でも分かる通り、安倍政権に対する女性の支持は男性より10ポイント前後低い。女性たちの“嫌安倍”感情は比例票に響きかねません」(野上忠興氏)
 第2次政権になっての過去3回の選挙では、安倍首相は常に攻めのイケイケムードだった。しかし、「今回は官邸も『守りの選挙にならざるを得ない』とみているようです」(自民党関係者)という。安倍首相には第1次政権時の07年参院選で惨敗した“トラウマ”もある。
 野上氏の予想はあくまでも現時点でのものだが、マトモな有権者の厳しい判断と野党の頑張り次第で、安倍政権が追い込まれる可能性は十分あるということだ。 
 
 
1人区の勝敗は? 参院選「自公vs野党」激戦14選挙区の行方
日刊ゲンダイ 2016年6月3日
 いよいよ、各党とも来月10日の投開票日に向け、本格始動。参院選の「最大の注目」は、全国32の1人区で繰り広げられる「自公VS野党統一候補」の勝敗の行方だ。過去の戦いを振り返ると、与党が前回(2013年、31区)は29勝前々回(10年、29区)も21勝で圧勝しているが、いずれも野党乱立による“自滅”が原因だった。しかし、今回は野党共闘が進み、各地でがっぷり四つ。1人区で自公にくさびを打ち込むことができれば、複数区の野党候補にとっても追い風になるのは間違いない。
 
■現職2閣僚が落選危機
 「4月末の衆院北海道5区の補選で、野党統一候補が与党候補に約1万2000票差に迫る大健闘を見せたのが大きかった。あれで一気に統一候補への期待が高まりました。もともと参院1人区は保守系ガチガチの地盤が多い。その与党に対峙する野党共闘の受け皿ができただけでも意味は大きい」(立憲デモクラシーの会有志で上智大教授の中野晃一氏)
 こうした野党共闘の動きに対し、与党は「野合」などと批判しているが、それだけ脅威を感じている証左でもある。
 「自民党が野党候補の一本化に焦っているのは間違いない。党本部は事前の世論調査で、野党に負けるかもしれない『重点区』として、青森、岩手、山形、宮城、福島、新潟、長野、山梨、滋賀、三重、大分、沖縄の12区を挙げています。さらに『準重点区』で秋田、奈良、岡山、徳島・高知、愛媛の5区を名指しし、今後、小泉進次郎といった知名度の高い議員をガンガン現地に送り込む方針を示しています」(与党担当記者)
 別表は、政治評論家の野上忠興氏による現時点での1人区の与野党の情勢分析だ。野党優勢とみられるのが、岩手、長野、滋賀、沖縄の4選挙区。やや優勢、あるいは「五分五分」の激戦になっているのが青森、宮城、秋田、山形、福島、新潟、山梨、三重、奈良、岡山、徳島・高知、愛媛、長崎、大分の14選挙区だった。あらためて野上氏がこう言う。
 
 「今のところ、福島の岩城光英法相と沖縄の島尻安伊子沖縄北方相は落選の黄信号がともっていると言っていい。現職閣僚の落選は安倍政権も避けたいでしょうが他でも与党が厳しい戦いを強いられている選挙区があります。例えば青森の田名部匡代氏は元衆院議員で父親も元参院議員と、地元の知名度はバツグン。愛媛の永江孝子氏も元衆院議員で後援会組織がしっかりしている。いずれも単なる野党一本化のために擁立された候補ではなく、知名度も実績もある人物。与党も相当の危機感を持っています」
 
 ほかの選挙区でも野党候補を支援する雰囲気が広がりつつあるという。東北地方ではTPP(環太平洋経済連携協定)に反対する農家の自民離れで野党有利の流れが加速。山梨では、輿石東参院副議長が支援し、子育て支援のNPO法人の役員を務める宮沢由佳の女性人気が高まっている。
「各選挙区とも、与党に一矢報いてやろうと、皆、盛り上がっています。こうした機運がさらに高まり、市民運動が活性化することを期待したい」(中野晃一氏)
 うまくいけば、激戦区の野党「全勝」も夢じゃない。